「王道」の意味
「王道」には以下の2つの意味があります。それぞれの言葉の由来も違います。
- 君主が仁徳をもって国を治めること。またはその治め方。
- 安易な方法。楽なやり方。近道。
古代中国で説かれた「王道」
「王道」の最初の意味。それは中国の儒教の理想とされる政治思想に始まります。
君主が仁徳をもって国を治める政治のこと。
王道とは本来、徳のある王が行う文治政治(武力によらず、学問による教えや法令によって世の中を治める政治)のこと。これが儒教家の理想とする政治思想であったため、転じて
- 最も正統的な道(正統派・オーソドックス)
- 物事が進むべき正当な道(正道)
【使用例】
- 「ヒット商品を出すには王道(正攻法)で行くしかないね」
- 「ミステリーの王道(正統派)といった作品ですね」
- 「最後はやっぱり王道(正攻法、定石)で来たかあ」
対義語
「覇道」とは、徳(仁義)を軽んじて、武力や策略などによって国を治めること。またその治め方のことです。
本来の意味である「王道」に対しては「覇道」が対義語になりますが、転じた意味である「正道」に対しては「邪道」という言葉が対義語となります。
「王道」と「覇道」の対比
元々、王(王者)は中国の殷周時代の諸侯に君臨した権威者で、覇(覇者)は春秋戦国時代の諸侯を支配した実力者のことでした。
戦国時代中期。当時は覇道の政治であったため、それを憂いた孟子(思想家)が、仁義を重んじる儒教の政治思想を表すために「王道」を用い、その反対概念として「覇道」をおきました。「王道」と「覇道」を明確に対比させたのは、孟子が始まりだとされます。
(孟先生いわく、仁義を装って武力に依る者は覇者だ。だから覇者は必ず大国を有している。徳によって仁義を実践する者は王者だ。王者は大国を必要としない)
『孟子』公孫丑上より
儒教やその政治思想が中国から伝わってきた日本では、王は天皇、覇は武家政権(源氏、北条氏、織田氏、豊臣氏、徳川氏など)と解釈され、明治維新の尊王論などにも影響を与えました。
関連語
- 王政…国王、帝王が行う政治のこと。
- 王道楽土…王道によって治められていて、安楽な生活が送れる平和な国土や土地のこと。
- 君主制(君主政)…君主(特定の1人)が存在する国家、またはその君主が主権者である政治形態。
アケメネス朝ペルシアの「王道」
「王道」のもう一つの意味は、紀元前5世紀ころ、アケメネス朝ペルシア帝国のダレイオス1世によって建設された「王の道(Royal Road)」という公道を由来とするものです。
この道は首都スーサから目的地であるサルディスまでを、容易なルートかつ最短距離でつなげる幹線道路として機能をしていました。
つまり「王の道」は、最も最短で行ける道、普通の道よりも楽に進める道、だったのです。このことから転じて「王の道=王道」は「安易な方法」や「楽なやり方」や「近道」という意味で使われるようになりました。
【使用例】
- 「お金儲けに王道(楽なやり方)なんてないよ」
学問に王道なし
「学問に王道なし」とは、「学問をするのに容易な方法はない」ということ。エジプト王プトレマイオスに「もう少し簡単に幾何学を学ぶ方法はないか」と聞かれたユークリッド(ギリシャの数学者)が答えた、「幾何学に王道なし」という言葉に由来します。
英語では以下のように表記します。
- There is no royal road to learning.
- There is no easy to learning.