「千里の道も一歩から」の意味
千里の道のりを歩くのも、まず足もとの一歩を踏み出すことから始まる、という意味です。物事はすべて一足とびにできるものではなく、はじめから着実に行っていかなければならないものだ、という例えです。
「千里の道も一歩から」の使い方
- いつかキリマンジャロに登りたいと思っているが、千里の道も一歩からというから、毎日ジョギングして筋力アップにつとめている。
- 通信制大学での資格取得を目指している。長年勉強から離れていたし、送られてきたテキストの数の多さと厚さにくじけそうになったが、千里の道も一歩からだ。勇気をもって一ページ目を開こう。
- ミニマリストにあこがれてるんでしょ?千里の道も一歩からなんだから、まずは机の上の整理から始めなさい。
どんなに大きな仕事や計画も、身近なところからはじまり、それが積もり積もって成し遂げられるのだから、まず着手すること、第一歩を踏み出すことが大切だ、という事ですね。最後の一文のように、とにかくやってみなさい、と行動を促す場合にも使われます。
「千里の道も一歩から」の出典と変遷
「千里の道は一歩から」は様々な異表現があるのですが、もともと中国の古典を出典とし、日本でも鎌倉時代の文献から確認できる古いことわざです。では、実際どのような形で表現されてきたのか見てみましょう。
中国の文献
儒家と並んで中国思想を支配した道家の祖である老子の書『老子』64章に以下のような一節があります。
「千里の道も一歩から」ではなく「千里の行も足元から始まる」という異表現ではありますが、非常に古い時代から使われてきたという事がわかります。古くは、後ろの二句(九層の台も塁土より起こり、千里の行も足元より始まる)が対で用いられていたようですが、ことわざとしては末尾の一句(千里の行も足元より始まる)のみで定着していきました。
日本の文献
日本でも古くは鎌倉時代の金言集『玉函秘抄(ぎょっかんひしょう)』に「千里の行(こう)も足下(そっか)から始まる」という表現が収載されています。また同じく鎌倉時代の『曾我物語』の四では、「千里の行は一歩から始まる」という異表現が収載されており、江戸時代より前の時代には「道」ではなく「行」という言いまわしが一般的だったようです。
他にも、室町時代の『ささめごと』では「千里は足下より始まる」、江戸後期の『西薇(せいび)事情』では「千里の旅も一歩より」など言い回しは様々であり、「千里」以外にも「万里」や「百里」となっている表現も少数ですがあったと言われています。
「千里の道も一歩から」の類語
- 高きに登るは低きよりす
- 遠きに行くには必ず近きよりす
距離だけでなく、高さも例えとして使われていますね。
「千里の道も一歩から」の英語表現
- Little by little one goes far. : 少しずつ歩いては人は遠くへ行く。
- By one and one spindles are made. : 紡錘(=糸を紡ぐ道具)は一つずつ作られる。
- Many drops makes a shower. : 多くの水滴が夕立となる。
- He who would climb the ladder must begin at the bottom. : はしごを上ろうとする者は一段目から始めなければならない。
- By link and link the coat of mail is made at last. : 一輪一輪と作るうちに鎖帷子はついにできあがる。
小さい事から少しずつ完成に近づいていく様子はどれも「千里の道は一歩から」と同じですね。