「与える」とは?意味や使い方・類語ご紹介

「与えるは受けるより幸福なり」新約聖書の言葉です。何気なく使っている「与える」という言葉にもいろいろな意味があり類語もたくさんあります。今回は「与える」の意味を類語や尊敬語、謙譲語、聞きなれた慣用句などと一緒にご紹介します。

目次

  1. 「与える」の意味
  2. 「与える」の類語
  3. 「与える」の尊敬語
  4. 「与える」の謙譲語
  5. 「与える」のことわざや慣用句

「与える」の意味

「与」という文字は「あたえる」「さずける」「やる」という意味のほかに「被らせる」「ゆるす」「同意する」「仲間になる/同類となる」「関係する」「賛成する」「親しくする」「いっしょに」「ともにする」などの意味があります。

さらに旧字体の「與」という文字は「与」と「舁(かく:かつぐという意)」を合わせた文字で「なかまが手を合わせて与えること」という意味があります。

そこから「与える」という言葉にも、単にモノを授けるという意味だけではなく様々な意味が生まれています。

授けること

自分の領域に在るもの、所有するものなどを他に渡して、その人のものとすることをいいます。一般的には上の者から下の者へ授ける行為に使います。

【使用例】

  • ノーベル賞(平和賞以外)を与える場所はスウェーデンのストックホルムです
  • 子供に今月の小遣いを与えた
  • 君にはこの計画におけるひとつの特権を与えることにします
  • 買い与える。分け与える

難題を課すこと

または、刑罰などに科すことをいいます。

【使用例】

  • 生徒ひとりひとりに課題を与えました
  • あおり運転の加害者に重い刑罰を与えてください

相手が有利になるような状況をつくってやること

または、結果としてそういう状況を作ってやることをいいます。

【使用例】

  • 熱帯雨林は地球に多くの恩恵を与えてくれます
  • 彼にあらゆる便宜を与えました
  • そのミスは相手チームに反撃のチャンスを与えてしまう原因になってしまった

何らかの影響を及ぼすこと

影響を受けさせること。被らせることをいいます。

【使用例】

  • フロントガラスに衝撃を与えた
  • 国土に損害を与える
  • 台風は農作物に影響を与えました
  • ミサイル発射は隣国に脅威を与えます

相手のためになることなどを言葉で告げること

【使用例】

  • 友人に忠告を与える
  • 部下に注意を与えた

(数学などで)既定の、一定の、所与のなどの意

「与えられた」という形で使います。givenなど欧米語の述語の訳語から派生した意味になります。

【使用例】

  • 与えられた線分ABを一辺とする正方形を作図しなさい

(ある物や物事が)ある印象や感覚などを引き起こすこと

【使用例】

  • 結果的に好印象を与えることになりましたね
  • 人々に感銘を与える素晴らしい出来事だといえます

(ある物や物事に)ある性質を担わせること

【使用例】

  • ボールに回転を与えることによって相手は混乱するでしょう
  • このビールにもう少しだけ香味を与えることができれば新商品として販売できるぞ

「与える」の類語

遣る(やる)

同等以下の物に与えるときなどに使います。

  • 妹に本を遣った
  • 草花に水を遣りましょう

呉れる(くれる)

相手から(一方的に何かを)与えることをいいます。本来「くれる」は相手が物をよこすことを受けての立場で表現する言葉ですが、転じて少し相手を見下して与える場合やある動作を相手に加えることにも使います。

(例文)

  • のしをつけてくれてやる
  • げんこつをくれる
  • それには目もくれない

また、動詞の連用形に「て+くれる」で、相手が好意(悪意)を持ってある行為をすることを表します。

(例文)
  • 靴を磨いてくれる
  • 何かと気を配ってくれる
  • よくもだましてくれたものだ

授ける(さずける)

上の者から下の者に大切なものを与えることをいいます。「やる」「与える」「くれる」「授ける」はすべて同等または目下の者に対する行為ですが、特に「授ける」は目下の者に対して使う言葉になります。
 

  • 秘伝を授ける
  • 神通力を授ける
  • 優勝旗を授ける

施す(ほどこす)

広い範囲に恵として与え行き渡らせることをいいます。

  • 金品を施す
  • 慈善を施す

また、意図を広く効果的に行き渡らせる意味として「刺繍を施す」「策を施す」「面目を施す」というふうにも使います。

恵む(めぐむ)

哀れんで物を施すことをいいます。

  • お金を恵んでください

そのほかの類語(二字熟語)

  • 授与(じゅよ)  物を授け与えることです
  • 付与(ふよ)   さずけ与えることです
  • 給付(きゅうふ) 物や金銭を支給しあたえることをいいます
  • 支給(しきゅう) (給与や品物などを)あてがい渡すことです
  • 提供(ていきょう)人のために差し出すことをいいます
  • 義捐(ぎえん)  慈善のために金品をだすことです

「卒業証書を授与する」「権利を付与する」「衣服を全員に給付する」「年金を支給する」「情報を提供する」「義捐を募る」というふうに使います。

「与える」の尊敬語

「与える」の尊敬語には「下さる(くださる)」「賜る(たまわる)」があります。「下さる」は「(目上の人が目下の人に)お与えになる」で、「賜る」は「(身分の高い人が目下の者に)与えること」になります。

同じ「与える」の尊敬語ですが「賜る」の方が敬意が高いというニュアンスの違いがありますね。

(例文)

  • お言葉をくださる
  • 得意先の社長が祝電をくださった
  • 被災者に金一封を賜る

「与える」の謙譲語

「与える」の謙譲語には「差し上げる(さしあげる)」「捧げる(ささげる)」「奉る(たてまつる・まつる)」「献ずる(けんずる)」などがあります。

(例文)

  • サンプルを差し上げますのでお試しください
  • 神に祈りを捧げます
  • 神前に供物を奉る
  • 仏前に花を献じる

「与える」のことわざや慣用句

天は二物を与えず

天は一人の人間に多くの才能や長所を与えてはくれないということです。日常的にもよく耳にする言葉ですよね。優秀な人や美しく格好の良い人に対して「彼は勉強はよくできるけど、運動は苦手だから、まさに天は二物を与えずって感じだね」と言ってみたり「彼女は美人だけど、性格が悪ければ、天は二物を与えずって私も納得できたのに」と羨んでみたりします。

求めよ、さらば与えられん

新約聖書マタイによる福音書第七章七節から十二節に書かれているイエス・キリストの言葉です。与えられることを待っているだけではなく自ら積極的に動いて努力すれば良い結果が得られる、またはその姿勢が大事だという教訓の言葉になります。

「求めよ、そうすれば、与えられるであろう。捜せ、そうすれば、見いだすであろう。門をたたけ、そうすれば、あけてもらえるであろう。すべて求める者は得、捜す者は見いだし、門をたたく者はあけてもらえるからである。」(第七章七節から八節)

神は乗り越えられる試練しか与えない

新約聖書コリント人への第一の手紙第十章十三節の言葉です。

「あなたがたの会った試練で、世の常でないものはない。神は真実である。あなたがたを耐えられないような試練に会わせることはないばかりか、試練と同時に、それに耐えられるように、のがれる道も備えてくださるのである。」

2019年2月12日に水泳の池江璃花子選手が白血病の診断を受けたことを公表した際に、池江選手がこの言葉を使っていたことが印象に残りました。苦難を目の前にしたときに勇気を与えてくれる言葉なのかもしれません。


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