「画す」の意味
「画す」は辞書を引くと「画する」として載っていることが多いです。その主な意味は次の3つです。
- 線を引く
- 計画する
- 期間や範囲を区切る
このうち①の「線を引く」ですが、線ならば何でもよいわけではありません。「画す」の場合、主に「境界線を引く」というニュアンスになります。
よく使われる「一線を画す」の「一線」は、何かと何かの境界線を意味しており、「明らかに違う」という意味になります。
「画す」の例文
- 一般的な乗用車とは一線を画すデザイン
- これまでの常識とは一線を画す、画期的なアイデア
- いわゆる「流行」とは一線を画す
例文を見てもわかるとおり、「画す」「一線を画す」とセットで使われることがほとんどです。「画す」単体で使われることは、今ではあまりありませんし、ましてや「計画する」という意味で使われることは稀です。
「画す」と「畫す」「劃す」
「画す」は「畫す」という漢字を当てることもあります。読み方は同じ「かくす」です。この「畫」という漢字は「画」の旧字体で、旧字体とは、現在使用されている「当用漢字」が正式に決まる前の1946年まで使われていた字体のことです。
現在はほとんど使われることはないため、書けるようにする必要はありませんが、古い書物を読むときには「画す」ではなく「畫す」と表記されていることもあるため、覚えておいて損はありません。
一方、「劃す」と表記する場合もあります。この「劃す」も「画す」と意味は一緒であるうえ、「劃」は当用漢字であるため、現在でも使用されうる表現です。
こちらも書けるようになる必要はありませんが、覚えておくと、実際に本などで目にしたときに読み方や意味に困らずに済むでしょう。
「画す」の「画」という漢字
では、「画す」の核である「画」という漢字には、どのような意味があるのでしょうか。「画」の意味が分かれば、そこから「画す」という言葉の成り立ちも見えてきます。
まず、「画」という漢字がどのような成り立ちがあるのかを見ていきます。「画」という漢字は1946年まで使われていた「畫」を省略したものなので、「画」の成り立ちを知るには「畫」の成り立ちを見ていかなければなりません。
「畫」の成り立ち
「畫」はもともと、田んぼに境界線を引いて、田んぼを区切るさまを表した字です。そこから、「区切る」という意味になりました。
さらに、「線を引く」という意味から、漢字の線の数、いわゆる「画数」を指す言葉にもなりました。また、物事を区切ることから、物事を順序立てて考えていくこと、測る、考えをめぐらす、という意味もあります。さらに、線を引くという意味から、絵を描くことも意味しています。
このように、「画」や「畫」という漢字はいろんな意味がありますが、その成り立ちを考えると「境界線を引く、区切る」が主な意味となります。そのため、「画す」も「境界線を引いて区切る」という意味を持つのです。
「畫」の別表記「劃」
ちなみに、「劃」は「畫」から派生した感じで、「区切りを刻む」という意味があり、そこから「切れ目を刻む」という意味があります。
刀を意味する「りっとう」がついたことで、刃物で区切るという意味が強くなっていますが、「画」や「畫」と同様に「区切る」や「文字の画数」といった意味も持ちます。
「画す」の「画」を使う言葉
「区切る」の意味
「画」を「区切る」という意味で使う言葉にはほかにも「画期的」、「区画」などがあります。
「文字を書く」の意味
「画」を「文字を書く」という意味で使う言葉には「画数」、「字画」などがあります。
「はかりごとをする」の意味
「画」を「はかりごとをする」という意味で使う言葉には「計画」、「画策」、「企画」、「参画」などがあります。
「描く」の意味
「画」を「絵を描くこと」や「絵そのもの」の意味として使う言葉は多いです。この意味を持つ言葉には「画家」、「画面」、「画廊」、「映画」、「絵画」、「図画」、「漫画」、「画風」などがあります。
さらに、「日本画」、「洋画」、「水彩画」、「天描画」、「壁画」のように、絵の種類を表す言葉としても使われています。
「画す」まとめ
「画」という漢字にはいろんな意味がありますが、その原義は「境界線を引く」であり、「画す」はその意味にとても近い言葉です。
そういう意味で「画す」は、「画」を使ったほかの言葉とは一線を画しているのです。