「誠実」の意味
なぜ、伴侶に求めるものを問われた人の多くが「誠実さ」を挙げるのでしょうか。その理由は、「誠実」の意味を丁寧にたどればわかります。「誠実」とは、偽りがないこと、真面目であること、他者やものごとに真心をもって向かい合うことです。
燃えるような恋をする相手には、時として、屈折した言葉や、オール・オア・ナッシングに賭けるような危険な香り、嘘であってもうっとりさせてくれる魔性などが魅力になるかもしれません。
しかし、それが結婚相手となれば、家庭は破綻してしまうかもしれませんね。伴侶に「誠実さ」を求める気持ちも、その意味を知ればわかろうというものです。
「誠実」の使い方
「誠実」という言葉は、人の行動や態度に関する言葉ですから、「誠実な人柄」「誠実な対応」のように用いられます。また、派生語の「誠実さ」は、「彼女の言葉からは誠実さがうかがえる」のように使われます。
「誠実」の類語
「誠実」にはたくさんの類語があります。「誠実」の意味はひとつの定義におさまりませんので、それぞれの意味ごとに、類語も異なります。意味のジャンルに分けて、その類語と使い方を挙げてみましょう。
「嘘をつかない」美質としての類語
偽らない、嘘をつかない、という「誠実」の美質には、どのような類語があるでしょうか。そのご紹介のまえに、「嘘をつかない」ことの是非を考えてみましょう。
どうしても好きになれない同性の同僚からランチに誘われました。嫌なことをされている相手ではありませんが、彼女の価値観が自分とは真逆で、性格の激しさにも疲れます。休日は好きな相手と過ごして癒されたいあなたは、ランチを断ります。
このような場合、嘘をつかずに「あなたが好きではないので」と理由を伝えることは、誠実でしょうか?当然、誠実とはいえませんね。嘘をつかなければ誠実、というわけではありません。人を傷つけないための優しい嘘もたくさんあります。
誠実とは、ネガティブな意味での嘘をつかないことです。例えば、自分の利益を得るためや、人を騙したりコントロールする嘘をつかないことが、誠実な態度です。それをふまえて、類語とその使い方を挙げてみます。
【類語と使い方】
- 正直:黙っていれば、誰が壺を割ったか判らないのに、彼は正直に自分の落ち度だと言った。
- 実直:あの人はかげひなたなく、よくないことはよくないと言える実直な人物だ。
「真面目」な美質としての類語
真面目にもほどがあり、まったく融通のきかない堅苦しさでは困ることもあるでしょう。あの人は誠実ね、と言われる「真面目さ」は、周囲に気を配りつつの程よい真面目ぶりではないでしょうか。
【類語と使い方】
- 真面目:A子は、授業に遅刻もしないし、教師の話にも真剣に耳を傾ける真面目な生徒だよ。
- 律儀:彼女は、借りた本には、必ず感想や感謝の言葉を添えて返してくれるの。律儀な人だわ。
- 熱心:B男は、営業先のことを実によく調べてから訪問する。とても熱心な仕事ぶりだ。
- 真摯(しんし):彼は、心から日本を愛しているんだ。あの真摯な説得に、大臣さえ屈したんだよ。
「真心」をもつ美質としての類語
「誠実」には数多くの類語がありますが、全ての基盤となるものが「真心」ではないでしょうか。「真心」とは、真実の心、他者を思いやる純粋な心のことです。飾らず、偽らず、ありのままの純粋な想いに溢れた心は、いわゆる「真理」に近い愛のようなものかもしれません。
人間は不完全な生き物ですから、無償の愛を与えあうのは難しいことです。それでも、真心があれば、心ない嘘をつかずに真摯に対応したり、自分を飾ることなく、相手を思いやることもできるでしょう。そんな真心を基盤とする「誠実」の類語と使い方を挙げてみましょう。
【類語と使い方】
- 真心:Aさんは、初孫の幸せを祈り、一目一目に真心をこめて手袋を編んでいる。
- 忠誠:昔の家来は、殿のためなら命も投げ出す忠誠心に満ちていた。
- 篤実(とくじつ):Aさんは、身寄りのないお年寄りを無償で手助けしている。とても篤実な人だね。
まとめ
多々ある類語を眺めていると、「誠実」とは、愛情と思いやりをもって、他者やまわりの事象に丁寧に向かい合うことだとわかります。そして、生を与えられたからには、なにより自分自身に誠実でありたいものです。