「貴賤」の意味とは?
「貴賤」は「きせん」と読み、「とうといことと、いやしいこと」を表す二字熟語です。また、「身分の高い人とと低い人」という意味を表す場合もあります。
中には「貴賤」の「賤」が「賎」に置き換えられているケースも散見されますが、標準字体は「賤」ですので間違えないようにしましょう。「賎」は、あくまでも許容字体です。
「貴賤」は、反対の意味を持った漢字の組み合わせでできた熟語です。したがって、どちらか一方でも漢字の意味をおさえておけば、この熟語を覚えるのも難しくないでしょう。
「貴」の意味とは?
「貴」には、「値段が高い」や「尊敬の意を表す接頭辞」などさまざまな意味・用法がありますが、「貴賤」という熟語で用いられているのは「身分・地位が高い」という意味です。
この意味で用いられている熟語には、「貴族」「貴賓」「富貴」などがあります。「貴」は音読みで「キ」と読みますが、訓読みの方はあまり知られていません。
訓読みでは「とうとい(たっとい)」「とうとぶ(たっとぶ)」と読みます。また、人名などで「たか(たかし)」と読まれることもありますが、こちらは常用外の読み方です。
「賤」の意味とは?
「賤」には、「値段が低い」や「粗末の意を表す接頭辞」などさまざまな意味・用法がありますが、「貴賤」という熟語で用いられているのは「身分・地位が低い」という意味です。
この意味で用いられている熟語には、「賤奴」「賤民」「貧賤」などがあります。「賤」は音読みで「セン」と読みますが、訓読みの方はあまり知られていません。
訓読みでは「いやしい(いやしむ)」「やすい」と読むのが一般的です。また、豊臣秀吉が柴田勝家を破ったことで有名な「賤ヶ岳」の戦いは、「しずがだけ」と読みます。
「貴賤」を用いた例文
- 世の中では「職業に貴賤なし」というものの、けっして建て前通りにはいかないのが現実だ。
- 新政府は、貴賤上下の区別なく能力のある者を優先して登用していく方針を定めた。
- 老若貴賤を問わず、あらゆる人が一年に一度の秋祭りを楽しみに日々励んでいる。
これらの例文のように、「貴賤」は多くの場合、「身分の高い低いは関係なく」という文脈で用いられます。
現代社会においては「士農工商」や「貴族と平民」のような身分の区別は存在しません。したがって「貴賤」は、身分区別のあった戦前までの話に用いるか、単に「上下」と同等の意味で用いるかのどちらかです。
「貴賤」の類義語・関連語とは?
類義語
- 尊卑(そんぴ)…身分の高いものと低いもの。
- 貧富(ひんぷ)…貧しいことと富んでいること。
- 優劣(ゆうれつ)…優れていることと劣っていること。
これらの中でも、「貴賤」とほぼ同じ意味の熟語が「尊卑」です。さらに、熟語を構成しているそれぞれの漢字の訓読みも「とうとい」「いやしい」と一致しています。
「貧富」や「優劣」はかならずしも「貴賤」とイコールではありませんが、「貧富の区別なく」など、似たような用いられ方をする場合も多いです。
関連語
- 高貴(こうき)…身分が高くてとうとい様子。
- 下賤(げせん)…身分が低くていやしい様子。
身分について、高い、または、低いという似た意味の漢字を重ねてできている熟語には上のような言葉があります。
「貴賤」を英語で表現すると?
- morganatic marriage(貴賤結婚)
- left-handed marriage(貴賤結婚)
- regardless of rank(貴賤を問わず)
- without distinction of position(貴賤を問わず)
「貴賤結婚」とは、主にヨーロッパ社会で社会的・経済的・法的身分に上下の隔たりが大きい二人が結婚するケースを表したことばです。「rank」や「position」は、地位や身分を表す一般的な単語だといえます。