「綻び」の意味
「綻び」は「ほころび」と読みます。「綻び」は、動詞の「綻ぶ」の連用形、または連用形が名詞化した表現で、以下のような意味があります。
- 縫い目などがほどける。
- 花の蕾 (つぼみ) が少し開く。花が咲きかける。
- やわらかい顔つきになる。笑顔になる。
- 隠しきれない事柄や気持ちが外へ現れる。
- 鳥が鳴く。さえずる。
「綻び」には複数の意味がありますが、元々の意味は1の縫い合わせたところがほどけることです。ここから、「ほぐれる・やわらぐ」というイメージを持ってさまざまな意味へと派生していきました。
2は花の蕾が、3はこわばっていた表情がやわらぐ様子を表しています。また、4はほぐれたところから隠していたものが、5は開いた嘴から鳴き声が外に出ることを指しているのです。
「綻び」の使い方
1〜4の意味での「綻び」
現代で用いられる「綻び」は、上記の1〜4の意味においてです。
- 買ったばかりのランチョンマットに綻びがあった。(縫い目などが解ける)
- 昨日今日と天気が良く暖かいので、桜が綻びてきた。(蕾が開きはじめる)
- 緊張から開放されたためか、彼の表情に綻びが見えた。(表情が和らぐ)
- 今回の事件で、ひた隠しにしていた秘密が綻び始めた。(隠し事が外に現れる)
1から派生した「綻び」
1の意味から派生して、縫い合わされたようにうまくいっていた人間関係にヒビが入ること、不具合が生じることという意味で用いられる場合があります。
- 些細な行き違いから彼との関係に綻びができてしまった。
- 結婚生活の綻びはもはや修復できない状態だ。
- 長いこと盤石な運営体制を築き上げてきたが、ここに来てついに綻びが見えてきた。
「綻びが生じる」は、物理的な状態を指す場合もありますが、人間関係がぎくしゃくする、計画が頓挫するという慣用句としても用いられます。
また、「人生が綻びる」という言い回しもあります。これは、人生に不具合が起きる、人生が悪化するというニュアンスです。
「綻」の字義・成り立ち
「綻」という字は、音読みで「タン・テン」、訓読みで「ほころ(びる)」と読み、「ほころぶ。ほころびる」「縫い目が破れる」「解ける」などの意味を表します。
「綻」という漢字は「糸」と「定」から出来ていますが、一説には、この「定」は元々は「旦」であったとされています。
「旦」の字義は「夜明け」です。「夜明け=隠れていたもの(太陽)が顔を出す」というイメージから、「衣服がほころびて肌が見える」という意味に転じ、現在の「綻」の字義となったそうです。
「綻び」の類語
破顔
「破顔(はがん)」とは、「顔をやわらげて笑う」という意味の言葉です。「破」という字には「状態や状況が変化する・壊れる」という意味があり、「破顔」で「表情が崩れる」ことを指します。ここから「顔をほころばせて笑う」という意味につながります。
なお「綻び」はあくまで「表情がやわらぐ」ことを指しますが、「破顔」はどちらかと言うと、そこからさらに進んで「笑う」というニュアンスを含みます。
【使用例】
彼は一瞬戸惑ったような顔つきになったが、すぐに破顔した。
軋轢
「軋轢(あつれき)」とは、「仲が悪くなる」という意味の言葉です。「軋」も「轢」もそれぞれ「車輪がきしむ」という意味を持っており、そこから転じて「人間関係が悪くなる」「人どうしが争う」という意味で使われるようになりました。
一方、「綻び」も場合によっては「軋轢」と同じく「関係が悪くなる」というニュアンスを含みます。しかし、その原因は「人や組織の争い」に限定されるわけではありません。その点、若干の使い方の違いが見られます。
【使用例】
彼の傲慢な振る舞いがきっかけとなり、チーム内に軋轢が生じた。
ボロが出る
「ボロが出る」とは「隠していた欠点が現れる」という意味の言葉です。「ボロ」とは「使い古した布や衣服」のことで、「人に見られたくないもの」を指します。
【使用例】
これまで慎重に立ち回ってきたが、ついにボロが出てしまった。