「慧眼」とは?意味や使い方をご紹介

「ご慧眼、 感服いたしました」というときの「慧眼」の読み方をご存知ですか? この場合の読み方は「けいがん」。しかし「慧眼」には「えげん」という読み方もあり、読み方によって意味が少し違うのです。今回はこの「慧眼」の意味や使い方について解説します。

目次

  1. 「慧眼」の読み方
  2. 「慧眼(けいがん)」とは
  3. 「慧眼(えげん)」とは
  4. 「慧眼(けいがん)」の使い方
  5. 「慧眼(けいがん)」と「炯眼(けいがん)」
  6. 「慧眼より之を見れば醜状著るしきぞ」

「慧眼」の読み方

「慧眼」には「けいがん」と「えげん」の二つの読み方があり、読み方によって意味が異なりますので、それぞれを詳しくご説明します。

「慧眼(けいがん)」とは

「慧眼(けいがん)」の意味

「慧眼(けいがん)」は、「物事の本質を見抜くさとい眼力」「鋭い洞察力」「将来を見通す能力」や、それらをもっていることを指す言葉です。

「慧」という漢字

「慧」という漢字は、音読みでは「ケイ」、訓読みでは「かしこ(い)・さと(い)」と読み、「さとい・かしこい・気がきく」、あるいは「仏教で、物事の道理を正しく見抜く力」という意味があります。

「慧眼(けいがん)」の由来

「慧眼(けいがん)」という言葉は、次にご説明する仏教の「慧眼(えげん)」に由来しており、対象の本質を見極めるという意味から派生して、上でご説明した意味で用いられるようになりました。

「慧眼(えげん)」とは

「慧眼(えげん)」は仏教用語で、「五限(ごげん)」という物を見る五つの作用のひとつ、「物事の本質を見抜くことができる能力」のことです。

「五限」とは

【肉眼(にくげん)】
「現実の色形を見る眼」。

【天眼(てんげん)】
「三世十方を見とおす眼」。 「三世十方(さんぜじっぽう)」は、過去・現在・未来のすべての時代と東西南北とそれぞれの間・上下の十方向を指します。

【法眼(ほうげん)】
「現象の差別を見分ける眼」。 

【慧眼(えげん)】
一切の現象は空であると達観する二乗が所有する「真理の平等を見抜く眼」。二乗とは、「声聞乗(釈尊の教えを直接聞き実践すること)」と「縁覚乗(単独で悟りを開き実践すること)」のことです。

【仏眼(ぶつげん)】
上記四つすべての眼を備えた仏の眼。

「慧眼(けいがん)」の使い方

「慧眼」は、多く、「慧眼の持ち主」や「慧眼の士」、「ご慧眼には恐れ入ります」のように用いられます。他人の洞察力に感心したときに使う言葉で、「ご慧眼」のように丁寧表現にすれば、目上の人に対しても使うことができます。

「慧眼(けいがん)」を使った例文

  • 彼女は噂に違わぬ慧眼の持ち主だった。
  • 慧眼の士とは彼のような人のことを言うのだろうね。
  • いち早く彼の将来性を見抜いたご慧眼には恐れ入りました。
  • 先生のご慧眼には感服いたします。

「慧眼(けいがん)」と「炯眼(けいがん)」

「炯眼」とは

「炯眼(けいがん)」には、「鋭く光る眼・鋭い眼光」と「真偽や本質を見抜く鋭い眼力、またはその眼力を持っていること」の二つの意味があります。

なお、「炯」という漢字は、「明らか・はっきりとしている」や「光・光る・光り輝くさま」という意味です。

「慧眼」と「炯眼」の違い

「慧」は「賢い」、「炯」は「明らか」という意味であることを考慮すると、慧眼は、「その賢さによって物事を見抜き、将来を見通す」、炯眼は「明らかにすることで物事を見抜く」というニュアンスがあるようです。

しかし、「炯眼」を辞書で引くと、説明文に「慧眼」と書かれていますので、「物事を見抜く力」という意味で用いる場合には、「慧眼」と「炯眼」に違いはなく、混同しても誤用とは言えないでしょう

「慧眼より之を見れば醜状著るしきぞ」

「人に推すに公事至誠を以てせよ」
ー西郷隆盛『南洲翁遺訓』ー

西郷隆盛が残した言葉で、「人に何かを提言する際には、公平かつ誠実にあらねばならない」という意味です。そして、この言葉の前には次のような文が綴られています。
「人を籠絡して陰に事を謀る者は、好し其事を成し得る共、慧眼より之を見れば醜状著るしきぞ」

つまり、「人を言いくるめて陰で謀略を巡らすような人は、もしそれを成し遂げることができたとしても、慧眼を以ってみれば醜いことこの上ない」、ということです。

勝海舟は西郷隆盛を至誠の人と評していたことから考えても、このように語った西郷自身にとっても、謀略の類は醜く見えていたのかもしれません。


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