「長幼の序」とは
「長幼の序(ちょうよう・の・じょ)」とは、年長者と年少者との間に存在すべきだと考えられている秩序のことです。具体的には、子供は大人を敬い、大人は子供を慈しむようなあり方のことです。
もちろん「長幼の序」は子供と大人の間だけに限ったことではありません。年上と年下、上司と部下、老人と若者といった関係性の中でも、こうした秩序を大切にすべきだという考えの人もいます。
「長幼の序」の実例
「長幼の序」は、社会におけるさまざまな人間関係でみられます。わかりやすい例では、学校の部活動においての先輩後輩の関係が当てはまるでしょう。とくに体育会系の部活動をしていた人には、「長幼の序」を大切にしていたという方も多いかもしれません。
また、「長幼の序」に重きをおく会社も多くあります。長く務める人、つまり年齢の高い人ほど立場や地位が高くなるという「年功序列」制度は、まさに「長幼の序」に基づいた考えといえるでしょう。
以前、東日本大震災が起こった直後、当時の復興担当大臣が「長幼の序」を引き合いに出した問題発言をして、ひんしゅくを買ったことがありました。年長者が「長幼の序」を強調しすぎると、年少者の不満を募らせることにもなりかねませんので、留意しましょう。
「長幼の序」の使い方
- 長幼の序も学んでいないようでは、獣にもおとると『孟子』に書いてある。
- 長幼の序は大事かもしれないが、年功序列の弊害と事なかれ主義が社会にはびこっていることを忘れてはならない。
- ここでは、長幼の序にしたがって座りましょう。
「長幼の序」の由来
「長幼の序」は、中国の古典『孟子』(もうし)に語源をもつ故事成語です。『孟子』の「滕文公上(とうぶんこう・じょう)」によれば、
とあるように、人間には節度を持つための倫理教育が必要であり、「長幼の序」はその倫理のうちの一つだとされています。
儒教において、「長幼の序」を含めた「父子の親」、「君臣の義」、「夫婦の別」、「朋友(ほうゆう)の信」は、人の守るべき五つの道=「五倫」とされています。
「長幼の序」という価値観
古代中国で生まれた教えである儒教では、両親や年上の人といった目上の人をとても大事にしています。現在でも儒教の影響が色濃い韓国などでは、ドラマやアイドルメンバーの中でさえも「長幼の序」が重視される傾向があるようです。
日本では、戦前の学校において、「修身」という科目で儒教主義的な道徳教育がなされてきました。そのため、昭和の頃までは儒教に基づいた「長幼の序」の価値観も、国民に広く理解されていました。
しかし、戦後、「修身」は公教育から消え、儒教の考え方について学ぶ機会は大変少なくなりました。また、日本経済の発展や国際化も、国民にさまざまな価値観を与えていったといえるでしょう。
それまで儒教的な教育を受けてきた年上の世代と、儒教に触れる機会の少ない若者世代では、「長幼の序」を含めた倫理観そのものが異なっているといっても過言ではないのかもしれません。