「悪口」と「雑言」
まず「悪口雑言」は、「あっこうぞうごん」と読みます。この言葉は「悪口」と「雑言」、2つの単語に分けられます。
「悪口」について
「悪口」単体の場合、古語では「あっこう」と読みますが、現代では「わるくち」、「わるぐち」と読みます。「悪口(わるくち)」とは根拠の有無に関わらず、他人を悪く言うことや、悪態をつくことです。またはその悪い言葉自体を指します。
一方で古語の「あっこう」は少し意味が異なり、こちらは「根拠もなく、言葉で他人の名誉などを傷つけること」です。なので「わるくち」と比べて、「あっこう」は意味の範囲が狭いです。
「雑言」について
「雑言」単体では「ぞうごん」の他に、「ぞうげん」とも読みます。ただしどちらで読んでも同じ意味であり、この言葉はあれこれと他人の悪口を言うこと、またその発言を指します。
「悪口」と似ている言葉であり、意味の中にも「悪口」が入っています。「悪口」と「雑言」に厳密な違いはありませんが、日本語の文章では1つの文中で同じ漢字を何度も使うと、若干の違和感が出ます。
ですから「悪口を口にする」や「雑言を言う」とはあまり使われず、一方「悪口を言う」や「雑言を口にする」と使えば、違和感が出ません。そういった部分で使い分けられます。
「悪口雑言」の意味
上述を踏まえて「悪口雑言(あっこうぞうごん)」とは、さんざんに罵ること、思う存分に悪口を言うこと、という意味です。この四字熟語は「悪口」と「雑言」、似た意味の言葉を組み合わせることで、悪く言うことを強調しています。
注意すべきは、「あっこう」は古語、「あっこうぞうごん」は現代の言葉だという点です。つまり読みは「あっこう」ではあるけれども、「あっこうぞうごん」の「悪口」は根拠の有無に関わらない、現代における「悪口」だということです。
「悪口雑言」の使い方
「悪口雑言」は、ひどく他人を悪く言うことを指したり、またその悪い発言を指して使われます。したがって殆どの場合、ネガティブな意味合いで使われます。また「悪く言うこと」を強調しているので、より悪質な、勢いのあるニュアンスを含んでいます。
「悪口雑言」の例文
- 「喧嘩をした相手に、悪口雑言を吐く」
- 「嫌いな相手に、悪口雑言を浴びせる」
- 「ひどい罵り方だな。まさに悪口雑言だ」
「悪口雑言」と似た言葉
「悪口雑言」と似ている意味の言葉には、「悪口罵詈」、「罵詈雑言」、「罵詈讒謗」などがあります。
「悪口罵詈」について
まず「罵詈」は「ばり」と読み、汚い言葉で罵ることや、その言葉を意味します。そして「悪口罵詈」は「あっこうばり」と読み、言いたい放題に、好き勝手に悪口を言うことを表します。「悪口雑言」との違いは曖昧ながらも、「罵詈」が入ると口汚さのニュアンスが強いです。
「罵詈雑言」について
「罵詈雑言」は「ばりぞうごん」と読み、汚い言葉で悪口を並べ立て、罵ることを意味します。「罵詈」は「悪口」の意味を内包しつつ、先述のとおり口汚さのニュアンスも強く加わるため、「悪口雑言」よりも「罵詈雑言」の方が印象としては悪質です。
「罵詈讒謗」について
まず「讒謗」は「ざんぼう」と読み、ありもしないことを言ったり、他人を悪く言うことを意味します。そして「罵詈讒謗」は「ばりざんぼう」と読み、悪口の限りを言うことを表します。
こちらもほぼ同じ意味の言葉ですが、「悪口の限り」とは「これ以上ないという限界までの悪口」ですから、類語と比較すると最も酷い印象です。
よって「悪口雑言」とその類語は、印象の弱い順に「悪口雑言」、「悪口罵詈」、「罵詈雑言」、「罵詈讒謗」と並べることができます。