「がめつい」とは
「がめつい」とは「利益を得ることに並外れて執着し、抜け目がない。欲が深い。ケチで稼ぐことに対してそつがない」という意味で使われる言葉です。
「がめつい」人はその度を越えた金銭欲によって、普通の人や金銭欲が薄い人からすると、非常識に感じられます。嫌悪感を持たれることもしばしばですが、当の本人は「何が悪い!」的な姿勢を崩さないのが「がめつい」人の特徴かもしれません。
1959年、菊田一夫作の『がめつい奴』という芸術座の舞台が大評判となり、ロングラン上演されました。372回の連続上演は、当時の記録だったそうです。このヒットによって「がめつい」という言葉が大流行したといいます。
「がめつい奴」とは
菊田作の『がめつい奴』には、こんな台詞があります。
簡易旅館を経営する「がめつい婆」を軸に繰り広げられる、悲喜こもごもの人間ドラマは、全編大阪弁で演じられます。舞台だけではなく、幾度も映画化、TVドラマ化されましたが、主人公の「がめつい婆」ことお鹿婆さんの役は、女優・三益愛子が演じるのが定番だったようです。
ちなみに菊田一夫は、1930年に喜劇の舞台作家としてデビュー。戦後はNHKのラジオドラマ『鐘の鳴る丘』『君の名は』を大ヒットさせ、一躍名を馳せました。また、舞台脚本家としての代表作は『がめつい奴』のほか『がしんたれ』『放浪記』などがあります。
「がめつい」の類語と英語
「がめつい」の類語には「欲張り」「強欲(ごうよく)」「胴欲(どうよく)」「慳貪(けんどん)」「あこぎ」のほか「しみったれ」「みみっちい」「拝金主義(はいきんしゅぎ)」「我利我利亡者(がりがりもうじゃ)」などもありますが、最近ではあまり聞かれなくなりました。
「こすい」「渋ちん」も類語になりますが、もしかすると、地方によっては意味が通じないところがあるかもしれません。
また、英語ではgreedy、grasping、money-grubbingなどが使われます。「Greedy folks have long arms.(=強欲者は手が長い。がめつい奴はどんな手を使ってでも欲しいものを手に入れる)」ということわざもあるようです。
「がめつい」の使い方
- がめつい奴だと思っていた友人から、珍しくおごってもらった。
- 目先の金に目が眩んでがめつい商売をやっていると、足元をすくわれることになるぞ。
- がめついと言われるくらいでないと、お金は貯まっていかないね。
「がめつい」の語源説いろいろ
「がめつい」の語源説を以下に3つ紹介します。いずれも説得力があり興味深いです。市民権を得て半世紀ほどの言葉ですが、源流は意外に混とんとしているようです。
菊田さんの造語説
『がめつい奴』の菊田さんによる造語で、麻雀用語の「がめる」と方言の「がみつい」をミックスしてつくったとされています。「がめる」とは麻雀で欲張って大きな点を狙いに行くこと。「がみつい」は地方によって意味が異なりますが、兵庫県の一部地方では「大変・ものすごい」ということを意味します。
ただ、石川県には「がめつく(=子が親などにすがりつく)」といった方言もあるようで、純粋に造語といえるかどうかは難しいところです。
がめ・つい説
「がめ」は亀から派生した方言で、すっぽんを指します。「つい」はごっつい・いかつい・きついなどに使う接尾辞で、両者をつなげて「がめつい」となります。すっぽんは一度噛みつくとなかなか離しません。これを度を越した金銭欲にたとえたとされています。
英語の「long arms」という表現にも通じるようで、興味深いです。
がめる+ついている説
麻雀用語の「がめる」に、幸運が巡ってきたときに使う「ついている」を結びつけて「がめつい」と言ったとされます。芸人仲間での麻雀の中から出てきた言葉だといいます。俗語の起源としては、説得力がある説ではないでしょうか?