「奸計」の意味
「奸計(かんけい)」とは、他人を陥れるための悪い計画や、良くない企みのことです。「姦計」と表記することもあります。
「奸」と「計」
「奸」には、よこしま・わるい・みだら・してはいけないことをする、またはそのようなことをする人という意味があります。他人の権利などを「おかす」・姦淫の罪を「おかす」・悪いことをして状況を「みだす」などの非道徳的な行為や人のことですね。
「計」は、数を数える、数量をはかる器具の「はかり」を指すなどさまざまな意味があります。「奸計」の「計」は、くわだてる、はかりごとをすることを指しています。
したがって、「奸計」とは、非常に悪いことを行って邪魔をし、人を陥れようとする計画ことという意味になるのです。
「姦」
「姦」には、かしましいという意味がありますが、「奸」と同様に、よこしま・みだら、またはそのような人といった意味もあります。そのようなことから、「奸計」を「姦計」と表記することがあるのです。
「奸計」の使い方
「奸計」が使われる場面
「奸計」という言葉は、話し言葉ではあまり使う機会がありません。どちらかと言えば文語的な表現ですので、多くの場合は、歴史ものや文学作品などの書籍、映画やドラマなどで用いられます。
たとえば時代劇。悪代官と悪徳商人がうまい汁を吸うためにする不正の相談、荒くれ者たちが目障りな善人を陥れるために立てた計画、といったことが奸計に相当します。
現代の場面で言えば、詐欺行為で相手を騙したり、策略によってライバルを追い落としたりすること。卑怯な方法を使って恋人同士を別れさせ、自分が次の恋人の座に収まってしまうのも奸計と言えるでしょう。
「奸計」の文例
奸計の例文を紹介します。人を陥れる時に「奸計を巡らす(めぐらす)」、相手のよこしまな計画に騙されてしまった時に「奸計に嵌る(はまる)」・「奸計に陥る(おちいる)」というような使い方をします。
【例文】
- Aさんが役職に就くのを辞退するように奸計を巡らせたのは、地域の実力者のB氏だ。
- 奸計に嵌り、身動きが取れなくなって無念だ。
- 敵の奸計に陥り、全てを失ってしまった。
「奸計」の類語
「悪巧み」
悪巧み(わるだくみ)は、「悪いことを計画すること」という意味。「油断して悪巧みに引っかかってしまった」のように用いられます。奸計の平易な表現ですね。
ただし、奸計は大人が立てる良からぬ計画というニュアンスであるのに対し、悪巧みは子供の悪ふざけといったものをも指すこともあります。
「謀略」
謀略(ぼうりゃく)は、人を陥れる悪い企みという意味。「謀略の限りを尽くしてあいつに罪を着せる。」というように用いられます。「謀」にも「略」にも、はかる・はかりごとの意ですから、同じ意味の文字を重ねて強調している熟語ですね。
また、謀る(たばかる)は、工夫する・相談するなどの意味がありますが、計略を企ててだます・たぶらかすという意味もあります。「相手を謀って出し抜くことに成功した。」のように使います。
「讒言」
讒言(ざんげん)とは、人を陥れるために事実を曲げて、その人を悪くいうことです。「同僚の讒言で、自分が部長に叱責された。」のように、おもに、相手の評価を下げて失脚させるため、目上の人に虚偽の報告をするときに用いられます。
「言」という字からわかるように、誰かに言うことによって悪巧みを実行する場合について使う言葉なので、奸計よりも使用範囲が限定される言葉といえるでしょう。
そのほかの類語
上記のほかにも、「奸計」の「奸」の字を含む類語には、次のような言葉が挙げられます。
- 奸智(かんち):悪知恵のこと。「奸智に長けたとんでもない詐欺師だ。」
- 奸策(かんさく):人を陥れるために策を練ること。「奸策を巡らしたが、こちらが相手に騙されてしまった。」
「智謀」とは
智謀(ちぼう)は、知恵のあるはかりごと、巧みな計略という意味です。「智謀を巡らして、味方のダメージを最小限にした。」のように用いられます。
智謀という言葉は、計略についての善悪の評価を含みませんが、「うまいこと考えたものだ」と多くの人が感心するようなニュアンスがあります。しかし、相手の智謀によって不利益を被った人から見れば、「奸計」に当たるかもしれません。