「おらつく」とは
「おらつく」とは、相手を下に見て横柄な態度をとることを表す言葉です。具体的には、自分を大きく見せるために肩で風を切って歩いたり、乱暴な言動で相手を威嚇したりするなどの行為をさします。
「おらつく」は、性格や行動以外にも使われる表現です。例えば、派手なファッションや奇抜なヘアスタイル、厳ついデザインの物などを「おらついた○○」というように表現します。
いずれの場合も、その本質までは問題にしません。あくまでも見た目や雰囲気、イメージとして用いられるのが「おらつく」という言い回しです。
なおこの言葉は、相手を威嚇する時に発する「おら(どけよ)!」が元になっています。漫画の台詞では「オラ!」とカタカナ表記されることが多いため、インターネット上でも「オラつく」と、カタカナで書かれるのが普通です。
「おらつく」の用例
- 彼は、普段は優しくおとなしいのに、どうして彼女の前だと他人におらついてしまうのか。
- 学生アルバイトと思しき店員におらついている客がいて、何とも嫌な気分になった。
- 気軽な学生コンパなのに派手なストライプのスーツで登場するとは、いくら何でもおらつきすぎだ。
「おらつく」の成り立ち
「おらつく」の元になった「おら」という言葉は、そもそもどのような意味を持つ言葉なのでしょう。また、なぜ「おら」は、「おらつく」と動詞として使われるようになったのでしょうか。
「おら」は感動詞
「おら」は文法的には「感動詞」に分類される言葉です。「感動詞」とは、自立語(それ自身である概念を表し、単独でも文節を構成できる語)で活用がなく、単独で文になれるが、主語にも修飾語にもならないものをさします。
具体的には以下の種類があります。
話し手の感動を表す | 「ああ」「おや」「まあ」 |
呼びかけを表す | 「おい」「もし」「ねえ」 |
応答を表す | 「はい」「うん」「いいえ」 |
あいさつを表す | 「おはよう」「さようなら」 |
これらの中で「おら」は、呼びかけを表す感動詞にあたる単語です。そのままでも乱暴な呼びかけですが、「もしもし」や「ねえねえ」のように言葉を重ねて「おらおら」とすることで、横柄さが際立ちます。
「おらおら」の動詞化
本来は活用がないはずの感動詞「おらおら」ですが、現在確認されているだけでも「おらつく」「おらおらする」、あるいは「オラる」などの動詞に形を変えています。
その理由として、「おらおら」が単なる感動詞ではなく、性格や態度を表す擬態語(オノマトペ)として使われるようになったことが挙げられるでしょう。
オノマトペは時に、「する」や「つく」などの言葉をつけて動詞として使われます。「ざわざわ」が「ざわざわする」や「ざわつく」に、「いらいら」が「いらいらする」や「いらつく」に形を変えて使われるのがその例です。
それらと同様に「おらおら」も「おらおらする」や「おらつく」に形を変えました。その数4000種類以上とも言われる日本語のオノマトペ。「おらおら」もそのひとつと認識されるようになったことで動詞化へとつながったのです。
「おらつく」のイメージしやすさ
「おらつく」という言葉がインターネット上に登場し、若者を中心に使われるようになったのは2015年頃からです。比較的新しい言葉ではあるのですが、不思議と新しさを感じさせないのは、世代を問わず使う人が増えてきたからでしょうか。
「おらつく」の元になっている「おら!」は、不良を題材にした漫画や任侠映画作品において頻出する台詞です。どのようなシーンで、どのようなキャラクターの台詞として使われたか、観る側の印象に残りやすい言葉でもあります。
そのため、それらの作品に触れたことのある人にとっては、「おらつく」という表現から人物や行動を具象化するのは難しくありません。「ひどく怒っていて威張った態度」、「威嚇するような口調」と説明するよりも、一言「おらついた人(態度)」と表現することですぐに人物像が浮かびます。
これが、「おらつく」が若者だけにとどまらず広い世代にも使われるようになった理由のひとつかもしれません。