「想像」とは
「想像」とは、現実体験・心的体験から得た心象を、心のなかで新たに再構成する精神の働きのことです。別の言葉でいえば、現実の存在とは異なるものを思い描くこと、とも言えます
「想像」の意味を理解するための重要なポイントは、「新たに再構成」という部分、「現実の存在とは異なる」という部分。なぜなら、過去の体験をそのまま思い描くことは、想像ではなく記憶の再生にほかならないからです。
現実と異なるのが想像とはいえ、その内容は、現実と接点がある近しいものであることが基本です。したがって、時には、想像と現実の一致も起こり得ます。
「想像」の使い方
- 僕は、事業に大成功する自分をつねに想像して、あの大苦境を乗り切ったんだ。
- 開かないパラシュートを想像してしまう人には、スカイダイビングは無理でしょうね。
- 彼が自分の恋人だと想像するだけで、幸せな気持ちになれるの。
- A子が想像したとおりの赤い服でやってきたから、ちょっと驚いた。
「想像」の類語
「想像」の類語を挙げてみましょう。それぞれ、微妙に異なるニュアンスを持ちますが、「思い描く」という共通項をもった言葉群です。
- 空想
- 夢想
- 幻想
- 妄想
- 予想
- 推測
「想像」と「空想」の違い
「想像」が現実との接点をもつ思い描きであるのに比べ、「空想」は、現実とかけ離れたことを意識的に思い描く心の働きを指します。
小説家が私小説を執筆するときに使うのは想像力ですが、宇宙人が登場するようなSF小説を執筆するときに使うのは空想力、と言えばわかりやすいでしょうか。
「夢想」とは
「夢想」も、「空想」と同じく非現実的なものごとの思い描きですが、夢の字のとおり、夢見るごとく希望をもって未来を「夢想」するわけです。ニュアンスとして、憧れが投影されている言葉です。
「幻想」とは
「幻想」は、現実ではないのに、まるで現実のようになにかを思い浮かべることです。注意すべき点は、想像、空想、夢想などが意識的な思い浮かべなのに比べ、幻想の場合は無意識の心の働きであり、ほとんど現実と非現実の区別がつかない状態であることです。
「妄想」とは
「妄想」には、大きくわけて二つの種類があります。一つ目は、根拠のないことを想像たくましく思い描く状態。
「妄想にふける」その内容は、不健全なことを多く含みます。とはいえ、小説家などが自らを妄想族などと揶揄することが多いように、妄想は、優れた文芸の種でもあるのです。
二つ目の「妄想」は、病的な精神作用を指します。統合失調症や重篤な精神病の症状として、当事者には、その妄想がまったくの現実として感知されることが殆どです。
この妄想は脳の病によって引き起こされるものなので、投薬や治療によって消失していきます。この種の妄想は、想像の類語に入りません。
「想像」の功罪
「想像」の力は、人間に与えられた蜜でもあり毒でもある、と言えましょう。人は、希望にみちた想像をすることによって困難を超えることもあれば、悲観的な想像で心を弱め、困難をより深めてしまうこともあるからです。
スピリチュアルの世界では、昔から「思考は現実化する」という概念があります。良き想像は良き現実を引き処せ、悪しき想像は悪しき現実を引き寄せる、という考え方です。
その真偽を科学的に証明することはできませんが、少なくとも、想像や思考の内容に心身の状態が影響を受けることは、誰もが体験している事実と言えそうです。
「想像」と「イマジン」
「想像」の英語は”imagine"です。この言葉を聞いて、ジョン・レノンの楽曲『イマジン』(現在、作詞はオノ・ヨーコとの共作となっている)を思い浮かべる人は多いのではないでしょうか。
天国も、国も、宗教もないと想像してごらん、みんなで世界を分かち合うのだと想像してごらん…そんなふうに、世界がひとつになること、みなが平和に生きることを呼びかけるこの歌は、忘れ去られることなく歌い継がれてきました。
宗教的・政治的に批判を受けることもあったようですが、ワンネス(ひとつの意識)を願う人々にとって、比類なき名曲として残ってゆくことでしょう。
「想像」という力を可能な限り良きものとして働かせ、人も世界も明るいほうへ歩んでゆきたいものです。