「貫徹」とは
「貫徹」とは「最初から最後までつらぬき通すこと、またはつらぬき通ること」という意味です。一睡もせずに完全に徹夜することは、同じ読み方で「完徹」と言います。字面が似ているので、早とちりしないよう気をつけましょう。
「貫」はつらぬくの意味で、穴を穿(うが)つというところから、一筋に通すという意味になります。また、「徹」はとおす・とおるという意味で、つきとおす・とどくといった意味につながります。
中国の魏の初代皇帝である曹丕(そうひ、文帝)の『戒盈賦(かいえいふ)』には
信貫徹之通霊 かんてつのつうれいをしんにす
(物類の相互の関係性をたよりとして、一筋に貫くものが霊に通じていると信じる)
何を「つらぬき通す」のか?
具体的に何をつらぬき通すのかを考えてみましょう。2通りに分けることが可能です。
- 主張・要求・目的・意志を「貫徹」する
- 物理的に弾丸・矢などが、目標物を「貫徹」する
多くの辞書には、1の意味が書かれてあります。一般の日常会話でも、ほぼこの意味で使われていると考えてよいでしょう。2はどちらかというと特定の分野でのみ使われているので、専門用語に近いようです。
ではひとつずつ、用例を挙げながら、解説していきます。
主張・要求・目的・意志を「貫徹」する
目的や意志など、心の中に持っているものを変えることなく、最後までやり抜くということを意味します。ですから、実際のやり抜く行為を意味するのと同時に、意志の強さや忍耐力、我慢強さを持っていることを暗に示すことにもなります。
例えば、以下のような使い方ができます。
- 並々ならぬ決意をもって、要求を貫徹する覚悟です。
- 一度決めた目標を貫徹するのは、簡単なようで難しい。
- 初志貫徹ということで、〇〇の単勝一点買いで勝負した。
弾丸・矢などが目標物を「貫徹」する
物理的に目標物を貫き通す力のことを、貫徹力(貫徹能力)と言います。
具体例としては、弓道の矢の貫徹力を科学的に考察した筑波大学の研究や、ガソリンエンジンにおける燃料の筒内噴射用ノズルについて考察したデンソーの研究の中で、貫徹力という言葉が使われています。
また武器を考えた場合、戦車の砲やライフルなどの貫徹力(標的の防御を撃ち抜く力)は、攻撃性能を評価する指標ともなります。
少し難しい文章になりますが、このような使い方をされます。
- 弓道の目的は、貫徹力のある矢を正確に目標物に当てる技を磨くことにある。
- 安定した成層混合気を形成するためには、より強い貫徹力が求められるのと同時に、より優れた微粒化特性が必要とされる。
- 徹甲弾は、材質や形状などの工夫により、貫徹力を増大させた砲弾である。
「貫徹」の類語
主張・要求・目的・意志を「貫徹」するという意味では
- 「終始一貫(しゅうしいっかん)」
- 「初志貫徹(しょしかんてつ)」
- 「徹頭徹尾(てっとうてつび)」
- 「不撓不屈(ふとうふくつ)」
- 「堅忍不抜(けんにんふばつ)」
- 「確固不抜(かっこふばつ)」
物理的に対象物を「貫徹」するという意味では「貫通」「穿通(せんつう)」などがあります。
ちなみに、「初志貫徹」とは日常的によく使う四字熟語ですが、「終始一貫(『漢書』に由来する)」のように由来とされる古い出典はなく、単純に「初志」と「貫徹」を連結してできた熟語のようです。
中国語、英語における「貫徹」
中国語では「(路線・方針・政策・指示などを)徹底して実行する、完全に成し遂げる」という意味になります。必ずしも行動を起こす本人の意思とは限定されないようです。
一方、英語では
accomplish:人が仕事・計画などを、努力と忍耐によって成し遂げる、完遂するという意味から、「貫徹」となります。
achieve:仕事などを成し遂げる、完成する、目標を達成するという意味です。中国語での「貫徹」に近いと思われます。
carry through:最後までやり通すという意味ですが、仕事・計画だけでなく、犯罪などの悪い意味でも使われます。
以上はゴールすること、最後までやり抜くことに重点を置いた表現になります。また、意志を変えることなく頑張り続けるという意味では「carry on」という表現もあります。