「子はかすがい」とは?
「子はかすがい」とは、夫婦の間に多少のいざこざがあっても、子どもがいるとその子への愛情が夫婦の仲をなごやかにしてつなぎとめ、縁を守ってくれるという意味のことわざです。「子は夫婦のかすがい」とも言います。
「かすがい」とは?
鎹(かすがい)とは、建材などをつなぎとめるために使われる、両端が曲がっていて「コ」の字の形になっている大きな釘のことです。主に木材に使われますが、石材をつなぎとめるのに使われることもあります。
また、そこから転じて、二つのものをつなぎとめる役割をするものを「かすがい」と呼ぶこともあります。夫婦をそれぞれ木材に見立て、子どもがその木材をつなぎとめる「かすがい」であると想像すると、より明確に理解できるでしょう。
「子はかすがい」使い方
- 叔父夫婦はよくケンカしていたものだが、先日無事に金婚式を迎えた。いとこたちの存在が大きかったのだろう、まさに「子はかすがい」といえるね。
- 夫婦の間でいろいろ大変なこともあり、別れを考えたこともあったが、今は子どものおかげでよい関係を築けている。ほんとうに、「子はかすがい」だ。
- 「子はかすがい」と言うけれど、子どもが巣立って夫婦だけになっても仲良くできるように、お互いを思いあって努力していきたい。
「子はかすがい」類語
縁の切れ目は子で繋ぐ
「縁の切れ目は子で繋ぐ(えんのきれめはこでつなぐ)」は、夫婦の仲が悪くなっても、子どものことを考えて、子どもが不幸にならないように夫婦別れをすることを思いとどまる、という意味のことわざです。
【例文】
叔母夫婦はずっと仲が悪かったのに、「縁の切れ目は子で繋ぐ」の言葉通り、娘が結婚するまでは離婚を踏みとどまっていたらしい。
子は縁つなぎ
「子は縁つなぎ(こはえんつなぎ)」は、子どもは夫婦の仲をつなぎとめてくれるものである、という意味です。
【例文】
「子は縁つなぎ」と言うけれど、うちの両親はぼくが就職で実家を出てからまったく口をきかなくなったみたいだ。
跡追う子に引かれる
「跡追う子に引かれる(あとおうこにひかれる)」は、夫のもとを去ることを決めていても、自分のあとを追う子どもへの愛情があるために夫婦別れに踏み切れない女性の気持ちを表したことわざです。
【例文】
夫の浮気癖に耐え切れず、一度は別れることを決めたが、跡追う子に引かれて結局は離婚することができなかった。
落語「子はかすがい」
古典落語の演目の一つ、「子別れ」の、上・中・下の三部構成のうち、下の部分を「子はかすがい」という名で呼ぶことがあります。「子別れ」は、三部をすべて通して語ると1時間くらいかかる、人情噺の大作です。
大工の熊五郎が遊女にのぼせあがり、それに腹を立てた女房のおみつが息子の亀吉と一緒に家を出て行ってしまいます。
三年後、遊女と別れてまじめに働く熊五郎が亀吉と偶然出会って…というお話で、「子はかすがい」ということわざと、大きな釘であるかすがいそのものがかけられて、オチへとつながります。
「子はかすがい」は本当?
では、実際に「子はかすがい」になり得るのでしょうか。下表の①のデータを見ると、子どものない夫婦の離婚と子どものある夫婦の離婚はほぼ半々です。
しかし、②のデータによれば、子どものない夫婦は1割未満ですから、子どものいないことで離婚へのハードルが低くなっている傾向はあると考えられます。
①平成21年厚生労働省の人口動態統計特殊報告による | |
平成20年の離婚件数 | 約25.1万件 |
内、子どものない夫婦の離婚 | 約10.7万件(約43%) |
内、子どものある夫婦の離婚 | 約14.4万件(約57%) |
②平成22年国立社会保障・人口問題研究所の出生動向基本調査による | |
結婚期間が15〜19年の夫婦のうち、子どもがいない夫婦(※) | 約6% |
(※子どもを持つことを初めから選ばなかった夫婦と、望んだけれど恵まれなかった夫婦を含む)
一方、子どもがいてもそれなりの数の夫婦が離婚していることを考えると、現代においては「子はかすがい」とは言い切れないようです。生活様式の変化などにより、家族のかたちも昔とは変わってきたということでしょう。