「歯痛ポーズ」とは
「歯痛(しつう)ポーズ」は写真撮影時に使われる名称のひとつで、片側または両方の頬を包み込むように手のひらを当てるポーズを指す言葉です。虫歯で歯が痛む時にとる仕草に似ているため、「歯痛ポーズ」または「虫歯ポーズ」と呼ばれています。
近年は携帯電話やスマートフォンに搭載されたカメラ機能により、撮影したりされたりする機会が増えました。撮影時のポーズやシチュエーションにこだわる人も増えてきています。
そのような中で、ひときわ若い女性の注目を集めたのがこのポーズです。「歯痛ポーズ」という言葉はSNSなどを通じて拡散し、若者言葉のひとつとしても認識されるようになりました。
「歯痛ポーズ」の使い方
- 集合写真を撮る時は、全員「歯痛ポーズ」でそろえよう。
- 雑誌モデルの真似をして「歯痛ポーズ」をしてみたけれど、どうしても同じようにはきまらない。
- 私の写真を見て「歯でも痛かったのか」と誤解している両親に、「歯痛ポーズ」を理解させるのは難しい。
「歯痛ポーズ」のメリット
「歯痛ポーズ」をとる時は、頬骨に沿ってやさしく手を添えます。頬杖をつく場合は腕に頭部を委ねますが、「歯痛ポーズ」の場合は手は軽く添えるだけです。
すると、正面から見た時に顔の一部分が隠れた形になります。手を添えるのが片側だけであれば顔の約4分の1が、両側であれば顔の約2分の1が隠れる状態となり、その分だけ顔を小さく見せることができます。
「歯痛ポーズ」の広がり
「顔を小さく見せることができる」という「歯痛ポーズ」の効果は、いち早くおしゃれ女子の間で認知され、若い世代を中心に浸透していきました。さらに、その情報はSNSを通じて広く知れ渡り、以下に挙げた要因もあって支持を得ることになります。
小顔ブームの到来
「小顔」というキーワードが女性の心を支配し始めたのは2000年に入った頃からでしょうか。一説によると、そのブームのきっかけは、1990年代に彗星のごとくあらわれた歌姫・安室奈美恵さんの存在であると言われています。
安室奈美恵さんが一世を風靡した1990年代半ば、圧倒的な歌唱力に加え、8頭身というモデル並みの体型を持つ安室さんの姿に女性たちの注目は集まりました。特に安室さんの小さな顔と大きな瞳は、多くの女性たちの憧れとなります。
さらに、2006年から始まった『小顔クイーンコンテスト』により、顔が小さいことを良しとする価値観は決定的なものとなりました。現在、当該コンテストは行われていませんが、「顔が小さい=可愛い」とする風潮は未だに変わることはありません。
確認してから撮る時代へ
スマートフォンが私たちの生活に入り込んでくるまでは、写真はカメラで撮影するものでした。当然、カメラマンと被写体は別の人。自分がどのように映っているのかは、撮影した後で確認するほかなかったのです。
しかし、スマートフォンのカメラ機能には、「インカメラ」が搭載されており、カメラマン自らが被写体になる、すなわち「自撮り」を可能にしました。
自分がどのように映るのかを撮影前に確認できるようになったことで、映り具合を気にしてポーズにこだわる人が増えたのです。
国外から見た「歯痛ポーズ」
2014年、イギリスの新聞サイト 「Mail Online」である話題が取り上げられました。そこには、ある書店に並んだ表紙の写真とともに「顔をスリムに見せるためにモデルに‘cavity pose(虫歯ポーズ)‘をとらせるのが日本のトレンド」とありました。
確かに、外国では小顔にこだわる風潮も、ましてや虫歯ポーズなどもないわけですから、滑稽に映ったのかもしれません。しかし、この記事や日本人女性が発信するSNSがきっかけでこのポーズの流行を知り、真似をする外国人女性も出て来たといいます。
ちなみにモデルの場合は、きれいに施したネイルを映り込ませるために、顔の近くに手を置くポーズをとることがあるようです。
記事に取り上げられた雑誌の表紙が、モデルならではのポーズの取り方だったのか、若い女性の流行を意識したものだったのか。今もなお謎のまま残されています。