「私怨」とは?
「私怨」とは、わたくしごとの怨(うら)み、すなわち「個人的なうらみ」のことです。
少々堅い表現であるため、例えばニュースなどでは「私怨」とは言わずに、「容疑者は被害者に対し、個人的なうらみを抱いていたと見られ…」などと聞く機会のほうが多いかもしれません。
「怨」の字について
「私怨」の「怨」(うら-み、エン、オン)の字は、「こころがおしつけられて曲がる」さまを表し、これが「うらみ」という意味に通じているのです。
「怨霊(おんりょう)」「怨嗟(えんさ)」「怨み言(うらみごと)」など、「怨」の字を含む熟語には何かをうらむという意味の言葉を多く挙げることができます。
なお「うらむ」という字には、「怨む」「恨む」「憾む」の三種があります。みな何かを憎みうらむという意味は共通なのですが、以下のように微妙なニュアンスの差があります。
- 「怨む」…害となるものや、敵、仇(かたき)に対するうらみ
- 「恨む」…何かを悔やむ気持ち、悔しい気持ち
- 「憾む」…何かが足りなくて悔しい、残念という気持ち
「私怨」の使い方
「私怨」という言葉は、主に「私怨を抱(いだ)く」「私怨を持つ」「私怨を晴らす」などの形で使用されます。活用の形は「うらみ」と同様であると覚えましょう。
「私怨」が使われる基本的な状況は、犯罪、もしくは迷惑な行為を行った人間に対する動機面での追及です。「なぜそんなことをしたのか?」という問いに対する結論のひとつが「私怨」というわけですね。
「私のうらみ」を客観的に言う言葉
「私怨」には「私」という字があらかじめ入っていますので、例えば「私はあの人に私怨があって…」という言い方は重複表現であり、誤りです。
自分自身の感情を客観視する場合には使用できますが、基本的には、誰かに内在する個人的なうらみについて使用する言葉であると捉えましょう。
例文
- 迷惑行為を繰り返していた隣人に、Aさんは日ごろから強い私怨を抱いていたらしい。
- 「私が彼を非難したのは私怨によるものではない、これは純粋な社会正義だ」とB氏は主張した。
- 大切なものを壊されて私怨を晴らしたい気持ちはわかるが、日本が法治国家である以上、違法行為は法によって裁かれるべきだ。
- 現場の状況を目にした刑事は、犯人の動機は金ではなく私怨であると予想した。
「私怨」の英語表現
「私怨」を英語で言う場合には、「private malice」がよいでしょう。「malice」は基本的には「悪意(敵意)」と訳され、法律用語としては、相手を傷つけようとする明確な意思のこと、すなわち「故意」のことを指します。
それに「private」(私用の、個人の)がつくことで、個人が抱く悪意、個人が抱くうらみという意味となるわけですね。
また、単純に「うらむ」という意味の「grudge」を用いるのもよいでしょう。「うらみ」は基本的には個人的なものですから、必ずしも「private」を前につける必要はありません。
例文
- She has a private malice[grudge] against him.(彼女は彼に私怨を抱いている)
ネット用語における「私怨」
もしインターネット上の、特に5ちゃんねる(旧・2ちゃんねる)などの掲示板で「私怨」という単語だけの書き込みを見つけた場合、それは「支援」の意味かもしれません。
この場合の「支援」は、この掲示板の話題がもっと盛り上がってほしいから、書き込んで支援する、という意味です。
とくに、画像を投稿する掲示板などでは、文字なしの投稿を受け付けていない場合があり、その場合は画像に添えて一言だけ「私怨」とだけ書き込まれる場合もあります。
なぜ「支援」を「私怨」と書くのか?
なぜ「支援」を「私怨」と書くのかというと、これは誤入力ではなく、一部のネット界隈では誤字・誤入力を敢えて許容する(歓迎する)文化があるためです。
誰かが誤入力したところで、それを指摘するのは野暮という風潮がネットの一部にはあります。これが転じて、敢えて誤字を使うことを常とし、それを粋とする、そうしたユーザーもいるということですね。
【ネット用語としての「支援」の異表記例】
- 私怨
- 紫煙
- 四円
- ④(4に円でしえん)…など