自負の意味
まず、自負の「負」という漢字は「負ける」の意味ではなく、「後ろ盾」と解釈するのが適切です。後ろ盾もあまり使わない言葉ですが、支えてくれるものという意味です。
つまり自分を支えてくれるもの、自分の自信や誇りとなっているもの、というのが自負という言葉の意味です。「負」を「背負っているもの」と訳すと覚えやすいかもしれません。
自負の使用例
おもに面接などのかしこまった場面で、自分が自信を持っている事柄を丁寧にアピールしたいときに「〇〇を自負しています」といった表現で使います。
たとえば自分が真面目な人間であることをアピールしたいときは、「私はとても真面目な人間だと自負しております」といった具合です。優しい人間であることをアピールしたいときは、「私は優しい人間だと自負しております」となります。
後のNG使用例の項で詳述しますが、周囲からは評価されている事柄でも自分自身が誇りを持っていない場合には自負といえません。
NG使用例
自負とはあくまでも自分が自信を持っている事柄についてアピールする場合に使い、客観的にのみ評価を受けている事柄については使いません。説明だけでは少し難しいので、以下に例を挙げてみます。
たとえば、【周囲から真面目だと思われているAさんがいる。しかしAさんは自分を真面目だとは思っていない】場合です。
この例では、Aさんは真面目さを自負することはできません。客観的には真面目との評価を受けていますが、肝心のAさん自身がそれを否定しているからです。
このように、いくら周囲からの評価があっても自身がそれを否定している場合には自負することができません。逆に、周囲から評価されていないにもかかわらず自身が誇りを持っていることについては自負することができます。
客観的評価と自己評価との間にズレが生じることは珍しくありません。注意してほしいのは、周囲の評価はどうであれ、自分自身が誇りを持っていれば自負となるということです。
自負は多用すべきではない?
自負はとても丁寧な言い方であり、それによって相手にやや堅い印象を与えます。面接などで使用するのは適切ではあるのですが、もう少し相手に柔らかい印象を持ってもらいたい場合には「長所」という表現に置き換えることをお薦めします。
たとえば、「私は真面目な人間であることを自負しております」という表現だと印象が堅いので、「私は真面目なところが長所です」という表現に置き換えます。すると柔らかい印象になり、相手とも打ち解けやすくなります。
また、自負とは自分が誇りを持っている事柄を指すので、自信家な印象も与えがちです。結果的に自分のハードルを上げることになり、面接でうっかり使うと入社してから損をしてしまうことにもなりかねません。
したがって、いくら正しい言葉・正しい使い方とはいえ、自負を多用することは避けた方がよさそうです。それでも自負という言葉を使いたい場合は、にこやかな表情を心掛けるなどのフレンドリーさを意識することが大切です。
自負って難しい?
いかがでしたか?自負という言葉は、意味も使い方もなかなか難しいですよね。日ごろ私たちがあまり耳にしない理由はそこにあるのかもしれません。
「自負」を使えば、「この人は教養があるな」と思ってもらいやすい半面、ニュアンスを間違えると「ちょっと堅苦しい人だな」とか「自信家だな」という印象を与えてしまうこともあるでしょう。時と場合を抑えながら、カジュアルな場面では「長所」を用いるなど、「自負」という言葉との上手な付き合い方を身につけていきましょう。