「的」とは?
「的」には<てき><まと>の二つの読み方があり、意味も大きく分けて二つ存在します。「彼女は母親的な存在だ」「あのマークを的にして」と言った場合、「的」の意味は大きく異なります。
「的」の字義
「的」の本義は「明らかである、たしかである」です。「的確」「的証」「的然」「端的」のような言葉に見られる「的」は、この意味で用いられています。
これが転じて、「狙い、目標」という意味を表すようになりました。この意味で使われている二字熟語としては、「的中」「射的」「標的」「目的」などが挙げられます。
狙う先を意味する「的(まと)」
意味
ダーツの経験はおありでしょうか?矢をボードに向かって投げる競技で、バーなどでも気軽に楽しめる人気のゲームですが、その「ボード」がまさに「的(まと)」です。弓矢や銃などの飛び道具で「狙って当てるための目標」となる物のことですね。
弓矢の的のように、現実に存在するものだけではなく、「憧れの的」などのように、関心が向かう先などを表すときにも用いられます。
的を狙う、という意味が転じて「核心」「要点」を表す言葉としても用いられます。「核心」とは物事において重要な部分を表しますから、「的」の意味に通じますね。
使い方
- 初めてアーチェリーに挑戦したが、的に全く当たらない。
- 距離が伸びるほど、的が小さいほど、難しい。
- 転校生の彼女は、その美しさから学生の注目の的だ。
- 的を射た質問に、動揺を隠せなかった。
性質・状態を表す「的(てき)」
意味
「的」は主に名詞の後に付いて、「美的」「効果的」などと簡潔に、前にある言葉と似た状態や性質、傾向を持っているさまを表す言い回しです。
物や人を表す言葉に付いて、「のよう」「風」など、それに似た性質を持っていることを示します。また、「積極的」などのようにものの状態を表す言葉に付く場合は、「その状態にある」という意味を持たせる働きをします。
「私的には」「母親的には」などと使われることもありますが、これは曖昧表現で本来の使い方ではありません。この用法については、後述しますので、そちらをご覧ください。
使い方
- 間違っている時はいつも叱ってくれる先生は、私にとって父親的な存在だ。
- 国民は平和的な解決を求めている。
- 自発的に行動することは、良いことだ。
- 今日の会議で彼の異動が、暫定的に決まった。
若者言葉における「的」の使い方
日本語の若者言葉において、「的」は曖昧表現の一つとして使われています。「私的(わたしてき)には、こう思う。」などのように、本来は「私は」とするべきところをぼかした表現です。
訳すとすれば「私としては、こう思う。」となります。「~だ」「~です」と言い切ることによって生じる軋轢や衝突を避けるための、若者を中心に多用されるぼかし言葉の代表格と言えるでしょう。
本来の言葉の用法としては正しいとは言えませんが、完全に誤用であるとは言えないほどに、一般的に使われている言葉です。
「的」を表す英語・カタカナ語
「的(まと)」を表す英語・カタカナ語
狙いを定めて当てる「的(まと)」という意味においては「ターゲット(target)」という言葉が、カタカナ語として定着しています。「獲物」というような意味でも使われる言葉です。
「注目の的」など、興味や注目の対象となる人や状況などを表す場合には「フォーカス(focus)」もよく使われます。
「的(てき)」を表す英語・カタカナ語
英語で、的(てき)という意味を表す「-ic」という接尾辞が多用されます。例えば、basicは「基本的な」という意味で、「base」と「-ic」が組み合わされた言葉です。
同じように、automatic(オートマチック:自動的な)、romantic(ロマンチック)など性質を表す英語があります。カタカナ語では、この「チック」という語尾が独り立ちして、「乙女チック」などという形で用いられることも多くあります。