「ご相伴」の意味
「ご相伴(ごしょうばん)」は、「相伴」という言葉に敬語の接頭辞「ご」を付けた表現です。「相伴」には以下の意味があります。
- 正客にお供して一緒にもてなしを受けること。また、その人。
- 主となる人に付き従って、同じ行動や経験をすること。
1は簡単に言うと「宴会などに付き添いとして参加する」ことを指します。正客(しょうきゃく)とは、「中心となる客」や「主賓(しゅひん)」を表す言葉です。茶道において「茶会における最上位の客」や「上客」という意味です。
また2は「人と一緒に行動」したり、「何らかの行動に付き合う」ことを指します。ただし、あくまでメインは一緒にいる人ですから、自分が付き添いのポジションにいる場合でのみ用います。
「ご相伴」の表記
「ご相伴」は、漢字で「御相伴」と書きます。そのため、「おしょうばん」と読まれることもありますが、この読み方も誤りではありません。
「ご相伴」の使い方
「ご相伴にあずかる」は宴会や接待などの場などでもよく使われる言い回しです。なお、漢字で書く場合は「ご相伴に与る」と書きます。「ご相伴に預かる」と書くのは誤りですので注意しましょう。
ご馳走になる
「ご相伴」は1の意味、とくに「ご馳走になる」という意味で用いられる場合が多くあります。
- (食事に連れて行ってもらうことになって)「それではご相伴させていただきます。」
- 「オーナー主催の食事会で、私もご相伴にあずかることになりました。」
- (お酒を勧められて)「ご相伴にあずかります。」
また、目上の人から、あるいは、フランクな間柄でも下のように用いることがあります。
- (客が同伴者にも酒を勧めた時、同伴者に向かって)「ご相伴させてもらいなさい。」
- (友人宅でぜひ夕飯でもと勧められて)「それではご相伴になろうかな。」
- (会社でお土産を分けてもらって)「ご相伴させてもらうよ。」
同行する
2の「同行する」や「ご一緒する」という意味での「ご相伴」は、会議や接待などに同席する際に使います。また、趣味の話題などにおいては社交辞令として言う場合もありますので、覚えておくと良いかもしれませんね。
- 本日のミーティングには、私がご相伴させていただくこととなりました。
- 先日のボウリング大会は盛り上がったそうですね。今度私もご相伴にあずかりたいです。
「ご相伴」の類語
饗応
「饗応(きょうおう)」は、以下の意味を持つ言葉です。「供応」と表記されることもあります。
- お酒や食事で客をもてなすこと。
- 相手の言動に逆らわずに迎合すること。
もともとは2の意味でしたが、「相手を喜ばせる」という面が重視された結果、1の「客をもてなす」という意味が派生しました。「饗応を受ける[にあずかる]」は、もてなしを受けるという意味ですが、「ご相伴」のように誰かに付き従うというニュアンスはありません。
【使用例】
- 尊敬する部長の饗応にあずかり、記憶に残る食事会となった。
- 社長のお供とはいえども、分不相応な饗応を受け、恐縮している。
随伴
「随伴(ずいはん)」には次のような意味があります。
- 誰かの供として付き従うこと。誰かを一緒に連れて行くこと。
- ある物事につれて、別の物事が起こること。
2の意味は、平たく言えば「お供をする」ということですね。これは、同行するという意味で用いる「ご相伴」とほぼ同じように用いることができるでしょう。
【使用例】
- 議員に随伴して視察に行くことになった。
- 会長はいつも秘書を随伴しているが、今日は一人で出かけたようだ。
「ご相伴」と茶道
上でも触れた通り、「ご相伴」はもとは茶道で使われていた言葉です。茶道では主賓のことを「正客(しょうきゃく)」、その連れを「相伴(しょうばん)」と呼びます。
お茶の席では、正客が上座に、相伴たちは下座に付き、お茶は上座から順番に供されます。お茶をいただく時は、上座の人に対して「ご相伴いたします」、下座の人には「お先に」と、それぞれ挨拶してからお茶を口にするのがマナーです。
このように、「ご相伴」という言葉には、もともと主客に対する敬意と感謝が込められていました。これが茶道以外で用いられるようになっていったのです。
茶道やお茶にまつわる言葉
茶道やお茶にまつわる言葉は身の回りでも意外と使われているものです。たとえば、「一期一会(いちごいちえ)」は、一生に一度だけの出会いや機会という意味ですが、もともとは茶道に由来します。
それは茶道の心得を表したもので、茶会に臨む時にはその機会は一生の一度のものであるという思いを込めて、主客どちらも誠意を尽くしなさいという意味です。
「お茶の子さいさい」はお茶と一緒に出される菓子は簡単に食べられることから、物事が簡単にできることを指す慣用句となりました。
また、「お茶を濁す」は、いい加減なことを言ってその場をしのぐことを言いますが、茶道の素人が適当にお茶を濁らせただけで抹茶に見えるように取り繕うことに由来すると言われています。