「斟酌」とは?意味や使い方をご紹介

「斟酌」という言葉を目にしたことはありますか?法律関係やビジネス関係で用いられる言葉で「しんしゃく」と読みます。「斟」も「酌」も「汲む」という意味がありますが、果たして何を汲むのでしょうか。今回は「斟酌」の意味や使い方について解説します。

目次

  1. 「斟酌」とは
  2. 「斟酌」の使い方:法律分野
  3. 「斟酌」の使い方:ビジネスシーン
  4. 「斟酌」と「忖度」

「斟酌」とは

「斟酌」の意味

「斟酌(しんしゃく)」とは、「相手の事情や心情を汲み取ること」を指す言葉です。また転じて、「事情や心情を汲んだ上で、手加減すること・適当に処置すること」「遠慮すること」という意味もあります。

日常生活ではあまり使いませんが、法律分野やビジネスシーンで使われる言葉です。

「斟」という漢字

「斟」という漢字は、「シン」または「おしはか(る)・く(む)」と読み、「おしはかる・相手の気持ちをくみとる」や「くむ・水や酒などをくむ」という意味があります。

「酌」という漢字

「酌」という漢字は、「シャク」または「く(む)」と読み、「くむ・酒をくむ・酒をつぐ」や「酒」「盃」という意味があります。

「斟酌」の語源

「斟酌」は、それぞれ「くむ」という意味を持つ二つの漢字を組み合わせた言葉で、「水や酒の分量をはかりながら汲む」という意味で使われていました。それが転じて、心情や事情を汲み取るという意味で用いられるようになったのです。

「斟酌」の使い方:法律分野

法律用語としての「斟酌」

法律分野において、「斟酌」は、相手の置かれた状況や心情を汲み取り、その内容を人を裁くにあたっての考慮や判断の材料にすることを指し、「斟酌する・斟酌しない」というかたちで用いられます。

「斟酌」は、加害者に対して「未成年であることを斟酌して責任は問わない」のように使うこともあれば、被害者に対して「被害者の精神状態を斟酌して執行猶予なしの実刑を求める」のように使うこともあります。

「斟酌事由」とは

また、「斟酌」は「斟酌事由(しんしゃくじゆう)」という言葉としても用いられます。主に、交通事故の訴訟において使われる言葉で、相手の事情や心情を汲み取るに値する事由という意味です。

たとえば交通事故の場合、被害者が被った被害のなかには怪我や物損以外の、領収書・請求書が発行されない事柄が含まれます。精神的苦痛や怪我による退職や廃業、入院による留年や昇進の遅れなどですね。

これらが、賠償金の加算請求や慰謝料の申し立てを行う際に考慮されるべき理由、つまり「斟酌事由」となるのです。

「斟酌」と「酌量」の違い

法律関係の話題で「情状酌量(じょうじょうしゃくりょう)の余地がある」という言い回しを聞いたことがあるでしょうか。この場合、「酌量(しゃくりょう)」は、裁判官などが事情をくみ取って、処置・処罰などに手ごころを加えることを意味します

「斟酌」は事情を汲み取り考慮すること、「酌量」は事情を汲み取った上で刑罰を軽くするという意味ですから、似ていても異なる言葉です。

「酌量」は加害者を対象に、刑罰を軽くするときにしか使われず、事情を汲むに値しない場合は「情状酌量の余地なし」と言います。

「斟酌」の使い方:ビジネスシーン

ビジネスシーンにおいて、「斟酌」という言葉は、「斟酌する・斟酌しない」あるいは「斟酌を加える」「斟酌なしに」といったかたちで用いられます。

「斟酌する・しない」

「斟酌する・しない」は、「地域住民に斟酌して再開発は中止した」「ここではプライベートな事情は斟酌されない」のように用いられ、相手の事情や心情を汲む・汲まないことを指します。

また、「今期の販売目標は会社の経営状況を斟酌した結果だ」「決定には両者の言い分を斟酌する」とするならば、事情を汲み取って適当に処置するといったニュアンスです。

「斟酌を加える」

「斟酌を加える」とは、相手の事情や心情を汲んだ上で手心を加える・適当に取り計らうといった意味で、「彼女が両親の介護に忙しいことに斟酌を加えて作業の割り当てを減らした」のように用いられます。

「斟酌なしに」

例えば、会議などで、上司が発言をためらっている部下に対して「斟酌なしに意見を聞かせてくれ」「斟酌せずに発言してください」と言うことがあります。

この場合は、相手の事情や心情を汲み取らずに自分の考えを優先する、つまり、遠慮せずにという意味です。

「斟酌」と「忖度」

「忖度」とは

「忖度(そんたく)」は2017年の「ユーキャン新語・流行語大賞」を受賞した言葉なので、ご存知の方も多いのではないでしょうか。

「忖度」が流行語になったのは、森友学園の問題以降、本来の意味から離れて「権威ある相手におもねって、その意を汲み取る」というネガティブなニュアンスで多く使われるようになったからです。

しかし、本来、「忖度」は、他人の心をおしはかること、または、おしはかって相手に配慮することを意味する言葉で、「彼の心中を忖度する」「顧客の意図を忖度して取り計らう」のように、優しさや思いやりというニュアンスで用いられます。

「斟酌」と「忖度」の違い

「斟酌」も「忖度」も、相手の心情を推し量るという点では同じです。違いを見るとすれば、次のふたつの点においてでしょう。

ひとつ目は、「具体的な行動に移す」という意味を含むかどうかです。「斟酌」は相手の気持ちを汲んだ上で適切な処置をする、という行動までを表していますが、「忖度」は相手の気持ちを組む、ということのみを表しています。

ふたつ目は、「遠慮する」という意味を持つかどうかです。「斟酌」は相手の気持ちを汲んだ上で、遠慮する・ためらう・控えめにするなどの意味がありますが、「忖度」にはそのような意味がありません。


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