「のさばる」の意味
「のさばる」はラ行5段活用(古語では4段活用)の動詞です。意味は大きく分けて2つあります。
①勝手に広がる
「のさばる」は、勝手に(伸びて)広がる、迷惑を考えず意のままに場所を占領してしまうことです。
②勢力が増す
①の「伸びて広がる」という意味から派生して、「のさばる」には勢力が増す、権勢を振るう、我が物顔で威張りくさり、横柄な態度で振る舞うという意味もあります。
「のさばる」の使い方
「のさばる」は、①②どちらの意味でも、対象になった事物や人間について、迷惑している、不愉快であるといったような悪い印象を持っている時に使われます。勢力を得て、好き勝手に幅を利かせていることをマイナスに評価するという使い方が基本です。
では、2つの意味の使われ方の違いを見てみましょう。
①「勝手に広がる」という意味での使い方
「のさばる」を「勝手に広がる」、「占領する」といった意味で用いる場合は、主に植物や動物などの人間以外の物について使います。
【例文】
- 河川敷に帰化植物がのさばってしまい、在来種が見えなくなってしまった。
- いくら除草剤をまいても、雑草がのさばって困っている。
- 広場に野良犬の集団がのさばっている。
②「勢力を増す」という意味での使い方
「のさばる」を、「勢力を増す」という意味で使う場合は、主に人物やその人物が属する団体に対して用いられます。
【例文】
- 新参者のくせにのさばっていて、気分が悪い。
- この地域では、反社会的な団体がのさばっている。
- 意地悪なボスママと取り巻きがのさばり、気に入らない人をいじめている。
「のさばる」の語源
「のさばる」には特に漢字表記はありません。語源は江戸時代にさかのぼり、古語の「のさ」に、広がるという意味の「張る」という動詞がついたと見られています。
「のさ」は、本来ゆったりして余裕がある、のんびりとして間が抜けていることを表していました。ゆったりした様子から、周囲に配慮せずに自分のペースで振る舞うというように悪いイメージに捉えられるようになっていきました。
また、あまり有力な説ではありませんが、「のさ」は「伸す」(のす)の未然形であるとする説もあります。「伸す」にも「広がる、他の者を制圧して勢力が伸びる」という意味があることが、こちらの説の根拠です。
「のさばる」の類語
はびこる
「はびこる」は「蔓延る」と表記します。雑草などの植物が一面に広がること、不愉快な物や団体が勢力を持っていっぱいに広がることや、よくないものが猛威を振るうことを表します。
「のさばる」と同じく、対象となる物事が不愉快であるという気持ちを込めて使われます。
【例文】
- 悪がはびこる世の中に、正義の味方はいるのだろうか。
- ぺんぺん草や貧乏草が、荒れ果てた庭園にはびこっている。
- 害虫がはびこり、せっかく植えたバラが枯れてしまった。
蔓延する
「蔓延する」(まんえんする)は、つる草などが伸び放題になること、悪い習慣や病気などの好ましくない物事が世間に広がることを言います。
「のさばる」は迷惑であるといった不愉快な気持ちを込めて使いますが、「蔓延する」の場合は、物事を客観視している意味合いがあり、どちらかと言うと、悪いものが広がっているという事実を述べる時に用いられます。
【例文】
- 手入れがされていない蔦が、絡みつくように蔓延している。
- インフルエンザが蔓延する時期には、手洗いやうがいを入念に。
- 若者の間には、無気力で厭世的な気分が蔓延している。
跳梁跋扈
「跳梁跋扈」(ちょうりょうばっこ)とは、悪者や得体のしれない人、化け物など、好ましくないものが勢力を振るって我が物顔で振る舞うことを言います。植物や動物などにはあまり使われません。
本来は「跳梁」が走り回ることや跳ね回ること、「跋扈」が魚がかごを飛び出して跳ね回る様子を言いました。転じて、自分勝手に思いのままに行動することを表すようになりました。
同じ意味の熟語を重ねた四字熟語で、悪い人物が自由気ままに行動し、勢力を振るっていることを強調しています。
【例文】
- 家老とその一派が跳梁跋扈して、藩政を牛耳っている。
- 悪人が跳梁跋扈し、振り込め詐欺や還付金詐欺などの新たな犯罪を生み出している。
- 魔物が跳梁跋扈すると噂される謎の宮殿に乗り込む。