「竜頭蛇尾」とは
「りゅうとうだび」「りょうとうだび」と読みますが、一般的には前者の「りゅうとうだび」と読みます。「龍頭蛇尾」と書いても間違いではありません。
日本では「りゅう」は「竜」と「龍」の二つの漢字を用いますが、「竜頭蛇尾」が生まれた中国では、「竜」も「龍」も「龙(lóng)」と書き、「竜(龍)頭蛇尾」は「龙头蛇尾(lóng toú shé weǐ)」となります。
「竜頭蛇尾」の意味
「竜頭蛇尾」とは、初めは勢いが良いが終わりになるにつれて勢いがなくなってしまうことや、出だしは素晴らしいが最後はつまらないことを言います。
これは、頭は立派な竜だが、尾は貧弱な蛇だという意味からきています。
「竜頭蛇尾」の由来
「竜頭蛇尾」の由来は諸説ありますが、いずれも中国の宋の時代の禅問答を集めた仏教書が由来とされています。その中でも『碧巌録(へきがんろく)』に収められている陳尊者(ちんそんじゃ)という僧侶のエピソードは、「竜頭蛇尾」の逸話として広く知られています。
「竜頭蛇尾」の逸話
陳尊者がある僧に「どこから来たのか」と尋ねると、僧は「喝!」と即答しました。陳尊者は「私のような老僧が、お前に一喝されてしまったよ。」と言うと、僧はまた「喝!」と、叫びました。それを聞いて陳尊者は次のように考えました。
“頭の角を看取(み)よ。似たることは則(すなは)ち似たるも、是(ぜ)なることは則ち未だ是ならず。只だ恐らくは龍頭蛇尾ならん。”
これは「頭の角をよく見るといい。龍に似ていると言えば似ているが、しかし未だ龍ではない。恐らく頭は龍であっても尾は蛇といったところだろう。」という意味です。
陳尊者は、この僧は初めは龍のような勢いがあるが、最後は蛇尾のように尻すぼみになり、問答を続けていくと、答えられなくなるとだろうと考えたのです。結局、その後、陳尊者が「お前は喝!喝!と言うが、三回、四回と喝! をやったあとは、一体どうするつもりなのか」と言うと、その僧は黙り込んでしまいました。
そして、この話から「竜頭蛇尾」は、初めは勢いが良いが終わりになるにつれて勢いがなくなってしまうことを例えるようになりました。
「竜頭蛇尾」の使い方
「竜頭蛇尾」はどの様に使うのでしょうか。例文を見てみましょう。
「竜頭蛇尾」の例文
1.今季の連ドラは、前評判のおかげで出だしは好調だったが、結局「竜頭蛇尾」に終わった。
2.開幕8連勝のスタートを切ったにもかかわらず、最終的にはリーグ最下位の「竜頭蛇尾」の結果しか残せなかった。
3.散々期待させておいて夢落ちの脚本なんて、まさしく「竜頭蛇尾」だ。
「竜頭蛇尾」の引用
『狂言の神』太宰治
『自作解説 怪人二十面相と少年探偵団』江戸川乱歩
『独身』森鴎外
※青空文庫出典
例文からは、「竜頭蛇尾」が良い言葉として使われていないことがわかります。「竜頭」が立派なだけに、「蛇尾」の貧弱さが強調されているようです。「最初だけでも素晴らしかった!」という意味では使われませんので、ご注意ください。
「竜頭蛇尾」の関連語句
「竜頭蛇尾」の類義語と対義語をまとめました。
「竜頭蛇尾」の類義語
・虎頭蛇尾(ことうだび)
・頭でっかち尻つぼみ
・看板だおれ
・有頭無尾(ゆうとうむび)
「竜頭蛇尾」の対義語
・徹頭徹尾(てっとうてつび)
・首尾一貫(しゅびいっかん)
・有終完美(ゆうしゅうかんび)
・始めは処女の如く、後は脱兎(だっと)の如し
「竜頭蛇尾」のまとめ
いかがでしたでしょうか。「竜頭蛇尾」の意味や使い方をおわかりいただけましたか。継続していい状態をキープするということは、とても難しいことですね。結果として「竜頭蛇尾」になってしまうことがあるかもしれませんが、出来ればどんなことでも最後は竜の尾尻に戻ってから終わりにしたいものですね。