「サービス」とは
「サービス」は英語の「service」を日本語として取り入れた言葉で、以下のような意味があります。
- 人のために尽くすこと。奉仕。(例:サービス精神)
- 無料で、ものや労働を提供すること。(例:おまけに1つサービスする)
- 安い料金でモノや労働を提供する。(例:サービス料金。サービスランチ)
- モノをつくる以外の労働。(例:動画配信サービス)
「service」の本来の意味
日本語の「サービス」は、「無料」や「安い」といった意味でよく使われます。しかし本来の英語の「service」は、そういった意味合いはあまりなく、以下のような意味があります。
- サービス(以降の項目で解説します)
- 役に立つこと。世話。貢献。奉仕。
- 勤務、労働、雇用、業務
- 接客
- 供給
- 点検、修理
- 軍務、兵役
以下では、産業における「モノをつくること以外の労働」や、「service」の1つめの意味である<サービス>について詳しくみていきます。
産業としての「サービス」
産業の分類の方法として、第一次産業、第二次産業、第三次産業という分類があります。この場合、自然からモノを取り出すものを第一次産業(例:農業・採掘業)、それを加工するものを第二次産業(例:製造業)、それを最終的に消費者等に提供するものを第三次産業(例:コンビニ)としています。
第三次産業、とくに消費者に直接かかわる産業全体について「サービス業」という言葉が使われることがあります。これは「モノをつくること以外の労働」という意味では正しいですが、より細かい分類として「<モノ>を提供する産業」と「<モノ>を提供しないサービス業」に分かれます。
「モノを提供する産業」には卸売業(商社、問屋など)や小売業(コンビニ、スーパーマーケットなど)があります。一方、「モノを提供しないサービス業」は以下のようなものがあります。
産業分類としての「サービス」
何が「サービス業」にあたるかは総務省の「日本標準産業分類」などにより分類されています。
【総務省 日本標準産業分類】
http://www.soumu.go.jp/toukei_toukatsu/index/seido/sangyo/index.htm
社会の変化により改訂が繰り返されており、2019年2月時点では2016年改訂のものが最新です。これによれば以下のようなものがサービス業にあたります。
- 法律事務所、会計士事務所、経営コンサルタント
- デザイン業
- 著述業、翻訳業、通訳業
- 宿泊業
- 理容業、美容業、エステ、ネイルサービス
- 冠婚葬祭業
- 廃棄物処理業、機械修理業
- 職業紹介、労働派遣業
- 警備業
- 政治団体、経済団体、宗教団体
「サービス」商品の特徴
「サービス業」は形がなく目に見えないことを、商品として提供しています。こういった商品(財)を「無形財(むけいざい)」といいます。一方、小売業などが扱う形があるモノを「有形財(ゆうけいざい)」といいます。
「無形財」には以下のような特徴があります。
- 仕入や在庫がなく、消費と生産が同時に行われる。
- 形がなく触われもしないため、見ることも試すこともできない。
- 工業製品のように品質が均一ではない。
「1.」については、例えば美容院の場合「髪を切るという行為」を仕入したり在庫することはできません。髪を切るというサービス生産と同時に髪をきってもらうというサービス消費が同時に発生します。
「2.」については、例えば化粧品は実物を見たり、サンプルを試した後に洗い流すことができます。しかし「実際に髪を切ってもらった後の状態」を事前に見たり、切られた後に髪を元に戻すことはできません。
「3.」については、同じ美容院だからといって美容師の技術は均一ではなく、担当する美容師により異なります。場合によっては「話が合う」といったこともサービス品質になり得ます。
産業の「サービス」化
「モノをつくれば売れる時代」でははくなったことにより、第一次産業、第二次産業でも「サービス商品」を提供する事例が増えてきました。典型的なのは、メーカーの保証サービスやメンテナンスです。
あるいは、モノ(例:スマートフォン)は安く売り、その利用に伴うサービス(通信、各種有料サービス)で利益を得る、という場合もあります。
とりわけ自動車業界は車を売るのではなく「移動という体験を売る」といったビジネスモデルへ大きく転換しはじめています。これはMaas(Mobility as a Service)として、今後の自動車業界の大きなキーワードです。
「サービス」まとめ
「サービス」という言葉は日本では「無料」「安い」といったイメージが強いですが、本来はそうではありません。むしろ、産業としては「モノが売れない時代に、いかにサービスで稼ぐか」といった模索がされています。「サービス」という言葉を見直してみるのも良いかもしれません。