「禍根」とは
「禍根」の意味
「禍根(かこん)」とは、「災いが起こるもとや原因」を指す言葉です。災いという意味の「禍」と、みなもとという意味の「根」から成り立つ名詞です。
「禍」という漢字
「禍」という字は、音読では「カ」、訓読では「まが・わざわ(い)」と読みます。字意は「災い・不幸」または「災いする・不幸を与える」です。
「根」という漢字
「根」は、音読では「コン」、訓読では「ね」と読みます。「草や木のねっこ」「つけね・ねもと」「みなもと・よりどころ」といった意味があります。
「禍根」の使い方
「禍根」は災いのもとという意味ですから、復讐劇や長年の確執の原因となる、あるいは原因となりそうな事件・事態に対して用いる言葉です。「禍根」はおもに、次の二つの言い回しで使われます。
「禍根を断つ」
「禍根を断つ(たつ)」とは、「災いのもととなるものを切り離す」「のちの災いとならないように対処する」という意味です。「禍根を絶つ」と表記することもあります。
【例】
- 疑心暗鬼に陥る(おちいる)よりも、ことを明らかにして禍根を断つ方がいい。
- のちの禍根を断つために、なんらかの策が必要です。
「禍根を残す」
「禍根を残す」とは、「のちに災難となる原因を残す」ことを表す言い回しです。
【例】
- 強引に反対意見をねじ伏せても、のちに禍根を残すことになるだろう。
- 禍根を残さないよう、両者の言い分を聞いてから処分を決めます。
「禍根」の類語
「禍根」の類語
「禍根」の類語には次のような言葉が挙げられます。これらはそれぞれ、「〜を断つ」「〜を残す」という言い回しでも用いることができます。
- 火種
- 災いのもと
「禍根を断つ」の類語
- 関係を修復する
- 気持ちを晴らす
- 事態を収拾する
- 和解する
「禍根を残す」の類語
- 尾を引く
- しこりが残る
- 引きずる
「禍根」に関することわざ・慣用句
「放虎帰山」
「放虎帰山(ほうこきざん)」は、虎を山に放せばいつか自分が襲われることになるという意味です。のちに禍根を残すという喩えとして用いられます。
語源となったのは、『三国志』蜀志・劉巴伝・注にある、次のようなエピソードです。
「養虎遺患」
「養虎遺患(ようこいかん)」とは、敵である者を許してしまい、のちに禍根を残すことの喩えです。
「養虎」は敵である虎を養うという意味から、敵を許してしまうこと。「遺患」はのちの災いのもとを残すことを指しています。
「養虎遺患」は、上の『史記』項羽本記にある故事に由来します。「養虎の患い(うれい)」という言葉も、由来と意味は同じです。
「禍根」と「遺恨」
漢字の「根」と「恨」が似ていて、さらに読み方も似ていることから、「禍根」と「遺恨」は混同されることがあります。
「遺恨」とは
「遺恨(いこん)」には、「長い間持ち続けていた恨み・忘れられない憎しみ・宿怨(しゅくえん)」、あるいは「残念に思うこと・心残り・遺憾(いかん)」という意味があります。
「禍根」と混同しやすいのは前者の意味ですね。この「遺恨」という言葉は、「遺恨がある」「遺恨を晴らす」のように用いられます。
「禍根」と「遺恨」の違い
「禍根」は災いの原因、「遺恨」は残った恨みを指していますから、まったく違う言葉であることがわかります。例えば、「AがBを陥れた」という事件Xを考えてみましょう。
事件XによってAに恨みをもったBが、Aに仕返しをする場合、Aに災いをもたらす事件Xが禍根です。一方、仕返しをするかどうかに関わらず、BがAに対して抱き続ける憎しみ、それが「遺恨」です。
「禍根を断つ」と「遺恨を晴らす」
上で、「禍根を断つ」という使い方を紹介しましたが、「遺恨を断つ」とは言いません。「遺恨」は「晴らす」です。「遺恨を晴らす」は「積年の恨みを晴らす」ことを表しています。