「遺恨」とは?
「遺恨」とは、大きくわけて下の二つの意味をもつ言葉です。
- 根深い恨みや後悔が、忘れ難く残っていること。
- 心残り、残念に思うこと。
「遺恨」の字義
「遺」という漢字は、音読みが「い」、訓読みは「のこ・す」です。漢字としての意味は2つあります。1つは、「残る、残す」。遺産、遺品などで用いられる意味です。もう1つは「落とす、忘れる、抜ける」という意味で、遺失物、補遺などの用いられ方をします。
「恨」は、音読みが「こん」、訓読みが「うら・み」です。この字は、まさに「恨む」「うらめしい」という意味を持ちます。
この二つの漢字があわさり、「遺恨」は、残っている恨み、うらめしさ、という意味をもつに至りました。
「遺恨」の使い方
「遺恨」という言葉を用いる際には、よく使われる言い回しがあります。「遺恨をもつ」「遺恨を晴らす」「遺恨を残す」などがその代表例です。
厳密にいえば、「遺恨」自体に、すでに「恨みを残す」という意味があるため、「遺恨を残す」という言い回しでは、「残す」が重複しています。これについては、「後に遺恨となるようなきっかけを生じさせてしまった」と解釈すればよいかも知れません。
(A男)
営業部の中村部長の専門分野は宣伝畑なのだが、圧倒的な実績を誇る鈴木部長がずっと宣伝部長として君臨している。適所を奪われたと、中村部長は鈴木部長に強い遺恨をもっているんだ。
(B子)
涼子は、昔、雅美に恋人を奪われたそうよ。彼女の結婚相手はなんと雅美の最近の恋人。遺恨を晴らしたという噂だけど、なんだか怖い話だわ。
(C男)
子供の頃、継母に虐待されていたんだが、そういうのは、遺恨を残すんだな。中年になっても、継母の顔はろくに見ることができずにいるよ。
「遺恨試合」について
スポーツ観戦をしていると、時折「遺恨試合」いう言葉を耳にします。しかし、スポーツに興味がない人にとては、意味の捉えづらい言葉ではないでしょうか。
プロレスには、場外乱闘、反則ありと、ショー化した部分もあります。その一環として、悪役プロレスラーとベビーフェイス(善玉レスラー)との対立や、レスラー同士のライバル関係などのドラマが形成されるのです。
そのような流れの中で生まれる、互いに恨みをもつ同士での対戦試合を「遺恨試合」と称します。
野球をはじめとして、それ以外のスポーツにおいても「遺恨試合」とされる対戦カードはありますが、こちらは深い恨みつらみというよりも、屈辱的大敗を期した相手チームとの試合など、リベンジ試合的な用いられ方が多いようです。
多くは、過去の屈辱、後悔、怒りなどを晴らす「遺恨試合」ですが、なかには、通常の試合の最中になんらかのアクシデントでネガティブな想いが渦巻く試合となって終わり、それをもって「遺恨試合」と呼ばれるケースもあります。
(A男)
子供の頃のプロレス中継には、まるで劇画じみた悪役プロレスラーがたくさんいて、派手な遺恨試合の演出にはゾクゾクしたものだよ。
(B子)
多角度録画で判定結果の精度があがった今と違い、昔は審判の誤審で多くの遺恨試合が生まれたものよ。私としては、その時代もまた、ワイルドな人間味があって楽しかったわ。
「遺恨」の類語
怨嗟(えんさ):うらみ、嘆くこと。その強さによっては、その感情は消えることなく残るものとなります。「遺恨」のように、忘れ難い、残る、という具体的な意味の付加はありませんが、恨みの強さから、実質的には同じような意味あいをもつ言葉です。
【文例】冤罪で、人生の大半を罪びとと称されながら獄中で過ごした人々の怨嗟の声を、決して忘れてはならない。
宿怨(しゅくえん):長年ひきずってきた恨み、年来の憎しみ。この言葉は、まさに「遺恨」の類語です。「宿」には、宿敵などのように、年来の、という意味が含まれています。
【文例】物心ついたころから虐待されてきた子供たちのなかには、宿怨を自身で知らず抑圧してしまう者さえいる。