「豚に真珠」の意味
「豚に真珠」は、価値の分からない者に貴重な物を与えても何の役にも立たない、という意味です。
豚には真珠の美しさや価値など全く理解できません。それと同じように、真の価値の分からない者に高価な物や貴重な物を与えても、何の意味もなく無駄なことだ、ということです。
「豚に真珠」の例文・用例と使い方
それでは「豚に真珠」の具体的な使い方を例文や用例を通して見てみましょう。
「豚に真珠」の例文
- 芸術にまるで興味のない彼にあんな名画を贈ったなんて、豚に真珠だよ。
- 球界のレジェンドのサインボールをあのご婦人にプレゼントしたんだって?あの方、野球が何人制なのかも知らないんだから、まさに豚に真珠だと思う。
「豚に真珠」は、貴重な物を真珠に、それらを理解しない人を豚にたとえた比喩表現です。豚にたとえられたらいい気分がしない、という方も多いでしょうから、使い方には気をつけてくださいね。
「豚に真珠」の用例
菊池寛『無名作家の日記』(1918)
「豚に真珠」は明治後期から大正にかけては、この用例に見られるように「豚に真珠を撒く(まく)」や、「豚に真珠を投ずる」というように動詞がついた形で使われていました。しかし、その後「豚に真珠」という動詞がない形が一般的になりました。類語である「猫に小判」の形の影響を受けたのではないかと言われています。
「豚に真珠」の由来
「豚に真珠」は、『新約聖書』の以下の一節が元になったと言われています。
『新約聖書』マタイ福音書七章六節
この一節は、イエス・キリストが弟子たちを各地に送り出す際の言葉です。聖なるもの、真珠と言うのは、神の国の喜びを伝える知らせの事です。つまり、神の国の喜びの便りを伝えても、その価値を理解することができずに反対したり迫害したりする者がいるなら、教えを説いても無駄である、潔く引き返せ、と解釈することができます。
これを受け、日本のことわざ辞典の類でも以下のような解釈が見られます。
『俚諺辞典』(1906)
「豚に真珠」と聞くと、ついつい可愛らしい豚のイラストなどをイメージしてしまいそうですが、語源となった『新約聖書』の一節を見ると、「豚」が獰猛で愚かな存在として描かれていたことが分かりますね。しかし、現代においてはそうした語源はほとんど意識されることなく使われているのではないでしょうか。
「豚に真珠」の類語
- 猫に小判
「豚に真珠」の英語表現
Do not cast your pearls before swine.
「豚に真珠」の諸外国での表現
- 猿はショウガの味が分らない(インド)
- 豚の口元には金をつけるな(スリランカ)
- ロバには分からぬサフランの値打ち(パキスタン)
「豚」が含まれる表現
「豚」は旧約聖書の時代から不浄の動物とされており、もっとも卑しい存在として悪い例えに使われてきました。日本においても「豚」は悪いたとえとして用いられているようです。ここでは「豚」が含まれる表現をいくつかご紹介します。
【豚に念仏】どんなに素晴らしい教えであっても、それが理解できないものにとっては、何の効果もないものだ。
【豚もおだてりゃ木に登る】特別な能力のない者であっても、周りからちやほやされると思いもしないようなことをやってのける。
【豚が雑炊を食っているよう】騒々しく食べて、行儀が悪い様子。
【豚の耳から絹の財布は作れない】もともと粗野な人を立派な人物に仕上げることはできない。