「目の当たり」とは?
「目の当たり」は、「まのあたり」と読みます。「眼の当たり」と書かれることもありますが、意味は同じです。
「目の当たり」は、多くの場合は「目の当たりにする」のように副詞的に用いられ、「目の前で直接見る」、「直接に遭遇する」という意味を表します。
名詞としての「目の当たり」には「目の前」「直接であること」「確実であること」などの意味がありますが、名詞的な用法は現代ではほとんど用いられていません。
読み方について
「目の当たり」の正しい読み方は、既にご紹介した通り「まのあたり」です。うっかり「めのあたり」と読んでしまいそうですが、これは誤った読み方です。
もし「めのあたり」と読んでしまうと、「目の辺り」=「目の周り、目のそば」を指すことになり、違う意味の言葉として受け取られてしまう可能性があるため、注意が必要です。
なぜ「目」を「ま」と読むのかは、後ほど詳しく解説します。
「目の当たり」例文
- 海外に留学した際、日本と海外の文化の違いを目の当たりにし、カルチャーショックを受けた。
- 交通事故の惨状を目の当たりにして、安全運転の誓いを新たにした。
- 台風被害のあった地域にボランティアに行き、被害の様子を目の当たりにして言葉を失った。
- 美しい紅葉を目の当たりにして、心が洗われる思いだ。
- 私が仕事で忙しいときに、彼が他の女の子と遊びに出かけていたのをたまたま街で目の当たりにして、すっかり気持ちが冷めてしまった。
- 頭の固い役員たちは、若手社員が企画した新商品の売れ行きを危ぶんでいたが、飛ぶように売れていく様子を目の当たりにして、認識を改めてくれたようだ。
なぜ「目」を「ま」と読む?
なぜ「目」を「ま」と読むのでしょうか。実は古い日本語では、「目」を「ま」と読んでいたようです。まつげ、まなこ、まなざし、まなじりなど、複合語には多くその読みが残っていますね。
古語「目陰」
「目」を「ま」と読む古語に、「目陰(まかげ)」という言葉があります。意味は、次の二通りです。
- 遠くのほうにあったり、良く見えなかったりするものを、目の上に手をかざしてよく見ようとする様子。
- 疑っていたり、ためらっていたりするようなまなざしのこと。
源氏物語でも、次のように使われています。
古語における「目」=「ま」
ほかにも、古語には次のような言葉があります。
- 目交(まなかひ):目と目の間、目の前。
- 目見(まみ):まなざし、目つき。
- 目引き(まびき):目くばせ。
現代語に残る「目」=「ま」
同じように「目」を「ま」と読む現代の言葉には、次のようなものがあります。
- 目映い(まばゆい):光が強くて目を開けていられない様子。
- 目蓋(まぶた):目をおおっている薄い皮膚のこと。
- 目深(まぶか):目が隠れるくらいに深く帽子などをかぶる様子。
「目の当たりにする」類語
「目の当たりにする」には、次のような類語があります。
- 遭遇する
- 目撃する
- 出くわす
- 眼前にする
- 居合わせる
「目の当たりにする」英語での表現
「目の当たりにする」の英語での表現には、次のようなものがあります。
- witness(目撃する、立ち会う)
- see with one’s own eyes(自分自身の目で見る)
- before one’s very eyes(目の前で)
- just before one’s eyes(ちょうど目の前で)
- actually(実際に)
「目の当たり」まとめ
インターネットが普及した現代、私たちは部屋から一歩も出ることなく、ネットの中で世界中のいろいろな街を訪れ、そこで何が起こっているのかを知ることができるようになりました。テレビをつければ、衝撃的な映像を何の危険もなく見ることもできます。
ですが、それは情報の送り手が、何らかの意識的な加工を施している情報かもしれませんし、情報の受け手である我々も、都合の良い情報だけを選んで受け取っている可能性もあります。
実際に物事を「目の当たりにする」ということは、仮想の空間にはない「リアル」と向き合い、そのリアルを自分のこととしてとらえ直す、ということなのかもしれませんね。