「知悉」とは?
「知悉」(ちしつ)とは、「知り尽くすこと、詳しく知ること」という意味です。
「知」に関係する言葉であることはすぐわかっても、「悉」のほうは少々馴染みが薄いかもしれません。字義を確認しておきましょう。
「悉」の字について
「悉」(シツ)の字は、「心」と「釆」から成ります。この「釆」の字は「つまびらかにする」という意味を持つ「宷」の字に通じており、よって「悉」は心で細かく知り尽くすという意を表します。
「悉」は、訓読みでは「悉(ことごと)く」と読み、「残らず、みな、どれも」という意味であることを覚えておくと、「知悉」の意味も取りやすくなるかもしれません。
「知悉」の使い方
「知悉」は、ほとんどの場合は「~する」というサ変動詞をつけて、何かを詳しく知っている、知りえているというさまを指して使います。
ただ「知る」「知っている」と言う場合に比べ、ほぼ完全にそれについて知っている、深くまで知っているというニュアンスが特徴です。
「知悉する」の対象となるものは、物や知識だけではなく、経験や状況なども含まれ、幅広いものに使うことができます。ただし、少々難しい言葉ですので、使用する状況や相手には注意しましょう。
例文
- フィンランド生まれの彼は、その国の言語はもちろん、文化や歴史にも知悉している。ぜひ一度話を聞いておくといい。
- 近代医学を学んだ者ならば、それは知悉していて当然の知識だ。
- Aは優秀な人物だが、実地で経験を積んでいるBほどには政治に知悉していない。
「知悉」の類語
精通
「精通」(せいつう)とは、「詳しくよく知っていること」という意味です。「知悉」と意味がよく似ていますね。
ただし、「知悉」には「熟知する、細かいところまで知る」という意味合いがあるため、精通に比べると、より深く、隅々まで知っているというニュアンスが強く出ます。
例えば、プライベートな人間関係や、何らかの隠された事情を「知る」場合には、「精通」よりも「知悉」のほうが適した表現といえるでしょう。
【例文】
- 彼は近代ドイツ史に精通している。(※「知悉」でも可)
- 彼女とは10年も同棲しているから、細かな癖なども知悉している。(※「精通」はやや不適)
該博
「該博」(がいはく)とは、「学問などに広く通ずること」という意味の言葉です。「該」は「兼ね備える」の意、「博」は「知識が広いこと、あまねくゆきわたること」の意ですから、上記のような意味となるわけですね。
「知悉」と同じように使えますが、「該博」は主に学問などの「深められた知識」について使われます。
また、「該博する」とは言わず、「該博な~(知識・人)」という形で使います。
【例文】
- 天狗になっていた学生も、教授の該博な知識に圧倒されて自己の未熟さを知った。
- 彼は該博な映画批評家として知られています。
通暁
「通暁」(つうぎょう)とは、もとはその字の通り「夜を通して暁(夜明け)に至ること」、すなわち徹夜という意味でした。
後に、夜という蒙昧な時間を抜けて朝まで筋道が通るというニュアンスから、「くわしく知り悟ること、よく知り抜いていること」という意味も持つようになりました。「暁達」(ぎょうたつ)とも言います。
「知悉」と同様に、「通暁する」という形で使います。
【例文】
- 彼は天文学者だが、惑星の組成がメインの研究テーマであるため、地質学にも通暁している。
- 作曲者たるもの、各楽器の性質によく通暁していなくてはならない。
「知悉」を英語で
「知悉」は、簡単に言えば「よく知る」ということですから、英語にする場合には以下のような表現を用いましょう。
- know well(熟知する)
- have a great knowladge of ~(~の十分な知識がある)
例文
- I don't know pop-music very well.(私はポップ音楽には知悉していない)
- She has a great knowladge of Japanese cultures.(彼女は日本文化について知悉している)