「レールガン」とは?
「レールガン」(Rail Gun)とは、電磁気力によって弾体を加速・発射する兵器の名称です。「電磁砲」「電磁投射砲」「電磁加速砲」などの呼び名もあります。
従来からある銃砲が火薬の燃焼によって弾体を加速する仕組みであるのに対し、弾体の加速に電磁誘導(ローレンツ力)を用いることがレールガンの最大の特徴です。
原理上、異なる電荷を帯びた2本の伝導レールが必要となることから、レールガンと名が付いています。
レールガンの実現
「レールガン」は原理自体は単純であるため、古くからSF作品などに登場しており、「未来を感じさせる架空の電磁兵器」というイメージを持たれていました。
しかし現代では既に複数の試作品が完成、発射実験も行われており、もはや架空兵器とは言えなくなりつつあります。
レールガンにまつわる誤解
レールガンはしばしば、実体をもたないエネルギー状の何かを発射するビーム兵器やレーザー兵器のようなものと誤解されることがあります。
これは、電磁気力という目に見えにくい力を用いる点や、フィクションの産物というイメージがあることによる誤解と考えられます。
原理的には既に述べた通り、弾体の加速に電磁気力を用いているだけであり、「物理的な弾丸を物理的な力によって加速し、押し出す」という点では、一般的な火薬式の銃と変わりありません。
「レールガン」を用いた例文
- レールガンといえば、近未来SFでよく見かける電磁兵器だ。
- レールガンって、どういう仕組みなんだろう?
「レールガン」の実用性
レールガンがもし実用化されるとしたら、どのような利点があり、どのような目的に用いられるのでしょうか? レールガンの「利点」と「用途」、そして現状での「課題」を順にみていきましょう。
利点
レールガンの利点は、従来からある銃砲と比較して「弾速が速いこと」「長射程であること」の2点です。
弾体の加速度は投入される電力の大きさとレールの長さに比例し、もし理想的な条件が揃えば、弾体の初速・射程は従来の銃砲をはるかに上回ります。
用途
レールガンの用途としては、優れた「初速」「射程」を生かし、以下のように主に宇宙規模での運用が想定されています。
- 衛星軌道上のデブリ(宇宙ごみ)の排除
- 宇宙空間へ物資を輸送するための装置(マスドライバー)
- 宇宙空間における戦闘を想定した遠隔攻撃兵器
- 物質を高速で衝突させ、素粒子などを観測する加速器
課題
レールガンを実用化するにあたっての最も大きな課題は、十分な電力の確保が困難という点です。短時間に繰り返し大容量の電力を供給できる電源製作には技術的制約が大きく、装置の小型化にも困難が伴います。
また、大電流が流されることになるレールガンの砲身や弾体には、熱の発生や磁界の高速移動などの点で厳しい条件が課せられることになりますが、これらの条件をコントロールする技術もまだ完全ではありません。
理論を再現すること自体はできていますが、先述したような用途に耐えられる水準まで高性能化されたレールガンの製作には課題が多く、実用化までには今しばらく時間がかかりそうです。
「とある科学の超電磁砲」について
『とある科学の超電磁砲』は、鎌池和馬氏原作のライトノベル『とある魔術の禁書目録』のスピンオフ・コミカライズ作品です。タイトルの「超電磁砲」には「レールガン」とルビが振られ、これがそのまま作品の愛称にもなっています。
本作のヒロイン・御坂美琴(みさかみこと)は強力な電撃を操る能力から「超電磁砲(レールガン)」との異名を持っており、「レールガン」といえば兵器ではなく、このキャラクターおよびこの作品のことを指す場合があります。
スピンオフ作品という位置づけでありながら魅力的なキャラクターや迫力あるストーリーが話題を呼び、テレビアニメ化もされるなど人気を博しました。現在でも漫画連載は続いており、アニメの続編制作も発表されるなど、根強い人気が続いている作品です。
「レールガン」が登場する作品
レールガンが登場する作品をいくつかご紹介します。作品によって扱いはさまざまですが、既存の銃器の上位互換や、近未来世界の主力兵器として登場することが多いようです。
映画
- イレイザー…最新鋭兵器「EM(Electro Magnetic)銃」として登場。主人公が二丁持ちで乱射するシーンがある。
- ゴジラ×メカゴジラ…メカゴジラ「3式機龍」の武装「0式レールガン」として登場。高速な連射を可能とする。
ゲーム
- エースコンバット04…降り注ぐ小惑星片を破壊する兵器「ストーンヘンジ」として登場。弾体の加速には電磁気力とともに火薬も用いる。
- メタルギアソリッドシリーズ…シリーズの多くで歩行兵器メタルギアの搭載兵器として登場。作品によっては個人携行火器としてプレイヤーも使用可能。
小説・漫画・アニメなど
- 星界の紋章…「電磁投射砲」(イルギューフ)という名で登場。宇宙巡洋艦などの主砲として対艦戦闘に用いられる。
- ヘヴィーオブジェクト…超巨大兵器「ヘヴィーオブジェクト」の主装備として登場。マッハ10を超える弾速をたたき出すことも。
「レールガン」の今後
レールガンは今後どのような展開を見せるでしょうか? 既に発射実験を何度も実行しているアメリカ海軍では、船舶に搭載したレールガンで実用化を目指し、洋上での実証実験に入っています。
また日本でも、平成27年度の概算要求で「艦載電磁加速砲の基礎技術に関する研究」(防衛省)が記載されており、レールガンの技術研究に向けた動きがみられます。
原理は古くから知られていたものの、長らくサイエンス・フィクションの産物であったレールガン。実用品として運用される日は、意外と近いのかもしれません。