「厚顔」の意味
「厚顔(こうがん)」は比較的よく知られた熟語で、ビジネスシーンなどにも登場することがあります。あるいは「厚顔無恥」という四字熟語の方に馴染みがある方も多いかもしれません。「厚顔」を辞書で引くと、「面の皮の厚いこと。あつかましいこと」と記載されています。
「面(つら)」とは「頬、顔」のことで、後世では主に卑語やののしりとして用いられています。「面汚し」や「アホ面」、「どの面下げて」といったように、あまりいい意味で使用されないのが特徴ですね。「面の皮が厚い」と言うと、「あつかましいこと。ずうずうしいこと」といった意味になります。
また「面の皮が厚い」が転じて、「厚い」だけでも「恥を知らぬ。あつかましい」といった意味で使用されることがあります。
あつかましい・ずうずうしい
では「あつかましい」とは具体的にどういうことでしょう。辞書には「恥を恥とも思わない」と記載されています。「あつかましい」の「~かまし」はシク活用を作る際に使用され、「差し出がましい」「恨みがましい」といったように、ネガティブな形容詞にあてられることの多い接頭語です。
一方「ずうずうしい」は「図太くあつかましい」こと。「図太い」は「少々のことでは動じない」という意味で、必ずしもネガティブなニュアンスではありませんが、「ずうずうしい」という場合は「(恥を知らぬから)少々のことでは動じない」という意味合いになり、こちらは明らかにマイナスイメージの言葉です。
「厚顔」の使い方
- 彼の厚顔ぶりには呆れてものも言えない。
- 厚顔なふるまいに憤慨する。
- 自身の厚顔さに恥じ入る。
クッション言葉とは、要請や拒否、異議など相手に大なり小なり心理的抵抗を与えそうな話題を切り出す際に、その抵抗感を和らげる目的で使用される常套句のこと。「お手数ですが」や「僭越ながら」といったフレーズを、みなさんも一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。
クッション言葉として「厚顔」を使用する際は、「厚顔ですが」「厚顔ながら」といった表現になります。意味合いとしては「あつかましいのは重々承知ですが」といったところで、主に相手に何かを依頼・要請する際に使用されます。
「厚顔」の語源
「厚顔」の出典は、中国最古の詩篇『詩経』の「巧言」にあります。
往来の行言、心、これを数う。
蛇蛇たる碩言、口より出ず。
巧言、簧の如し、顔の厚きかな。
そもそも柔らかい木(佞臣の意)を植えたのは君子だ。
ほんの行きずりの言葉でも、心はこれをあてにしてしまう。
だが蛇のような長々しい佞言(ねいげん)は、口から出るものなのだ。
巧いだけの言葉とは、笛の音を奏でる舌のようなもので、なんと恥知らずなことか。
『詩経』巧言より
「厚顔」の類語
「厚顔」の類語に、「無恥」という熟語があります。「恥を恥とも思わないこと」の意で、「厚顔」とほぼ同義です。この同義の熟語2つを組み合わせて意味を強調したのが「厚顔無恥」という四字熟語。よく「厚顔無知」と誤って書かれることがありますが、物事を知らないのではなく恥を知らないのだ、と覚えておくとよいでしょう。
また「鉄面皮(てつめんぴ)」は「鉄のような面の皮」の意で、「恥を恥とも感じないこと。あつかましいこと。ずうずうしいこと。またその人」を指す言葉です。面の皮が厚すぎて鉄のようだから「鉄面皮」。こちらも「厚顔」と同義ですね。