「遺憾」の意味
「遺憾」(いかん)とは、物事が思い通りにいかず、残念なことという意味の言葉です。
言葉通りに「(物事が自分の思った通りにいかず)残念だ」というニュアンスもある一方で、「残念だ(という気持ちを受け止めてほしい)」という非難のニュアンスが含まれる場合があります。使い方には気を付けましょう。
字義解説
「遺」(イ)という字は、「遺言」や「遺失物」などの語に見られるように、何かを「のこす」「わすれる、うしなう」という意です。
一方の「憾」(カン)は、「感」に「心」を加え、単純な「感」(心が動く様子)と区別して、何かを「うらむ」という意を表し、訓読みではそのまま「憾(うら)む」と読みます。
「恨む」と書く場合に比べて、「何かが足りず、残念」というニュアンスがより強く表れるのが特徴です。
すなわち「遺憾」は、「物足りない気持ち(=憾み)が残る(=遺る)」と解釈することができますね。
「遺憾」の使い方
「遺憾」という言葉は、主に「(きわめて・大変・まことに)遺憾である」や「遺憾の意」などの形で、自分の期待通りではなく残念だという気持ちを表すために使います。
ただし、残念な気持ちを表すとは言っても、面と向かって直接的に気持ちをぶつける場合に比べると、「遺憾」はあくまでも「(ある事態に対して)残念だと受け止めている」という、客観的な表現として用いられます。
自分の気持ちをそのまま伝える場合に比べ、「遺憾」はややドライな、ビジネスライクな表現といえるでしょう。そのため、個人間で使うよりは、個人と社会(集団)、国家と国家のような社会的関係の中で使用される機会が多い言葉であると言えます。
非難のニュアンスが含まれる場合がある
「遺憾」には、「思った通りにならず、残念に思う(その気持ちをわかってほしい)」という、相手に対する非難のニュアンスが含まれる場合があります。
特に、国家同士のような、表立った非難や責任の追及が紛争に発展しかねないような関係においては、「(私の立場では)残念だ」とのみ伝えることで、その言葉の中に非難を含めつつも、問題の即時表面化を回避するケースがしばしば見られます。
政府会見などでよく「遺憾の意」「遺憾である」といった表現が聞かれるのはこのためです。同様の理由から、「遺憾」という言葉は責任の明確化を避け、問題解決を先送りする、事なかれ主義の代名詞として受け取られる側面もあるようです。
例文
- またしても国際法を破ったA国に対し、政府は遺憾の意を表明した。(※非難のニュアンスが含まれる)
- 政府がまた「遺憾の意」だってさ。結局、具体的には何もしないってことじゃないのか?
- 我が大学の学生がこのような騒ぎを起こし、世間に迷惑をかけてしまったことは大変遺憾です。
- 体調がすぐれないため、誠に遺憾ながら、今回の会合は欠席させていただきます。
「遺憾なく」とは
「遺憾」にまつわる慣用表現として「遺憾なく」があります。「遺憾なく」とは、「申し分なく、十分に」という意味であり、心残りや悔い(=憾み)を残さぬよう、というニュアンスを持つ表現です。
「遺憾なく」という言葉にはマイナスの意思表示や非難のニュアンスはまったくなく、相手を鼓舞(こぶ)したい時や、実力などが十分であることを言い表したい時に使うことができます。
例文
- 選手の皆さんには、遺憾なく実力を発揮してもらいたい。
- 先日の試合で、彼はその力を遺憾なく振るった。
「遺憾」を英語で言うと?
「遺憾」を英語で言う場合には、以下のような言葉を用いましょう。
- regret(遺憾、残念、後悔)
- pity(哀れみ、同情、気の毒に思う)
- deplore(遺憾に思う、非難する)
- sorry(残念に思う)
「残念」「後悔」「気の毒」など、文脈によってさまざまな単語を選ぶことができますが、迷ったら「遺憾」の訳語として使われることが多い「regret」を使うことを覚えておけばよいでしょう。
例文
- He expressed regret for the situation.(彼は事態に対し、遺憾の意を表した)
- It is truly regrettable that such an accident occurred.(このような事故が起きたことは、誠に遺憾です)