「あずましい」とは
「あずましい」とは、落ち着いて心地良い・ゆったりとしていて気持ちいいという意味の形容詞で、漢字では「吾妻しい」と書きます。北海道や青森で用いられている方言で、「あんずましい・あじましい」と発音するところもあります。
精神的に安らげるといった内面的な快適さを指していますが、前述の語義も、この方言を使っている人たちからすると、この言葉が持つニュアンスすべてを説明しきっているとは言えないそうです。
「あずましい」の使い方
とはいえ、基本的には標準語で「気持ちが良い」「快適」と言っている場面について「あずましい」を使えば、間違いということはないでしょう。
【使用例】
- あずましいひと時を過ごす。
- 部屋の掃除をしたからあずましい。
- 大きなお風呂はあずましいわ。
- やっぱり地元の言葉はあずましいね。
「あずましくない」とは
「あずましい」の否定形が「あずましくない」です。「居心地が悪い・落ち着かない」という精神的な不快を表しており、「あずましい」よりもよく使う言葉です。
【使用例】
- 今日は湿度が高いからあずましくない。
- 都会は騒々しくてあずましくない。
また、「あずましくない」に似た言葉に「いずい」があります。こちらも不快を表す言葉ですが、どちらかというと「しっくりこない・違和感がある」など、体が接している部分についての気持ち悪さを表しています。
「重ね着した服がゴソゴソして気持ち悪い」「新しい靴がしっくりこない」といったシチュエーションで使用する言葉です。
「あずましい」の語源
「あずましい」の由来ははっきりとはわかりませんが、語源として考えられている言葉には、次のようなものがあります。
- 吾妻しい
- 安住しい
- 東しい
「落ち着く・心地良い」といった意味から遡れば、自宅でくつろいでいるようなゆったりした気分というニュアンスで生まれた言葉なのかもしれませんね。
- 「吾が妻(自分の妻)のそばにいるような」→「吾妻しい」
- 「安住する(何も心配することなく落ち着いて住む)ような」→「安住しい」
なお、「吾妻・東(あずま)」には東の方という意味があります。「東しい」は、「吾妻」と同音であるために置き換えれて使われるようになったのでしょう。
「あずましい」の英語表現
「あずましい」は「心地良い」という意味ですから、'feeling good'、'comfortable'などと英訳することができます。
【使用例】
- It's sunny this morning and feeling good.(今朝は晴れていてあずましい。)
- Kotatsu is warm and confortable.(コタツは温かくてあずましい。)
そのほかの北海道の方言
北海道の方言で有名なものは、「なまら(とても・非常に)」「けっぱる(頑張る)」などでしょうか。ここでは、北海道で使われている、「あずましい」のような形容詞の一例をご紹介します。
- あやつける:かっこつける。…「何、あやつけてんの?(何、かっこつけてるの)」
- きかない:勝気。わんぱく。…「なまらきかねぇわ(とても勝気な人だな)」
- こわい:疲れた。…「こわいこわい。(疲れた疲れた)」
- はんかくさい:ばか。まぬけ。…「はんかくせーんでない?(バカじゃないの?)」
- みったくない:醜い。…「あの子、みったくないわ。(あの子、醜いわね)」
北海道弁の中には、「北海道から離れている地域だけど、私の住んでるあたりでも使うよ」というものもあるかもしれません。それは、北海道にはいろいろな地域の人が入植してきた歴史があり、日本全国の言葉が持ち込まれてたことによるものだと考えられます。