「件」の意味
「件」には以下の3通りの読み方があります。
- けん
- くだん
- くだり
読み方によってそれぞれ意味が異なるので、ひとつずつ確認していきましょう。
「件(けん)」の意味
「件」を「けん」と読む場合、事柄や特定の物事という意味になります。案件や事件などに使われるのはこちらの意味です。
また、それらの物事を数えるための助数詞や単位としても使われます。事件や案件の他、申し込みやお問い合わせ、クレーム、トラブル、取引、留守番電話の録音数、議題やインターネットのアクセス数などにも使われます。
使い方
- 昨日の件は、無事に処理しました。
- 処理しなければならない作業がまだ3件も残っている。
「件(くだん)」の意味
「件」には「くだん」という読み方もあります。以前話題に出たものを指す指示語です。繰り返し話題出ている、いつも通りのという意味でも使われます。
「件のお店」ならいつも行っている行きつけのお店か、話題に出たお店のことです。「件の客」なら以前に何かトラブルなり取引なりがあった相手です。この場合の「件の」は「例の」に置き換えても大丈夫です。
使い方
- 大臣が件の料亭で闇取引をしていたという噂だ。
- 彼が件の転校生か、確かに異様な髪型をしている。
「件(くだり)」の意味
「件」は「くだり」と読むこともあります。文章のある一部分のことを指します。「くだん」という読み方はこの「くだり」に由来するともいわれており、古い本では「くだん」の意味で「くだり」が使われていることもあります。
「芥川龍之介の『羅生門』で一番印象的なのは、老婆が生きるために仕方がないことなら大目に見る、と語る件だ。」などのように使われます。この場合、「件」を「部分」と置き換えても意味に変化はありません。
使い方
- 主人公が故郷に戻る件はきっと君も感動するだろう。
- もう一度証言をお願いします。あなたが遺体を発見したときの件を。
「件」の慣用的表現
ネット用語「~な件」
「~な件」や「~の件」というネット用語があります。「~の話」や「~のこと」という意味で理解して大丈夫です。元々はビジネスでよく見る「~の件」と同じく、物事や事柄という意味だったそうです。
言うまでもないことですが、「~な件」という表現は日本語として間違っていることがほとんどです。例外は「不思議な」や「おかしな」などナ型形容詞が付く場合くらいでしょう。
「くだんの件」
「くだんの件」とは前に言ったこと、以前話したあの事柄、いつものことといった意味です。「くだん」が以前話題に出たこと、「けん」が物事という意味ですので、つなぎ合わせた言葉です。漢字では「件の件」となって紛らわしいので「くだんの件」と書きます。
慣用句「件の如し」
「件の如し」とは、上記の通り、前述の通りという意味の慣用句です。最近はあまり使われない言葉ですが、以前は契約書などを書く時などに文末に書いていました。
意味の由来は、妖怪の「件」の予言が外れないように、ここに書いた言葉は嘘ではない。「件」が真実しか言わないように私も真実しか書いていないという意味でした。
妖怪「件」
「件(くだん)」は妖怪の名前でもあります。江戸時代から語られるようになった、新しい種類の妖怪です。「件」という漢字を分解すると、人偏(=人)と牛になります。そのため、妖怪の「件」は顔が人で体が牛である、あるいは顔が牛で体が人と伝えられています。
妖怪「件」の特徴は、正確な予言をするところです。人間の言葉を理解し、生まれてすぐに予言をするといいます。その予言が外れることはなく、特に災害についてよく予言するそうです。
予言をするとすぐに死んでしまうといわれ、基本的に短命であると考えられています。普通の牛から生まれてすぐに予言をして死ぬか、すぐではなくても予言して死ぬと伝えられています。