「カンパネラ」とは
一般的に使われている「カンパネラ」という言葉は、イタリア語に由来するカタカナ語です。イタリア語のcampanellaは、比較的小さめの鐘やつり鐘を意味します。大きなものはcampana、手で振る鈴のような大きさであればcampanelloと言い、使い分けられています。
また、時代によっては、表記がカンパネッラ、あるいはカムパネラや、カムパネルラ(カンパネルラ)となっているものもあります。発音からいうとカンパネッラがイタリア語に一番近いようですが、日本ではカンパネラと言うケースが多いかと思われます。
しかし実際には、日本語の日常会話の中で鐘という意味で「カンパネラ」を使うことはおそらくないでしょう。「カンパネラ」が指す代表的なものをいくつかピックアップし、具体的に解説していきます。
名曲「ラ・カンパネラ」
クラシック音楽に特に詳しい方でなくとも、耳にしたことがあるメロディーかもしれません。クラシックの有名な楽曲が「ラ・カンパネラ」です。この曲を演奏したくてピアノを始めた、という方も少なくないようです。ただ、演奏が難しい難曲と言われており、一部の音楽解説書には「音楽性よりは技巧性のまさった」曲だとも書かれています。
パガニーニ『鐘』
18世紀イタリアの作曲家でありヴァイオリニスト・パガニーニが作曲したヴァイオリン協奏曲第二番第三楽章Allegretto moderato『鐘』の部分を指していましたが、後にフランツ・リストの「ラ・カンパネラ」(後述)が非常に有名になったため、パガニーニのヴァイオリン協奏曲第二番そのものが「ラ・カンパネラ」と呼ばれるようになったようです。
パガニーニは自身のヴァイオリンの超絶技巧をアピールするための曲、いわば自分のための曲を多数作曲しており、「ラ・カンパネラ」もそのうちのひとつです。
リスト『ラ・カンパネラ』
パガニーニの技巧をこらした演奏スタイルに心酔した人の中に、フランツ・リストがいました。そんなリストは1838年ごろ、「パガニーニによる超絶技巧練習曲」を作曲し、その第三曲が「ラ・カンパネラ」です。
リストの「ラ・カンパネラ」は、パガニーニのヴァイオリン協奏曲第二番第三楽章の主題をピアノ曲として編曲し直した作品で、こちらもパガニーニの原曲に劣らず非常に高い技術が必要とされています。
この曲をレパートリーとするピアニストは多く、中村紘子さん、フジコ・ヘミングさん、ユンディ・リさん、アリス=紗良・オットさん、辻井伸行さんの演奏がよく知られています。
哲学者「カンパネラ」
ルネサンス期のイタリアの哲学者にトンマーゾ・カンパネラという人がいます。
カンパネラは、自身が考えるユートピアの実現を目指しますが、1600年に逮捕・投獄されました。その獄中で書いた『太陽の都(Civitas solis)』は、教皇を中心とした共産主義理想国家を描く内容で、近世ユートピア思想の源泉と言われています。
ちなみに、イタリアには職業由来の苗字があり、カンパネラ(鐘)という名前も、鐘関連の職業に由来するのではないかと推測されます。
物語の登場人物「カンパネラ」
宮澤賢治著『銀河鉄道の夜』(1934年発表)には、主人公・ジョバンニの友達として「カンパネラ」が登場します。岩波書店版では、カムパネルラという表記になっています。命名については諸説ありますが、前出の哲学者カンパネラに由来するという説もあります。
2010年には、この『銀河鉄道の夜』をモチーフに、sasakure.UKさんが「カムパネルラ」というVOCALOIDの曲をリリースしています。
音楽ユニット「水曜日のカンパネラ」
「水曜日のカンパネラ」は、2012年に結成・活動を開始した音楽ユニットで、メンバーはコムアイさん、ケンモチヒデフミさん、Dir.Fさんの3人という構成になっています。軽めのデジタルサウンドにコムアイさんのヴォーカル(ラップ風)が入るというヒップホップスタイルで、「桃太郎」「千利休」などのユニークな曲をリリースしています。
バンド名の由来について、メンバーの過去のインタビューによると、漢字とカタカナをミックスしたものにしたかった、毎週水曜日に何か活動をするというコンセプトだったと説明されていますが、「カンパネラ」に関しては特に深い意味はないようです。