「帯に短し襷に長し」の読み方と意味
「帯に短し襷に長し」の読み方
「帯に短し襷に長し」ということわざは「おびにみじかし たすきにながし」と読みます。国語辞書などによっては、「帯に短く襷に長し」と表記するものもありますが、同じことわざです。
「襷」は難しい漢字ですが、現在も駅伝競走などではよく見るものです。ちなみに今人気のアーティストに「欅坂46」という女性アイドルグループがいますが、こちらは「欅」(けやき)という漢字です。「襷」と非常に似ていますが、「木ヘン」と「衣ヘン」の違いがあります。「欅」は樹木の一種、「襷」は衣類の一種、ということです。
「帯に短し襷に長し」の意味
「帯に短し襷に長し」ということわざは、「帯に短し」と「襷に長し」の二つの文から成り立っています。文字通りには、それぞれ「帯にするには短い」「襷にするには長い」といった意味を表します。つまり、ある長さの布について、「これは帯に使うには短く、襷として用いるには長すぎる」と評しているさまを示しています。
これが転じて、ある物事や状況、人物について「使おうとしても、どうにも中途半端で使いようがない」とか「どっちつかずで役に立たない」といった意味を比喩的に示すことわざだといえます。
「帯に短し襷に長し」の由来
「帯に短し襷に長し」ということわざの「帯」とは、「和服を着るとき、服がはだけないよう腰回りに巻いて結ぶ細長い布」のことです。一方「襷」は「活動の邪魔にならないよう、和服の袖や裾をたくし上げるための長いひも」のことを示します。ただ現代では、駅伝競走などで、走者が肩口から斜めにかけて走り、次の走者に渡す輪状のひものことを意味することが多いでしょう。
和装の帯と襷を比べた場合、帯は体全体に何重にも巻くわけですから、数メートル以上とかなりの長さになります。一方襷は、袖を上げたり肩から腰へ軽くかけるだけのものなので、せいぜい1メートル程度の短めの布の両端を、ひも状に縫い付けたものになっています。
このようにかなり長さが異なる布地ですので、仮に2メートルほどの布が手元にあるとすると、帯として使うには短く、しかし襷にするにはちょっと長すぎるという格好になります。つまり「それ自体はしっかりした布地なのだが、実際に使おうとしてもどっちの用途にも条件が当てはまらず、結局は何にも使えない」という状態です。この布地の形を人間の行為の比喩に用いたのが「帯に短し襷に長し」です。
「帯に短し襷に長し」の使い方
「帯に短し襷に長し」ということわざは、前述のように「中途半端で役に立たない」ことの例えに用いられます。ただ言葉の由来からすると、「品物自体はしっかりした質なのだが、この状況では惜しいことに使えない」といったニュアンスが感じられます。
このため「まるで使い物にならない」や、人物評として「無能な人間だ」といった、ネガティブなさげすみの意味で使うというよりも、「もう少し条件が合えばマッチするのだが」とか「いざ使ってみると、やや使用感が悪い」「こういう状況では使わない方がよい」という〝残念な〟意味合いがこもる表現だといえます。
「帯に短し襷に長し」の例文
- この靴、おしゃれなんだけど、礼服に合わせるとカジュアル過ぎるし、普段着では高級すぎて「帯に短し襷に長し」なのよね。
- 味は悪くないしダイエット用だから仕方ないのだが、このお菓子は甘党には物足りないし、だいたい量が少なすぎる。どうも「帯に短し襷に長し」だな。
- まあ「帯に短し襷に長し」とは言うが、贅沢を言っても切りがない。時には妥協も必要だ。
「帯に短し襷に長し」の類似表現
- 次郎にも太郎にも足りず…「長男にも次男にもなれない、1番にも2番にも足りない」という意味で、中途半端なさまの例え。
- あちらを立てればこちらが立たず…両方が等しく満足するようなことをするのは難しい、という例え。
「帯に短し襷に長し」のまとめ
日々の暮らしでは、実感として「しっくり、ピッタリくる」ことや、完全に思い通りになることの方が少ない気がします。「帯に短し襷に長し」とため息をつくばかりではなく、どうにか利用法を工夫してみることも大切かもしれません。