「拓」とは
「拓」の意味
「拓」という漢字は、音読みでは「タク・セキ」、訓読みでは「ひら(く)」と読みます。「拓」には様々な意味がありますが、現代の熟語などで用いられている意味は次の2つです。
- ひらく(未開の土地を開く)。きりひらく。ひろげる。
- 石ずり。石碑などに刻まれた文字に紙などをあてて写しとったもの。
「拓」という漢字の成り立ち
「拓」は「てへん(手)」+「石」で成り立っています。一説には、「石」は固いもの・中身の詰まったものを指すため、「拓」は固いものを叩き割るといったことを表しているとされています。
一方で、「拓」は「拆(てへん+斥)」と同じように用いられるようになったため、切り開くの意味が加わりました。
こうして、最初にご説明した通り、現代語において「拓」という漢字が用いられているケースは「きりひらく」と「石ずり」という意味になったのです。
「拓」の使い方
「拓」は熟語で用いるか、人名・地名として使う以外にはあまり用いられないので、ここでは「拓」を含む熟語を挙げます。
「開拓」
「開拓(かいたく)」は、「拓」を含む熟語で真っ先に思い浮かぶ言葉ではないでしょうか。「荒野を開拓する」のように、山林・原野などを切り開くという意味や、「販路を開拓する」のように新しい分野・領域・進路を切り開くという意味があります。
「拓殖/拓植」
大学名としておなじみの言葉もしれませんが、本来、「拓殖/拓植(たくしょく)」とは、未開の荒地を切り開いてそこに住みつくことを指す言葉です。
戦前は、国内や海外における植民のための開拓を指していました。しかし、戦後、大学や学部・学科名などで用いられる「拓殖/拓植」という言葉は、国際的に活躍できる人材の養成のような意味です。
「拓本」
「拓本(たくほん)」とは、木・石・器物などに刻まれた文字・文様を紙に写し取る技法や、写し取ったものを意味する言葉で、「石摺り」「搨本(とうほん)」と言い換えることもできます。
【手拓(しゅたく)・拓墨(たくぼく)】
拓本をとることです。
【湿拓(しったく)】
拓本の技法の一つで、石碑などに紙を当て水で湿らせて密着させ、その上から墨汁を含ませたたんぽで軽くたたいて凸部を写し取る方法を言います。
【乾拓(かんたく)】
拓本の技法の一つで、対象物に紙を押し当て釣鐘墨(つりがねずみ)などでこすることで、凹凸を写し取る技法です。濡らしてしまうと史料価値が影響が出る木製の対象物などに適しています。釣鐘墨とは 、松煙(しょうえん)に蝋(ろう)をまぜて扁平型に固めた墨です。
「魚拓」
「魚拓(ぎょたく)」とは、魚を対象とした拓本のことで、釣果(ちょうか)を記録するときなどに行います。魚に直接墨を塗ってから紙や布を置いてこする直接法と、貼りつけた紙の上から墨や絵の具をつけたたんぽでたたいて写し取る間接法があります。
【ウェブ魚拓】
ウェブサイトを複製・保存するサービスや、複製・保存されたサイトのことです。例えば、ブログを炎上させた人が元の記事を削除しても、予めウェブ魚拓を取ってあると削除後でも閲覧できます。
「拓落失路」
「拓落失路(たくらくしつろ)」とは、落ちぶれて失意の底にあること、あるいは、出世の道が絶たれたことを表す四字熟語で、「血気盛んだった友人は拓落失路の人となった」のように用います。「拓落」は落ちぶれること、不遇なことを指す言葉です。
「拓」を用いた名前
「拓」という漢字を名前として用いる場合、「タク」以外に「ひろ・ひろし」と読まれることがあります。
「拓」に込められた願い
「拓」という漢字が持つ「切り開く」という意味から、「自分の道を自らの手で切り開ける子に育ってほしい」「困難にくじけずに高みを目指してほしい」のような願いが込められているのでしょう。
「拓」を用いた名前
「拓」を用いた男性の名前には、「拓(たく・ひろし)」「拓斗(たくと)」「拓也・拓哉(たくや)」「拓海・拓実(たくみ)」「拓真(たくま)」「拓史(たくし・ひろふみ)」などが挙げられます。
また、女性の名前の場合は「ひろ」という読み方を使う場合も多くあり、「拓実・拓海・拓美(たくみ・ひろみ)」「拓乃(ヒロノ)」などがあります。