「注目」とは?
「注目」は、大きく分けて三つの意味をもつ言葉です。
- 具象(形あるもの)としての何かを、注意して見つめること。
- 具象・抽象を問わず、何かに関心をもち、意識を向けること。
- 日本の旧軍隊で、指揮官・上官に注意を向けさせるための号令。
下記にて、各項目ごとの意味と使い方を詳しく解説してまいります。
視線としての「注目」とその使い方
実際の目により、何かを注意深く見つめる意味での「注目」は、読んで字のごとくで、実際にそこにあるものに「目」を「注ぐ」ことです。
目を開いているとき、私たちは漠然とまわりの状況や情景を見ていますが、そこに集中した意識が働かなければ、単に「目に入っている」だけの状態といえます。
ところが、これは何だろう?などと関心をひかれるものには、その対象に視線を注いで見つめ、その場所に意識も集中します。この状態が、実際の目を用いる「注目」です。文例を挙げてみましょう。
(A子)
今回のフェルメール展で、誰もが注目してその前を動かない絵は、やっぱり『真珠の耳飾りの少女』だったわ。
(B男・会議中)
皆さん、このレポートの図表3に注目してください。
意識としての「注目」とその使い方
思想などの目では見えない抽象のもの、才能ある人などが見せる形ある表現、そのどちらであれ、それらに関心をもって意識を向けることも「注目」です。この場合、「注目」の「目」は心の目と言うことができます。
大好きなアイドルのコンサートに行った時、目は舞台のアイドルを「注目」します。そのコンサートが終わって実際の目には映らなくなっても、心の目、つまり意識は常にそのアイドルの動向や活躍ぶりに向かいます。
この後者が、意識としてアイドルに向けている「注目」です。文例を挙げてみましょう。
(C男)
今日のコンサート、5人の中でもやっぱりサアヤが一番可愛くてさ。彼女ばっかり注目して、なんだかコンサート自体は印象に残らなかったよ。
(D太郎)
お前、それじゃあコンサート代がもったいないぞ。今、『シトロンガールズ』の音楽性やコンサート構成のレベルの高さが、世界的にも注目されはじめているんだよ。
旧軍隊用語の「注目」とその使い方
終戦の日が近づくと、戦争ドラマが放映されることがあります。ずらりと並んだ兵隊たちの前に指揮官が立ち、「注目!」という号令で、兵隊たちがいっせいに指揮官を注視するシーンを目にしたことはないでしょうか。
旧軍隊用語としての「注目」には、兵隊たちが姿勢を正し、敬意をもって指揮官に目と意識を向けることという、独特の意味があります。
(E子)
昨晩の戦争ドラマで、指揮官への「注目!」の号令で、一瞬下を向いた兵隊が殴られていたの。日本にも、あんな時代があったのね。
「注目」の類語とその使い方
注視
「注視」とは、じっと見つめることで、「視」は、注意してよく見る、という意味をもちます。したがって、「注目」よりもさらに集中し、観察する気持ちで見つめる、という行為です。
また、この場合は、心の目・意識によるものは含まれません。文例を挙げてみましょう。
(F夫)
彼は昆虫博士とあだ名される人物で、草原で一匹の虫を注視して数時間過ごすこともあるそうだ。
正視
「正視」は、まともに見る、正面から見据える、という意味をもちます。注意深く見る、というよりも、覚悟をもち、正面から向かい合う意識で対象を見つめる行為です。
(G子)
100人以上の死傷者が出た山崩れの現場を通りかかったのだけど、あまりに悲惨で、とても正視できなかったの。
「注目」の対義語とその使い方
無視
「無視」は、存在していることを承知しつつ、あえて存在していないように扱うことです。実際の「目」で見ないようにする「無視」と、対象の価値や存在を意識のうえで認めない「無視」の二つの側面があります。
(H美)
元彼ったら、私が目のまえにいるのに、気づいていないふりをして完璧に無視したのよ。
軽視
「軽視」とは、対象のことを、重要ではないと軽く扱い、その価値などを認めないことです。この場合は、実際の目による「視る」ではなく、意識の上で軽んずる、という意味をもちます。
(Ⅰ子)
私だって、誠心誠意仕事をしてきたのよ。課長からここまで存在を軽視されるなら、もう転職を考えるしかないと思っているわ。