「庇護欲」とは?
「庇護欲」(ひごよく)とは、「誰か・何かをかばい守りたいと欲すること」という意味です。
「庇護」という字は、いっけん難しく思われるかもしれませんが、「庇(かば)う」「護(まも)る」というそれぞれの読みがそのまま「庇護」の意味に通じています。一度覚えてしまえば、意義のわかりやすい言葉であるといえるでしょう。
「庇護欲」の使い方
「庇護欲」は、人間や動物などに対し、危険から遠ざけ、安全に保護したいという気持ちや欲求を表すために使います。
例えば、危なっかしくよちよち歩く幼い子どもや、傷ついた小動物に対する「守りたい」「助けたい」「救ってあげたい」「放っておけない」といった気持ちは、おおむね「庇護欲」に該当するといえるでしょう。
ただし、「庇護欲」は少々かしこまった表現ですので、「守りたい」という心理を生々しく感情をこめて言い表すというよりは、「守りたいという気持ち」を客観的に言い表す際に使うのが適切です。
弱いものに対して使う
「庇護欲」の対象となるものは、基本的には自分よりも弱いもの、小さなものです。自分より強いもの、自分の助けを必要としない相手を「庇護」する必要はないからですね。
ただし、とくに人間関係においては、自分と対等、もしくは自分よりも強いと思っていた相手が見せるふとした弱さなどのギャップに「庇護欲」を掻き立てられるという場合も少なくないようです。
男女関係における「好意」や「愛情」の類語表現として用いられることも多く、異性の気を引くため、「いかに相手に庇護欲を喚起させるか」を念頭に普段の態度・振る舞いを工夫している方もいるようです。
独善的な側面もある
ひとつ注意点として、「庇護欲」には独善的なニュアンスが含まれることがあります。なぜなら、「誰か・何かを守りたい」という気持ちはあくまでも主観にすぎず、必ずしもその対象となる相手に同意されているとは限らないからです。
危険や安全の定義はかなり広範なものであり、その評価は人によって異なります。相手との共通認識を得ないまま、ひとえに「(安全な)自分の手元に置いておきたい」という欲求に基づいて「庇護欲」という言葉が用いられるケースもあるようです。
例え純粋な「守りたい」という気持ちがあったとしても、自分の気持ちを押し付けるために「庇護欲」という言葉を使わないように注意したほうがよいでしょう。
例文
- 愛くるしい幼児の動作ひとつひとつが、本人の自覚とは無関係に、周囲の人間の庇護欲を刺激した。
- 彼女は、男性の庇護欲を掻き立てる目的で、いつもかよわい自分を演出している。
- 気丈だと思っていた彼が初めて見せたうろたえた表情に、彼女は庇護欲を掻き立てられた。
「庇」と「護」の字義
「庇」
「庇」(ヒ)の字は、「何かをおおうもの」という意味です。日差しをさえぎる屋根の「庇(ひさし)」を思い浮かべると、そこから派生した「何かをかばう」という意味もわかりやすいですね。
「護」
「護」(ゴ)の字は、もとは「言」と「つかむ」の意から、「命令でつかむ」「統率する」の意味でした。ここから派生して、「みまもる」「ふせぐ」「かばう」「たすける」などの意味も表すようになったと考えられています。
「まもる」は「守る」とも書きますが、「守る」がある状態を保つ(保持する)という意味で使われるのに対し、「護る」は、外敵や危険を想定し、傷つけないようにまもるというニュアンスがあります。
「庇護欲」を英語で言うと?
「庇護欲」を英語で言いたい場合、そのまま一語で翻訳可能な名詞は存在しないため、「庇護」を表す「protect」に「望む、欲する」という意味の「desire」をつけて「desire to protect」とするのが良いでしょう。
例文
- Everyone has desire to protect for younger children.(誰もが小さな子どもたちを守りたいという庇護欲を持っています)