「折衝」とは?意味や使い方を由来を含めてご紹介

皆さんは今までに「折衝」をしたことがありますか?いえいえ、「殺生」ではありません。交渉や取引の意の方です。今回取り上げる「折衝」は中国の戦国時代に由来するスリリングな言葉です。単なる交渉とは意味が違います。では、「折衝」の意味や由来を紹介します。

目次

  1. 「折衝」の意味
  2. 「折衝」の使い方
  3. 「折衝」の由来
  4. 「折衝」の類義語
  5. 「折衝」の同音異義語

「折衝」の意味

今回紹介する「折衝」は「せっしょう」と読みます。「せっこう」と読みたくなるかもしれませんが、正しい読み方はあくまでも「せっしょう」です。同音異義語と紛らわしいので、後半にアクセントをつけてくださいね。

この「折衝」は問題解決のための話し合いという意味で使われます。同時には叶えられない要求の落としどころを探ったり利害の食い違いを解決したりするための話し合いのことを指します。いわゆる「交渉」のことです。

「折衝」の使い方

ポイント

「折衝」は交渉とは使い方がちょっとだけ違います。交渉は大体どんな話し合いにでも使えますが、「折衝」は以下の2つのポイントを満たした話し合いにだけ使えます。

1つ目は、国や地方公共団体、企業などの組織同士の交渉であること。個人個人の話し合いには使いません。その場合は交渉で良いでしょう。

2つ目のポイントは、終始円満な取引ではなく、やや緊迫感があること。交渉は接触や交際といった意味でも使われますが、「折衝」は問題解決やトラブルを防ぐという点が重んじられます。

例文

  • 来年度の予算問題を折衝する予定だ。
  • 領土問題に関して両国間で外交折衝が続いている。
  • ここまでこじれてしまった問題がすぐに解決するとは考えにくい。地道に折衝を重ねる必要があるだろう。

「折衝」の由来

「衝いてくる矛先を折ること」とはなんぞや

「折衝」の由来は「衝いてくる矛先を折ること」です。何のこと?と思う方がほとんどでしょう。これを説明するには中国の歴史を紐解く必要があります。

元となったのは晏嬰(あんえい)という人のエピソードを描いた、『晏子春秋(あんししゅんじゅう)』という本です。

『晏子春秋』によると

さて、時は中国春秋戦国時代。晏嬰が使えていたのは斉の国です。斉の国は、一時期は春秋の五覇とも評された強国ですが、晏嬰の時代には隣国の晋(しん)の方が強国になっていました。

ある時、晋の使者が斉にやってきて、使者を交えた宴会が開かれます。そこでこの使者が、斉の王様と杯を交換したいと礼儀知らずなことを言います。その後も使者は、君主しか踊ってはいけない舞を踊ろうとするなど無礼千万を働こうとします

強国なんだからそれくらいいいだろうという、なんとも傲慢な態度ですね。しかし晏嬰ら斉の臣下たちは、そのことごとくを聞き入れませんでした。なかなか気骨がありますね。

結果、自国を曲げなかったと愛国心や団結力を評価され、戦争にはなりませんでした。気概のある人々が集まっているから、士気が高いだろうと判断されたようです。

翻って「折衝」とはなにか

この故事から、「折衝」は争いになる前に相手の攻撃をくじくという意味合いで使われるようになったと言われています。

矛先が物理的に向けられる前に争いを防ぐことができれば理想です。だから、「衝いてくる前に矛を折る」で「折衝」になったのです。自分たちの流儀を曲げずにトラブルを鎮められたら良いですね。

「折衝」の類義語

交渉

交渉には2つの意味があります。一つは接触や交際。単に関係があるという程度です。「交渉を絶つ」や「交渉を持つ」という形で使われたらこちら。

もう一つは相手と話し合うことです。「折衝」と違い、大体なんにでも使えます。問題の重大性や大きさ、個人団体問いません。困ったら交渉と書いておけばOKです。

談判

談判も交渉の一つではあります。交渉と言わずにあえて談判を使うのは、ケンカや揉め事のけりをつける時です。

揉め事を解決するために決着つけようという、ケンカ腰の姿勢がありありと伝わる表現です。いかにもトラブルという緊張感を出したいならこちらが適切です。

駆け引き

「折衝」の類義語として最も意味が似ているのが駆け引きです。相手とのやり取りの中で少しでも自分を有利にしようとすることを指します。交渉事や会議など話し合いの場で使われます。

由来となったのは、戦争用語の「かけ」と「ひき」です。「かけ」は戦場で前進すること、「ひき」は後退することです。相手に勝つためのやり取りという点で「折衝」と相通ずるものがありますね。

「折衝」の同音異義語

摂政

摂政は天皇の補佐役です。天皇が未成年の時や、女性の場合に置かれる特殊な役職です。推古天皇の摂政、厩戸王(うまやどのおう)が日本で一番有名な摂政ですね。アクセントは先頭の「せ」に置きます。

殺生

殺生は生き物を殺すことです。あるいはそれくらい残酷で惨たらしい仕打ちです。「そんな殺生な」という場合はもちろん後者の意味です。殺生もアクセントは先頭の「せ」に置きます。


人気の記事

人気のあるまとめランキング

新着一覧

最近公開されたまとめ