「天の邪鬼(あまのじゃく)」とは?意味や使い方をご紹介

「天の邪鬼」というと「ひねくれ者」のイメージがありますが、元々はどのような存在なのでしょうか。「天の邪鬼」という名前から鬼を連想しますが、意外と天の邪鬼が登場するお話は知らないのではないでしょうか。今回は「天の邪鬼」の意味や使い方、由来をご紹介します。

目次

  1. 「天の邪鬼」の意味
  2. 「天の邪鬼」の使い方
  3. 「天の邪鬼」の由来
  4. 「天の邪鬼」と仏教
  5. 「天の邪鬼」の民話

「天の邪鬼」の意味

「天の邪鬼」は「あまのじゃく」と読みます。元々は民話に出てくる鬼のことで、ものまねや人の心を探ることが得意だと言われています。そこから転じて「わざと人に逆らった行動や発言をする人。ひねくれた人」を天の邪鬼と言うようになりました。

「天の邪鬼」の使い方

  • 彼は天の邪鬼なので、改善点を伝えても素直には従わないだろう。
  • 天の邪鬼な性格の私は、映画が大ヒットしていると聞くと観に行きたくないと思ってしまう。

「天の邪鬼」の由来

「あまのじゃく」は『古事記』『日本書紀』に登場する女神「天探女(アマノサグメ)」がルーツと言われています。天探女はその名の通り人の心などを探ることができ、鳥獣の言葉を理解する能力を持っていました。のちに「サグ」が「逆らう」という意味にとられるようになり、天の邪鬼に転じていったという説もあります。

「天探女(アマノサグメ)」の神話

天探女(アマノサグメ)は天津国玉神(アマツクニタマ)の子・天稚彦(アメノワカヒコ)に仕える女神でした。

天稚彦は葦原中国を平定するために天照大神と高木神に派遣された神様です。ところが彼は務めを放棄し、大国主神の娘・下照比売(シタテルヒメ)と結婚し8年経っても戻りませんでした。

そこで、天照大神は雉名鳴女(キヂナナキメ)を遣わし、詔(みことのり)を伝えさせることにしました。その詔を聞いたのが天探女です。天探女は天稚彦にデタラメを伝え、さらには「不吉な鳥なので射殺したほうがいい」と進言しました。天稚彦は進言通りに雉名鳴女を射殺してしまいました。

雉名鳴女を射抜いた矢は高天原まで飛んでいきました。矢を拾った高木神が「天稚彦に邪心があるならこの矢に当たるように」と矢を射返したところ、矢は天稚彦の胸を射抜き、その命を奪ってしまいました。

「天探女(アマノサグメ)」についての解説

天探女のその後の登場はありません。天探女は記紀では特異な存在で、女神でありながら尊称がなく呼び捨てにされています。それは天探女が悪女としての役割を与えられたからだと考えられています。

天探女は巫女が神格化した存在と考えられており、政治と祭祀が一体となっていた当時、神託を曲げることは大きな災いをもたらすことにほかならなかったからです。

「天の邪鬼」と仏教

仏教では「天の邪鬼」が人間の煩悩の象徴とされ、仏教の教えやそれを信じる人々に害を及ぼす悪鬼とされています。そのため、天の邪鬼は毘沙門天をはじめ四天王に踏みつけられています。また、毘沙門天像が鎧の腹部につけている鬼面が天の邪鬼だそうです。

「天の邪鬼」の民話

さて、民話に出てくる天の邪鬼はどのような存在なのでしょう。人の心を探りからかう妖怪とはされていますが、地域によって天の邪鬼の性格は少し異なるようです。

人の声をまねて繰り返すということからやまびこやこだまを天の邪鬼と呼ぶ地域もあれば、山姥(やまんば)や蛹(さなぎ)、チャタテムシを天の邪鬼と呼ぶ地域もあるようです。今回は有名な2つの民話をご紹介します。

瓜子姫と「天の邪鬼」

瓜から生まれた瓜子姫が、天の邪鬼にだまされて連れ去られてしまうというお話です。

連れ去られた瓜子姫がどうなってしまうかは地方によって様々です。殺されてしまうという最悪の結末もあれば、木に括り付けられのちに助けられるパターンもあります。天の邪鬼が瓜子姫のふりをして輿入れまで企むというお話もあります。

天の邪鬼は、どの民話でもおおむね最後に企みが発覚し殺されます。殺された天の邪鬼の血が植物の茎を赤くした、という由来につなげて終わるエピソードが多いようです。

箱根の「天の邪鬼」

箱根の山に住む天の邪鬼が富士山の背を低くしようと奮闘するお話です。この天の邪鬼は人をだますといった性質は持たず、大変な力持ちという設定です。

天の邪鬼は富士山を崩すために岩を投げますが失敗し、投げた岩が伊豆七島・初島、二子山になったと言われています。

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