「相違」の意味
「相違」とは、二つの事柄やものの間に違いがあるということを意味します。ですから、「相違ない」と使う場合には、「間違い+否定」なので、「間違っていない」という意味になるのは当然のことと言えます。しかし、なぜ、「正しいね」と述べずに「間違いないね」と表現するのでしょうか。
「二重否定」の効果と使い方とは?
なぜ、「相違ない」のように二重否定を使うのでしょうか。また、どのような効果があるのでしょうか。一つずつ、別の語の例挙げながら見ていきましょう。
「二重否定」 ~強い肯定~
「相違ない」という言葉は、「間違い+ない」ということで、言い換えると「正しい」ということになります。ということは、「否定+否定」の形になるわけですが、「相違ない」は「正しいよ」ということを強調して表しています。
しかし、現代の多くの日本語で使われる二重否定は意味合いが異なるものも多く存在しますので使い方には注意が必要です。
「二重否定」 ~否定の緩和~
例えば、「満更でもない」は、「全く嫌でもない」という表現や「悪くはない」という表現です。完全に否定するのではなく、部分的には肯定していることになります。これは、ものすごく使われているのではありませんか?ここには、相手を嫌な気持ちにさせたくないという心遣いが見られます。例えば下記のような例です。
例)「君とディズニーランドに行きたくないわけではないけど、行かないよ。」
のように使うことは多いのではありませんか?
「二重否定」~曖昧さの危険~
しかし、その嫌にさせたくないという思いや断りづらいという気持ちで使う表現には、「曖昧さ」が残ります。上司から下記のように言われたとしましょう。皆さんならどう捉えますか?
例1)「君の営業方法に相違ないよ。」
例2)「君の営業成績は悪くはないね。」
本来二重否定は「強調」を含むことが多いはずですね。例1の場合、上司からこのように言われたら、「強い肯定」なので、自信がつきますね!しかし、例2の場合は、どうでしょう。もし、上司が本当に褒めたくてこのように言ったのならば、少し使い方を間違えてしまっています。なぜなら、皆さんがこのように言われて心で思うことは、
①「うーん。悪くはないってことか。」
②「うーん。普通ってことか。」
③「よし!この調子でやろう。」
のいずれかで、上司の声のトーンやニュアンスでだいぶ捉え方は変わってきます。ですから、このように一つの言葉にいくつかの意味を含んでしまうので、二重否定を使用する場合に「曖昧さ」が残るので注意が必要です。
「二重否定」~まわりくどい~
「相違ない」は、はっきりと「うん!間違いないな!」と理解することのできるものですが、
次の例のように、上司から言葉をかけられたらいかがでしょうか?
例1)「君はがいなければ、今回の商談はまとまらなかったよ!」
文章の中に、否定が二つ入っていますので、これも二重否定の形です。しかし、下の言い方に変えてみましょう。
例2)「君のおかげで今回の商談がまとまったよ!」
このように、表現すると伝える事柄が端的で分かりやすくなります。特に、皆さんがお仕事で文書を作成したり、メールのやりとりをするときには、このような「曖昧さ」や「まわりくどい」表現になってしまいます。ですから、この場合は、「二重否定」は使わずシンプルな言い回しで相手に意志を伝える方が適切です。
二重否定を使用する際は、「相違ない」のような、冒頭でお伝えした、「強い肯定」の意味で使われる用法を使用し、相手にはっきりと明確に意志が伝わる方がわかりやすいですね。
「相違」まとめ
今回は、「相違」と言う言葉から、非常によく使われる「相違ない」について説明させていただきました。また、それに関連して、「二重否定」にも触れさせていただきましたが、言葉とは非常に難しいものですよね。相手に誤解を招かない言葉の使い方を心掛けたいものです。