「帆」の意味
「帆」は「ほ」または「ハン」と読みます。ヨットなどの船についている布のことです。今でこそ船の動力と言えば重油などの石油ですが、昔19世紀までは風で走る帆船が主流でした。大航海時代に活躍した船はたいていは人力や風で動いていました。
原理はお正月の凧揚げを想像するとわかりやすいかもしれません。風に対して垂直に近い角度で帆を張ると、風下に進めます。進みたい方向と風の吹いてくる方向によっては角度を調整する必要があります。また、風が吹いていないと進めません。
帆に使われる布は非常に丈夫で、「帆布(はんぷ)」と呼ばれています。近年は丈夫さと特有の風味ゆえに帆以外でも活用されています。帆布バッグなど丈夫なバッグが最近は流行しています。
人名漢字としての意味
「帆」は人の名前にもよくつかわれる字です。男性にも使われますが、女性の方が多いようです。字を説明するときには「船の帆」や「帆立の帆」、「順風満帆の帆」などがわかりやすいのでよく使われます。
人の名前に使われる場合、「帆」は「順調な人生」や「前へ進む行動力」、「理想や夢」などの意味で使われます。人生はよく大海に例えられます。海では「帆」がある船の方が順調に、そして勢いよく進めます。生きる上での障害を波風に見立てれば「帆」は周りとうまくやっていく応用力や適応力とも言えます。そして、「帆」を高く揚げた航海の原動力は理想や夢ですね。
「帆」の使い方
順風満帆
「順風満帆」は「じゅんぷうまんぱん」と読みます。「じゅんぷうまんぽ」ではありません。よく聞く言葉なので間違えることは少ないでしょう。
「順風」とは追い風のことです。進みたい方向の反対側から後押しするように吹いてくれる風です。「満」はめいっぱい、といった意味です。四字熟語全体では帆全体に追い風を受けて前に進む様子を表します。そこから、物事が思い通りに進んでいる様子や順調で調子が良いことという意味で使われます。
追風に帆を揚げる
「追風に帆を挙げる」は「おいてにほをあげる」と読みます。追風も順風と同じく船を走らせる風です。順風が吹いている時に帆を揚げればば勢いよく前へ進めます。そこから転じて、自分の得意分野やチャンスの到来などで勢いづき力を発揮することや快調に進む様子を表します。
「得手に帆を揚げる」や「順風に帆を揚げる」も同じ意味です。
尻に帆を掛ける
「尻に帆を掛ける」とは、慌てて逃げていくという意味の慣用句です。船の後方にある帆を使ってまで急いで逃げている様子、ではなく昔の日本の服装に由来するようです。逃げ出していく男性が、あまりにも慌てていたために服装が乱れ、下着のふんどしが見えてしまっていた。そのふんどしが風をはらんでいる様子が帆に見えたそうです。
「帆」の成り立ち
「帆」という漢字は会意文字です。つくりの「凡」は「帆」の象徴です。しかし、単独では「全て」という意味を持つようになったので、「布」を表す「巾」も加えられたと言われています。
「帆」を英語で
「帆」は英語で「sail(セイル)」です。帆布なら「canvas」となります。日本語の「帆」と同じように英語の「sail」は船が進むために風をとらえる丈夫な布という意味があります。
比喩として特定の方向に速やかに移動できるものを指すこともあります。動詞では帆を使ったスポーツ「セイリング」など、船旅や移動の意味で用いられます。ちなみに、風車の腕についているボードも「sail」と呼びます。