「ラッスンゴレライ」って何?
「ラッスンゴレライ」は、2014年末から2015年にかけて大ブレイクした、お笑いコンビ「8.6秒バズーカー」の持ちネタの一つです。
コンビの一人・はまやねんがリズムに合わせて「ラッスンゴレライ」を織り込んだコメントを連呼し、相方の田中シングルが「ちょっと待って、ちょっと待ってお兄さん!」とツッコミを入れるのをベースに話題が展開していく、いわゆる「リズム芸」と呼ばれるジャンルのネタですね。
8.6秒バズーカーとは
「ラッスンゴレライ」を世に送り出した8.6秒バズーカーは、よしもとクリエイティブ・エージェンシー所属するお笑いコンビで、2014年に4月1日結成しました。
「ラッスンゴレライ」ブレイク当時の人気は凄まじく、デビューから一年を待たずしてDVDが発売され、なんばグランド花月での単独ライブも実現させています。これは、よしもとクリエイティブ・エージェンシーに所属する芸人としては最速となるものでした。
「8.6秒バズーカー」というコンビ名の由来は、NSC(吉本総合芸能学院)に入学した夜、出身中学校のグラウンドに入り込んで50メートル競走をし、そのときはまやねんが出した記録「8.6秒」に、インパクトのあるカタカナ語の「バズーカー」を加えたものであると本人たちは説明しています。
「ラッスンゴレライ」世間に広がった疑惑
ブレイク当時、「ラッスンゴレライ」の意味について、本人たちの口からはっきりと語られることはありませんでした。
しかし、コンビ名の「8.6」が「8月6日」を連想させることから、「8.6秒バズーカー」とは「8月6日の爆弾」の意味ではないか。つまり原爆のことを揶揄しているのではないかとの噂がネット上で広がり始め、「ラッスンゴレライ」についても、様々な解釈が展開されるようになりました。
原爆投下の命令名?
その解釈のひとつが、米軍が原子爆弾を投下する際の命令名だった「落寸号令雷」のことだというものです。これに前後して、さまざまな噂がネット上を賑わせました。
広島に原爆を投下した米軍の爆撃機エノラ・ゲイ号の同型機に「ラッスンゴレライ」へのツッコミと同じ「chotto matte(ちょっとまって)」というニックネームを持つ機体が実在したこと。「エノラ・ゲイ・リターンズ(Enola Gay returns)」を並べ替えると「ラッスンゴレライ(rat sunne go relay)」になるということ。
このような説が次々にネット上に登場したことから、「ラッスンゴレライ」はより原爆との結びつきを疑われるようになりました。
さらに広がりこじれる解釈
アメリカ出身のお笑いタレント・厚切りジェイソンが「Less than Gorilla(ゴリラ以下) と思っていた」とツイッターで発言したり、日本エレキテル連合がイベントで「メキシコの言葉で非常に卑猥な言葉」とネタにしたりしたことから、原爆を意味する以外にも「日本人を侮蔑する言葉」「反社会的な言葉」などという解釈も広がりました。
これら一つひとつは、「こうではないか」「こう聞こえる」の域を越えないものがほとんどでしたが、その数や拡散の早さは、8.6秒バズーカーに対する「反日芸人」疑惑を一気に深めることへと繋がっていきました。
本人たちはこう語る
2018年1月、8.6秒バズーカーは「ついに真相をお話します」と題して、公式YouTubeチャンネルに動画を公開。一連の疑惑について公式に説明し、その中でふたりは「そんなわけあるか!」と噂をはっきり否定しました。
本人たちの語るところによれば、NSC時代、翌日のネタ見せに備えての準備がうまくいかず行き詰まっていたときに、相方を笑わせようとして田中シングルが放った言葉だったとのこと。田中は「ただ響きが面白い言葉を勢いで騒ぎ立てたもので、何の意味もない」と、動画の中で改めて証言しています。
騒動の残したもの
世間に広まった「原爆ネタ」「反日芸人」という噂のもとになった解釈は、そのほとんどがこじつけに近いもので、本人たちもはっきりと否定しています。結局「ラッスンゴレライ」の意味については、本人たちの語ったものが真実なのでしょう。
その後、一連の騒ぎは徐々に沈静化していきましたが、8.6秒バズーカーは一連の騒動で仕事が激減。決まっていた仕事や、すでに収録が終わっていた仕事まで流れたことがあったとのことです。
ラッスンゴレライ騒動は、ネット上の情報やSNSの影響力の大きさ、怖さを強く印象づける出来事となりました。ネット上の情報が世間に大きく影響する現代。受け取る側としてはもちろん、発信する側にも注意が必要ですね。