「シェア(share)」とは
「シェア(share)」とは共有すること、分けること、という意味です。英単語としては以前からあるものです。ただしインターネット、特にSNSが普及する以前は日常的な日本語として「シェア」はあまり使われませんでした。
「シェア」という言葉が日本語の中で一般的に使われはじめた大きな転換点として、2008年に日本版がリリースされたFacebookが挙げられるでしょう(ただしそれまで全く使われていなかったわけではありません)。
Facebookの情報共有機能として「シェア」があります。「モノ」とは異なり、インターネットでは情報の複製が容易なことが「シェア」を普及させたといえそうです。
情報の「シェア」
“情報のシェア”とは既に述べた通り、情報(WEBページや投稿)を共有することです。現在ではボタンをクリック(タッチ)するだけで「シェア」が可能になっています。
「クラウド」と呼ばれる仕組みも一種の「シェア」です。AppleのMacパソコン、iPad、iPhone、iPhoneのデータを共有するiCloudが代表的ですね。また個人や企業で利用する「共有ファイル」のサービスもあります。これはDropBoxが代表的です。
ただし、複製が容易な情報の「シェア」の場合、著作権侵害などの問題も起こっていますので注意が必要です。
食べ物の「シェア」
日本語の中で「シェア」がよく使われるようになった例として、食べ物の「シェア」があります。例えば、それまで「ピザをみんなで食べる・一緒に食べる・分けて食べる」と日本語で表現されていたものが「ピザをシェアする」いった表現がされるようになりました。
シェアリング・エコノミー
「シェア」の普及・発展は「情報」だけでなく「モノ」「サービス」にも影響を与えています。それまで「レンタル」などと呼ばれていたサービスが、インターネットにより利便性が高まり「シェア・ビジネス」となり「シェアリング・エコノミー(経済圏)」として発展してきました。
例えば半日単位などでしか借りられなかった「レンタカー」から、15分単位で使える「カーシェア」へ発展したことなどがあります。
シェアリング・エコノミーの普及の背景
「シェアリング・エコノミー」の普及の背景の1つには「所有するコスト」があります。例えば自動車を購入して所有すると、駐車場代、車検費用などがかかります。しかし「カーシェア」であればそれらの費用は不要です。
また、例えば自動車は1日中使っているわけではありません。自動車を所有しており、かつ電車通勤している場合は、仕事に行かない日の自動車は自宅に置きっぱなしです。自動車通勤の場合も、使うのは職場への移動だけで、仕事中はやはり職場の駐車場に置きっぱなしです。このような「使われていない時間」が注目されるようになりました。
あるいは住宅のスペースのように「以前は必要だったが使わなくなり余るようになった」ものもあります。これらを有効活用したいというニーズも「シェアリング・エコノミー」の背景としてあります。
シェアリング・エコノミーはなぜ成立するのか
このように「シェアリング・エコノミー」は、所有している個人が「使っていないモノ・時間」を有効活用したいというニーズと、所有していない人が「一時的に使いたい」というニーズをマッチングさせることで成り立っている面もあります。
ただし「カーシェア」のように完全に事業者が所有し、多くのユーザーに短期間(時間)だけ利用してもらう場合もあります。
「シェアリング・エコノミー」が成立している背景には、やはりインターネットがあります。
全くの素人が、知らない他人に貸し出したりシェアできるのは、そのサービスで既に関わったユーザーによって、相互的にユーザーの評価がされるからです。評価は「借りる相手、あるいは貸す相手として信頼できるのか」を判断する重要な指標となります。
住まい・場所の「シェア」
ルームシェア
インターネット普及以前から使われていた言葉です。「1つの部屋に2人が住む」場合や、「複数部屋があるマンション・アパート等に複数人が住む」ことを意味します。
「ルームシェア」が行われる代表的なケースは、留学の際に留学生同士で一緒に住み、住居費を低く抑える場合です。また「ホームステイ」「同棲」も、収益が目的ではありませんが一種の「ルームシェア」と言えます。
シェアハウス
「ルームシェア」は1部屋(または、複数部屋があるマンション・アパートの一室)のシェアである一方、「シェアハウス」は1軒の建物を複数人でシェアすることです。「シェアハウス」を事業物件として所有し、居住人数を設定してスペースを貸し出すビジネスもあります。
「シェアハウス」のメリットとしては家具・家電や住居設備(キッチンやトイレ)を個人で所有する必要がない点があります。1人あたりの水道光熱費・固定インターネット回線など通信費も低くなります。
シェアオフィス
ビジネスオフィスを「シェア」することです。個人事業主や、小規模で従業員が少ない場合は、通常のビジネス用賃貸オフィス1室では広すぎることや、各種設備を共有することで費用が抑えられる点がメリットです。
