「具申」の意味
「具申」とは、目上の人に対して意見や希望を詳しく述べることをいいます。また、「具申する」の形でサ行変格活用の動詞として用いることも可能です。
「意見具申」「具申書」といった熟語の一部として用いられることもあります。こういった場合でも、「具申」自体の意味をきちんと押さえておけば、戸惑う心配はありません。
「具申」は、「言う」や「申し上げる」に比べてややフォーマルで堅い印象を与えることばです。したがって、日常会話やSNS上でというよりも公文書や会議録といった文章の中で用いられます。
この言葉を使うときは、TPOに合っているかどうかをよく考えてから使うことが重要です。友人との何気ない会話や、部下や後輩相手に使ったのでは本来の使い方からは外れてしまいます。
「具」の意味
「具」という文字は、「道具」や「お味噌汁の具」という言葉の中で見かけるという人も多いのではないでしょうか。これらの場合、「具」はそれぞれ「器物」や「食物にまぜ入れる材料」という意味を表しています。
ところが、今回ご紹介している「具申」の場合は、そのどちらにも当てはまりません。「具申」の「具」が表しているのは、「くわしく」「つぶさに」という意味です。
その他にも「具」には、「十分にそろっている」「手段」などさまざまな意味があります。「鎧一具」のように、ひとそろいの物を数えるときに使うのも「具」の用法のひとつです。
「申」の意味
「申」という字には、「もうす」「目上の人にいう」という意味があります。「申告」や「申請」といった言葉で見かけたことのある人も多いことでしょう。
「もうす」は、「言う」「話す」の謙譲語として用いられます。また、「車でお宅までお送りもうします」のように補助動詞として機能する例もめずらしくありません。
いずれにしても、相手に敬意を払うために用いられるところがポイントです。余談ですが、「申」には十二支の「さる」を表す用法もあります。
「具申」を用いた例文
- 既存商品のさらなる売上げアップを目指した企画案を課長に具申した。
- 先日の会議で意見具申したものが、どうやら社長の耳にも届いたようだ。
- 王は、大臣たちの国政に関する具申に神妙な面持ちで耳を傾けていた。
「具申」という言葉を使う際のポイントは、以下の二つです。
- 内容が下位のものから上位のものに向けたものであること。
- 柔らかい文章ではなく、堅めの文章で用いられやすいこと。
これら二つを外さなければ、問題なく「具申」を使いこなすことができるでしょう。
「具申」の類義語・関連語
「具申」の類義語には、次のようなものが挙げられます。
【類義語】
- 具陳(ぐちん)…くわしく述べること。
- 上申(じょうしん)…上級の官庁や上役に対して意見・事情を述べること。
- 進言(しんげん)…上の人に対して意見を申し述べること。
- 建言(けんげん)…政府などに意見を申し立てること。
- 献言(けんげん)…君主・上役などに意見を申し上げること。
上記のうち、「上申」や「進言」が「具申」の持つニュアンスにもっとも近い意味を持ちます。しかし、この2つの言葉にははっきりとした違いがあるので注意しましょう。
「上申」は口頭で伝えるだけでなく、文書のかたちで意見を申し述べる場合にも使うことができます。一方で、「進言」は直接意見を言う場合にのみ使われる言葉です。「上申書」という言葉は存在しても「進言書」は存在しません。
「具申」を英語で表現すると?
「具申」に相当する英語表現は、次のとおりです。
【具申の英語表現】
- report in detail to a superior(上位者に対して詳細を報告する)
- provide one's opinion(意見を具申する)
- a full report(具申書)
最初の表現を除いては、「つぶさに」や「上役に対して」というニュアンスが欠けています。これは、日本語の敬語表現に対する適当な訳語が英語には多くないのが理由でしょう。