「空目する」の意味とは?
「空目する」(そらめ-する)には以下のような意味があります。
- 実際にはないものが見えたように思う
- 見ないふりをする
- 目を上に向ける
- 虚ろな目をしている
4の意味の場合、古語で使う例が見られます。ネットスラングでの「空目する」の意味については後述します。
「空目する」の使い方と例文
1.実際にはないものが見えたように思う
「空目する」のもともとの意味は、実際にはないものが見えたように思うことです。「見間違うこと」と説明している辞書であっても、「ありもしないものを見たと感じること」のような意味が併記されています。
そのため「Aを見たように感じたが、実はBだった。」という場合に用いられることは少なく、使ったとしても、「勘違い」より「Aが存在しなかったこと」に重点を置いている表現と言えるでしょう。
【例文】
- 雑踏の中に彼の姿を見た気がしたが、空目だったようだ。
- UFOが飛んでいたように見えたが、他の人には「光線の加減でしょ。空目したのかもね。」と言われた。
2.見ないふりをする
2の意味の「空目する」は、他人が困っていたり、悪事が行われたりしていても見ないふりをするということです。厄介事に巻き込まれたくないためにあえて無視している、助けを求められても目をそらしているさまを表します。
【例文】
- クラスでいじめにあっているが、いじめっ子以外もみな空目して頼りにならない。
- お代官様の横暴があっても、多くの家臣は空目している。
3.目を上に向ける
3の意味の「空目する」は、黒目の瞳の部分だけを上に動かして視線を向けるような目つきをすることです。「空目使いをする」という使い方もあります。
【例文】
- スパイの疑いがかかっている彼女は意味ありげに空目して、誰かに合図を送っているようだった。
- 少し見えにくかったので、空目して目を凝らしていたら、睨んでいると間違えられた。
4.虚ろな目をしている
「空目する」を虚ろな目をしている、心がむなしく遠くを見るような目つきでいるという意味で使っている古語の例を挙げます。
【原文】返す返す、例のそらめのみしつつ過ぐす
【現代語訳】来る日も来る日も、いつものように虚ろな目をしながら暮らしている。
『成尋阿闍梨母集』は平安時代の僧侶「成尋」の母による日記のような私家集です。延久4年 (1072年)に当時の中国の王朝「宋」に成尋が渡航した際、その母は80歳を過ぎていました。二度と息子に会えないと悲しみ、虚しく思う気持ちが込められています。
ネットスラングの「空目する」とは
ネットスラングの「空目する」は、おもにネット上の記事や投稿において、言葉や文字を読み間違う・誤読することです。
「空目する」の意味1では、「Aを見たように感じたが、Aは存在しなかった」ことを表します。ここから派生して、「Aを見たように感じたが、(Aは存在せず)実際にはBだった」という意味で使われるようになったのでしょう。
ネットスラングの「空目する」が発生するのは、たとえば次のようなケースです。
「空目する」の具体例
ニュース記事で、プロ野球の始球式の様子が伝えられることがありますね。その際、「ノーバン投球」「ノーバン始球式」といった言葉が使われることもしばしばです。
「ノーバン」とは「ノーバウンド」の略ですから、ゲストが投げたボールが途中で地面に触れることなくキャッチャーに届いた場合に、「ノーバン投球」のように表現します。
しかし、この「ノーバン」の濁音を半濁音と読み誤って「ノーパン」と「空目する」場合も。音で聞けばすぐに誤読に気づきますが、ネットニュースの見出しや記事の冒頭を目にしただけで、即座に違いを判別するのは難しいかもしれません。
特に女優や女性タレントが奇抜なコスチュームや、ミニスカート、ショートパンツなどで始球式をした場合、ギョッとしてしまう方もいるようですね。事実を確かめようと、思わず記事を読み進めてしまう方もいるのではないでしょうか。
「空目する」の類語
「空見する」の類語を、それぞれの意味に分けて紹介します。なお、4の「虚ろな目をしている」という意味の類語については、現代語であまり使われる例が見当たらないので割愛します。
1の意味の類語:錯覚
「錯覚」(さっかく)は、実際の物と異なる色や形があたかもそうであるかのように認知してしまうことです。「空目する」の意味1やネットスラングの意味と似ています。
しかし、「錯覚」は視覚だけでなく、聴覚や触覚などの情報に対しても使います。また、派生して、思い違いをすることを指す場合もあります。
【例文】
- 庭に誰か入ってきたように見えたが、錯覚だったようだ。
- 道を横切った猫を、一瞬、亡くした愛猫と錯覚した。
2の意味の類語:素知らぬ
「素知らぬ」(そしらぬ)とは、本当は知っているのにも関わらず知らないような素振りをみせる様子という意味です。2の意味の見ないふりをすると同様のことを表し、「素知らぬ顔」「素知らぬふり」というように使います。
【例文】
- 落とし穴にはまっている人がいたが、素知らぬふりで通り過ぎた。
- 同僚が仕事が終わらずに困っている様子だったが、素知らぬ顔で帰宅した。
3の意味の類語:上目遣い・上目使い
「上目使い/上目遣い」(うわめづかい)は、顔を上に動かさずに目だけを上に動かしてその方向に視線をやることをいいます。
【例文】
- 叱られた生徒は、上目使いで教師の様子を窺った。
- 犬が上目遣いにこちらを見ている。可愛さに負けてオヤツをあげてしまいそうだ。