「郷愁」とは?
「郷愁(きょうしゅう)」とは、故郷ではないところにいて、故郷を懐かしいと思う気持ちのことを言います。また、古い昔の物事に惹かれる気持ちを指すこともあります。
「郷愁」例文
- 高校の同窓会の案内状を見て、故郷への郷愁をかきたてられた。
- 故郷の母から、名産の食べ物が送られてきた。郷愁にひたりながら食べることとしよう。
- アメリカに留学中、ふと目にした日本の故郷とよく似た夕日に、郷愁を感じずにはいられなかった。
- ラジオから流れてきた、高校時代によく聴いた曲に郷愁を誘われ、ほんの少ししんみりとしてしまった。
- 菜の花畑の中を走り抜けるSLの映像をテレビで見て、郷愁にかられた。
「郷愁」類語
故郷を懐かしいと思う場合の類語
- 懐郷(かいきょう)
- 望郷(ぼうきょう)
- 思郷(しきょう)
石川啄木:「一握の砂」より
岩手県立雫石高等学校の庭園「思郷の森」には、上記の歌を記した歌碑があります。雫石高校の前身が、啄木の母校である岩手県立盛岡第一高等学校の定時制分校だったため、この歌碑が建てられたようです。
故郷を偲ぶ胸に湧き上がる、そこはかとないかなしさと、煙立ちのぼる青空のさわやかさの対比が美しい一首ですね。
古い昔の物事に惹かれる場合の類語
- 懐古(かいこ)…「懐古主義」「懐古の情」などのように使われます。
- 追憶(ついおく)…「追憶する」「追憶の中に生きている」などのように使われます。
外国語における「郷愁」の表現
ノスタルジック
「ノスタルジック(nostalgic)」は、故郷や、遠い昔、古いものなどを懐かしいと思う気持ちを表す英語の形容詞です。「ノスタルジックな音楽」、「ノスタルジックな風景」のように、名詞を伴って使われます。
ノスタルジア・ノスタルジー
英語の「ノスタルジア(nostalgia)」、フランス語の「ノスタルジー(nostalgie)」は、「郷愁」の名詞的用法です。「ノスタルジアにひたる」、「ノスタルジーを感じる」のように使います。
「ノスタルジー」という言葉は、1688年、スイスの医者のヨハネス・ホーファー(Johannes Hofer、1669~1752)が造った言葉です。
ギリシャ語で帰郷を表す「nostos」という言葉と、心の痛みを表す「algos」という言葉を組み合わせた言葉で、精神医学で心の病を表す概念だったようですが、現在は楽曲のタイトルに使われるなど比較的とっつきやすい言葉として認知されています。
【楽曲タイトル例】
- 竹内まりや『ノスタルジア』/2001年11月発表
- いきものがかり『ノスタルジア』/2010年3月発表
文学などに見られる「郷愁」
小説『郷愁』
ドイツの詩人・小説家であるヘッセ(Hermann Hesse、1877~1962)が1904年に著した小説、『ペーター・カーメンチント(Peter Camenzind)』の日本語での題名が『郷愁』です。
これは、主人公ペーターが、アルプスの山で生まれ、進学で都会へ行くことになり、恋愛、仕事などを経て故郷に戻るまでを描いた感傷的な長編の青春小説です。
映画『郷愁』
映画『郷愁』は、1988年に公開された日本の映画で、昭和28年の高知県のある田舎町を舞台にして、青年が大人になっていく様子を描いています。
西川弘志さんが主演し、吉行和子さん、津川雅彦さん、榎木孝明さんたちが共演しています。第43回毎日映画コンクールの撮影賞を受賞した作品です。