民泊
旅行者が一般住宅に宿泊するサービスです。宿泊場所とを提供する側は、空き家や空いている一室を貸し出すことになります。とりわけ増加している訪日外国人の利用が多くなっています。
一方でトラブルも多く、法律改正・新規参入など動きが激しい分野です。
駐車場のシェア
所有する一定以上の規模の土地を月極(つきぎめ)などで「駐車場」として貸し出すことは以前から行われていました。ただ、インターネットの普及により、個人宅の小さなスペースを、全く知らない他人に利用してもらうような駐車場シェアサービスも登場しています。
農園のシェア
農園を貸すビジネスも以前からありますが、インターネットの普及にともない、より広く貸し借りが行われるようになっています。
軒先(のきさき)のシェア
イベントなどで短期間だけ営業したい、その際にある程度の集客は欲しい、という場合があります。そういったニーズに対し、店舗の入口や駐車場スペースを提供するサービスがあります。店舗側は場所利用料を利益として得ることができるうえ、イベントにより自店舗の活性化にもつながります。
自動車の「シェア」
カーシェア
車を所有していない不特定多数が、必要なときに利用するレンタカーのサービスは以前から存在していましたが、「カーシェア」とレンタカーの違いは大きなものです。
例えば、現在(2019年1月)最大手の「タイムズ」のカーシェアは以下のような形になっています。
タイムズは自動車会社でなく駐車場運営の会社です。つまり「使っていない自動車の活用」ではなく「貸していない駐車スペースの活用」という形態です。タイムズの駐車場内にカーシェア用の自動車が1~数台置かれています。
タイムズは自動車メーカーではありませんから、メーカー系列のレンタカー会社と異なり、多様な車種の品揃えが可能です。また、すでに自社物件として所有している駐車場をカーシェアの拠点としておりカーシェア用の店舗を持っていません。
ユーザーは、まずスマートフォンで近隣のタイムズの駐車場にあるカーシェア用自動車を予約します。予約日時になったら駐車場へ行き、専用のICカードで鍵を開けます。運転中は、急発進、急停車、アイドリングなどの状況がデータとして取得されています。
給油はカーシェアを利用しているユーザーが必要に応じて行います。タイムズの場合は給油により別途費用はかかりません。逆に15分間分の値引きがあります(2019年1月)。利用後は元の駐車場に戻し、ICカードで施錠します。
次の利用者が異常を発見するとタイムズに連絡する必要があります。例えば禁煙なのに借りた時点でタバコの匂いがしたとします。もし何も連絡しなければ、次のユーザーが連絡した場合、自分が喫煙したことになってしまうからです。
タイムズは連絡を受けると、データから、その前に利用したユーザーを特定できます。悪質な場合はユーザーを解約させることもあるでしょう。
このように無人管理を徹底しつつ、ユーザー間でチェックやメンテナンスが行われる仕組みのため、安心と低コストを両立させています。
相乗りによる車移動のシェア
相乗りはアメリカのUber社が代表例で、個人が同じ場所に行く人を乗せることによる「移動のシェア」です。「ライドシェア(ride share)」とも呼ばれます。
分かりやすく言えば個人でタクシー事業を行うことになりますが、日本ではタクシー事業は一般の運転免許では行えません。こういった法規制によりUberのライドシェアは日本へは未参入です(2019年1月)。ただし宅配サービスのUber eatsで日本には進出しました。
自転車のシェア
「シェアサイクル」とも呼ばれます。ただ観光地では「自転車レンタル」は以前から存在していました。
衣服の「シェア」
事業者から衣服を借りるサービスに加え、個人所有の衣服を、他人に貸し出すサービスもあります。アパレル業界第3位のワールドが買収したragtagが代表例です。
能力の「シェア」
クラウドワーク
企業に勤めると、1つの会社でしか自分の能力を発揮できません。インターネット上で複数の相手と発注・受注をやりとりする「クラウドワーク」と呼ばれる働き方は、自分の能力を複数の事業者へ「シェア」しているとも言えます。派遣社員という雇用形態も本来は上記のようなものであるべきですが、実態は待遇の悪い非正規労働に近い状態にあります。
いわゆる「専門家」と呼ばれる弁護士・税理士・コンサルタントといった「士業」は、以前から事務所を構え、その専門知識を顧客企業などに提供(「シェア」)していました。それがより大衆化したと言えるかもしれません。
「シェア(share)」まとめ
以上のように「シェア(share)」はインターネットでの情報入手など普段の生活だけでなく、ビジネスを大きく変えるものとなっています。例えば「カーシェア」の普及に伴い、自動車メーカーは「単に自動車を売る」というビジネスモデルから転換しつつあります。これからの「シェア(share)」にも注目です。