「抜ける」とは
「抜ける」は「ぬける」と読みます。「抜けない」「抜けます」「抜けるとき」「抜ければ」「抜けろ」など、語形が五十音の「エ段」の音で活用する下一段活用の動詞です。
「抜ける」の意味と使い方
「抜ける」の基本的な意味は、「毛が抜ける」のように、「毛」などの「物」が固定されていたところから取れる、というものです。
さらに「離れる」「なくなる」「通過する」「弱まる」のような意味も持ちます。それでは改めて「抜ける」の意味と使い方をざっくりと整理してみましょう。
「抜ける」の意味その1
【意味】
物が固定されていたところからとれること
【例文】
- 毛が抜ける
- コンセントが抜ける
「抜ける」の意味その2
【意味】
中に含まれていたものなどが外へ出ること
【例文】
- アルコールが抜ける
- 香りが抜ける
「抜ける」の意味その3
【意味】
習慣や傾向などがなくなること
【例文】
- 疲れが抜ける
- 方言が抜ける
「抜ける」の意味その4
【意味】
押す力が弱まること、負荷が弱まること
【例文】
- ブレーキが抜ける
- 力が抜ける
「抜ける」の意味その5
【意味】
現在の場所や状態から離れること
【例文】
- チームを抜ける
- スランプを抜ける
「抜ける」の意味その6
【意味】
何かの中を通って向こう側へ行くこと、貫通すること
【例文】
- トンネルを抜ける
- 底が抜ける
「抜ける」の意味その7
【意味】
あるべきものが欠けていること
【例文】
- 名前が抜ける
- ページが抜ける
「抜ける」の意味その8
【意味】
他人よりも優れていること
【例文】
- 頭一つ抜ける
「抜ける」の用例
では「抜ける」が実際の小説の中でどのように使われているか、用例をご紹介します。
芥川竜之介『保吉の手帳から』
火野葦平『ゲテ魚好き』
一つ目の用例は、上述のその6(何かを通って向こう側へ行くこと)を、二つ目の用例は、上述のその2(中へ含まれていたものなどが外へ出ること)の意味で使われていますね。
「抜ける」の慣用表現と使い方
「抜ける」は、慣用的に使われている表現がいくつかありますので、その意味と使い方をご紹介します。
灰汁が抜ける
「灰汁が抜ける」は「あくがぬける」と読みます。「このフキ、随分水にさらしておいたから、もう灰汁が抜けていると思うよ」のように植物の渋みのある成分が取れることを意味します。
そこから転じて、人の性質や趣味などに嫌みやあくどさがなくなる、洗練される、という意味でも使われます。「あの人も還暦を過ぎてから、随分灰汁が抜けて付き合いやすくなったね」などと使います。
間が抜ける
「間(ま)が抜ける」は、音楽で大切な拍子が抜けてしまうことから、大事なことが抜け落ちていることや、考えや行動にぼんやりしたところがあることなどを言います。
「スニーカーを車のボンネットに載せたままコンビニに行ったなんて、間が抜けた話だね」などと使います。
腰が抜ける
「腰が抜ける」は、座り込んでしまいなかなか立てなくなるくらい驚くことを表現します。「おしどり夫婦だと思っていた親友の突然の離婚宣言に、腰が抜けるほど驚いた」などと使います。
膝が抜ける
「膝が抜ける」とは、膝の力がなくなり、立っていられなくなることを意味します。「今日は一日中立ち仕事だったから、さすがに膝が抜けたよ」などと使います。
また「膝が抜ける」には、ズボンなどの膝が当たる部分の生地が伸びて膝の形になったり、穴が開いたりする、という意味もあります。「お気に入りのジャージ、毎日朝から晩まで履いていたら、膝が抜けてきちゃった」などと使います。
目から鼻に抜ける
「目から鼻に抜ける」は、非常に賢い様子や抜け目のない様子を言います。「新人ながら目から鼻に抜けるような対応に感心した」などと使います。
「抜ける」が含まれる比喩表現
「歯の抜けたよう」は、まばらでふぞろいな様子や、その状態が寂しいさまを表します。
- あのアイドルも人気が下降気味でお客さんが集まらないね。ライブ会場も歯が抜けたようだよ。
「抜けるよう」は、非常に透き通った状態を言います。
- 今日は抜けるような青空で、絶好の運動会日和ですね。
- 彼女の肌は抜けるように白く、思わず見とれてしまった。
「〇〇抜ける」の表現
- 垢抜ける…容姿やしぐさなどが都会風にすっきりと洗練されること。
- 切り抜ける…困難や危険からやっとのことで逃げ出ること。
- ずば抜ける…普通よりずっと優れていること。
「抜け〇〇」の表現
- 抜け殻…魂が抜けてしまったように、うつろな状態になること。
- 抜け駆け…他の人を出し抜いて、自分だけ先に物事を進めること。
- 抜け穴…法律や規則などからうまく逃れる手段。